◆ひと夏を越して新星はあらわれるか
秋の大目標を見据えて各馬が集結するトライアルレースには、特に手探りな面が多い。どこに焦点をおくかが年によって違う。最近のローズステークスでは、結果はともかく、2年前の一戦は考える手掛りがはっきりしていた。桜花賞馬のジュエラーとオークス馬シンハライトが出走してきたからだ。春の二冠がどんなレースだったか、そこから考え始めれば、思考を進めることができた。
スローペースをラストの3ハロン33秒0で一気に差し切った桜花賞のジュエラーは、全身を使って走るタイプ。一方のシンハライトは、桜花賞ではハナ差交わされて2着だったが、オークスは府中の長い直線でスピードとスタミナを十分に生かして、これぞ本領と多くを納得させていた。
ローズステークスは阪神の外回り1800米、コーナーは2つしかない。稀にハイペースもあったが、直線が長いのでそんなに速い流れにはならない。明らかにスローペースだと、過去、オークス馬が勝っているという事実は、あながち偶然とは言い切れないと思ってきた。6年前の三冠牝馬ジェンティルドンナは、スローペースのローズステークスを2番手につけて手堅く勝っていたし、4年前のオークス馬ヌーヴォレコルトも、スローのトライアルを好位から差し切っていた。
そんな中、2016年のシンハライトは、重馬場で後ろからの競馬と厳しいレースだったが、力強く追い込んで、逃げ込もうとするクロコスミアをきっちり、ハナ差とらえていた。オークス馬の底力が発揮されたのだが、桜花賞馬のジュエラーは、重で切れをそがれて大敗に終わっていた。オークス馬が夏に休養をとって秋の初陣を飾るのはごく普通のパターンだが、同様に春の好走組にも、リフレッシュさせたことで大きく成長を遂げたと想像でき、トライアルでの好走は見えてくる。
こうした中昨年の1、2着馬ラビットラン、カワキタエンカは、夏競馬をステップに頭角をあらわしたり、ひと叩きの効果を見せていた。ひと夏越してどう変化しているか確認する場であり、2頭は新星誕生と期待されていた。今年は二冠牝馬アーモンドアイの三冠を阻止できるものがいるかどうか、そこに集約されている。そんな馬が出てくるかどうか。