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3日間にわたるオータムセール終了、「今年度最後」ならではの駆け引きも

  • 2018年10月04日(木) 18時00分
生産地便り

オータムセールの会場風景

キャリアの浅い購買者も多く、セリの参加スタイルにも変化が


 1歳馬市場としては今年度最後となる「オータムセール」が10月1日(月)〜3日(水)にかけて新ひだか町静内の北海道市場で開催された。初日の1日は、台風24号の影響により、1時間ずらして午後1時からのセリ開始となったが、3日間を通じて終始売却率は7割をキープし、まずまずの結果となった。

 名簿記載上では761頭の上場予定馬であったが、実際には704頭が上場され、505頭が落札、売却率は71.73%、売り上げ総額は17億5737万6000円(以下全て税込)。前年との比較では、上場頭数で29頭増、落札頭数で2頭減、売却率では3.38%の減、売り上げ総額では259万2000円の増となる。平均価格は、前年の346万1112円に対し、今年度は18840円増の347万9952円であった。

 今回のオータムセールは、3日間を通じて、ほとんど平準化した流れの中でセリが進行したと思う。開催日により、また上場される順番や時間帯により、有利不利が生じることもなく、毎日午後遅くになればなるほど高額取引馬が頻出していたような印象すらある。

 購買登録者数は3日間を通じて877名に及び、前年比で38名の増加であった。ベテランの広く知られた名前の方々に混じり、多くの比較的キャリアの浅い購買者が、熱心にセリに参加していたとも感じた。

 ここ数年、新規の馬主が数多く来場するようになったことで、終日場内で過ごす人はほとんどおらず、多くが目当ての馬の上場時だけ場内に現れ、セリに参加し、またどこか他の待機スペースで思い思いに過ごす、というような形が定着してきたように感じる。

 場内は、その分だけ人波でぎっしりという光景がなくなったが、セリを楽しみながら、ここで終日楽しく時間を送るというような参加の仕方が主流になってきたのであろう。改めて1日〜3日までの日毎の集計を見ても、凸凹のない成績が数字にも表れている。

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屋内パレードリンクの様子

 初日は223頭(牡89頭、牝134頭)が上場され、166頭(牡71頭、牝95頭)が落札された。売却率は74.44%。売り上げは5億8341万6000円。2日目は、234頭(牡102頭、牝132頭)が上場され、165頭(牡86頭、牝79頭)が落札、売却率は70.51%。売り上げは5億8406万4000円。そして3日目が、247頭(牡131頭、牝116頭)が上場され、174頭(牡92頭、牝82頭)が落札、売却率は70.45%、売り上げは5億8989万6000円である。

 こうして3日間を比較すると、売却率といい、売り上げ総額といい、全く横並びの数字で推移したことが分かる。昨年の1歳市場は、空前の好況に湧いた1年だったが、オータムセールでは、新規申し込み馬の最初の2日間と、セレクション、サマーからの再上場馬が出てくる3日目とでは、売り上げに大きな開きが生じていた。

 初日が6億8882万円、2日目が7億8170万円を売り上げていたのが3日目には急激にトーンが下がり、売却率こそ74.0%をキープしたものの、売り上げは一気に初日、2日目から半分以下にまで激減したのであった。平均価格も約276万円と、苦戦を強いられた。

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順番を待つ上場馬たち

 もっとも、昨年の場合は上場頭数そのものが日によって大きく異なっており、初日が269頭、2日目が267頭だったのが3日目にはいきなり139頭まで急減したのが主たる要因だ。日によってここまでばらつきが生じると、購買意欲にも影響を与えてしまう。

 それに比べると、今年は、初日、2日目が新規申し込み馬、3日目が昨年同様にセレクション、サマーからの再上場馬という日程配分は同じだが、3日間とも同程度の上場頭数でセリを開催できたことと、3日目の再上場組も、夏以来の成長分が上乗せされたような馬が目につき、その結果が予想以上の好成績に繋がったと言えるだろう。

 3日間を通じての最高価格馬は、初日に上場された198番アグネスラズベリの17(父ダイワメジャー、牡、栗毛)の2700万円(税抜き2500万円)。社台ファームの生産、上場申し込み馬で、萩原昭二氏が落札した。アグネスラズベリはエアジハード産駒で函館スプリントSなど中央にて7勝を挙げた実績馬である。

 牝馬では、2日目に上場された437番ミルクトーレルの2017(父ノヴェリスト、鹿毛)の1242万円(税抜き1150万円)が最高価格馬であった。新ひだか町三石の(有)山際牧場の生産馬。落札者は宮原廣伸氏。

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オータム初日最高価格馬198番


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最高価格馬198番落札場面

 これでひだか軽種馬農協主催の一連の市場が全て終了したことになり、5月トレーニングセールから今回のオータムセールまで、2527頭が上場、1799頭が落札されて、全市場の総売り上げは税込み112億2573万6000円となった。税抜きの本体価格でも103億9420万円と、昨年に続いて100億円の売り上げ目標を突破した形である。

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牝馬最高価格馬437番


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牝馬最高価格馬437落札場面

 ひだか軽種馬農協・木村貢組合長は「当初、台風のことも心配でしたが、前日、前々日に北海道入りをされている購買者の方も多く、またインターネット中継を見ながらの代理人購買などで対応されていた方もおられましたので、影響はそれほどなかったと思っています。

 オータムセールは地方競馬の馬主さんにとって価格的にも最も買いやすいセリですので、このところの地方競馬の好調な馬券売り上げにより、団体購買にも支えられ、多くの方々の参加を頂いたと感じております。むしろ、これから2歳戦を増やしていきたいが、果たして我々の需要に応えられる生産頭数を確保できるのか、という御心配も頂いておりました。

 その点に関しては、やはり生産地での人手不足が最も大きな問題ですが、地方競馬が好調に推移している間は、私たちも大きく生産頭数が変動することはないものと考えております。今年も数多くの御購買、本当にありがとうございました」とコメントしていた。

 俗に言う「売れ残りセール」の印象は少しずつ薄れてきているものの、依然としてオータムセールになると、100万円、150万円といった取引が少なくない。生産者としては、サマーセールまでに何とか売り先を見つけたいところだが、それが叶わないと、オータムセールでの「投げ売り」になりがちである。ただ、この先は、もう後がないだけに、年を越して来年5月のトレーニングセールを目指すか、さもなくばここで何とか(安くとも)行き先を確保したいという焦燥感に駆られるのが、オータムセールだ。いつものこととはいえ、セリは悲喜こもごものドラマがたくさんあることを改めて感じさせてくれる。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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