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父が替わって新味期待、ウオッカの5番子タニノミッション

  • 2018年10月17日(水) 12時00分
●アイアムピッカピカ(牝 美浦・奥平雅士 父ロードカナロア、母アイアムカミノマゴ)
 2代母アイアムザウィナーはアメリカから輸入した外国産馬。フェアリーS(GIII・芝1200m)4着、クリスタルC(GIII・芝1200m)5着などの競走成績がある。「Danzig Connection×Mr.Prospector」というスピード型の配合だったことが幸いし、繁殖牝馬としてもコンスタントに活躍馬を送り出して成功した。本馬の母アイアムカミノマゴが阪神牝馬S(GII)を、アイアムアクトレスがユニコーンS(GIII)を勝ったほか、アイアムエンジェルがファルコンS(GIII)2着、アイアムツヨシが京王杯2歳S(GII)3着、アイアムアドーターが準OPまで出世した。

 母アイアムカミノマゴは繁殖牝馬としてはすでにダノンフェイス(父キングカメハメハ/ジャパンダートダービー-Jpn1・5着)を出している。本馬はダノンフェイスの3/4妹。「ロードカナロア×アグネスタキオン」の組み合わせは先週の京都新馬戦(芝2000m)を鮮やかに勝ち上がったサトノウィザードと同じ。芝向きのスプリンター〜マイラーだろう。

●ヴァイオリンソナタ(牝 栗東・矢作芳人 父ディープインパクト、母ファーストバイオリン)
 母がアメリカ時代に産んだDominican(父El Corredor)はブルーグラスS(米G1・ダ9f)の勝ち馬。日本で誕生した3/4兄サウンズオブアース(父ネオユニヴァース)は14年菊花賞(GI)、15年有馬記念(GI)、16年ジャパンC(GI)でいずれも2着となるなど重賞で活躍している。

 母の父Dixieland Bandは現役時代にアメリカでG2を勝った程度で、当初は種牡馬としてもそれほど期待された存在ではなかったが、アスコットゴールドC(英G1・芝20f)2連覇のドラムタップスを皮切りにコンスタントに活躍馬を送り出し、やがて名種牡馬と評価されるに至った。

 母の父としてはさらに優秀で、04年に米リーディングブルードメアサイアー(母の父ランキング首位)に輝いている。「ディープインパクト×Dixieland Band」はバーバラ(15年セントウルS-GII・3着)と同じで、本馬の全兄バリオラージュは現在500万クラスに在籍中。重厚なHoist the Flagが入る血統構成なのでハマれば大仕事が期待できる。スタミナ型なので2000m以上で本領を発揮しそうだ。

●タニノミッション(牝 栗東・中竹和也 父Invincible Spirit、母Vodka)
 07年日本ダービー(GI)、09年ジャパンC(GI)、08年天皇賞・秋(GI)など7つのGIを制した女傑ウオッカの5番子。ウオッカは引退後、日本で繁殖牝馬となることなくアイルランドへ渡り、Sea The Starsと種付けした。1〜3番子はいずれも同馬との間に誕生した産駒で、1、2番子は未勝利に終わったが、3番子のタニノアーバンシーは現在4勝を挙げている。現3歳の4番子タニノフランケル(父Frankel)も4勝を挙げており先日オープン入りを果たした。産駒の出来は年々上がってきているので本馬には大きな期待がかかる。

 父Invincible Spiritはヨーロッパで最も優れたスピード血統のひとつであるGreen Desertの系統に属し、現役時代はスプリントC(英G1)を制覇。種牡馬としては英愛ファーストシーズンサイアーチャンピオンに輝き、その後も名マイラーKingman(カルティエ賞年度代表馬)をはじめ多くのG1ホースを送り出して大成功している。母ウォッカはスタミナ型のタニノギムレット産駒なのでスピード型の種牡馬は歓迎で、Green Desert系の成功パターンであるNever Bendクロスを持っているので配合的にも評価できる。芝向きのマイラーだろう。

●パラダイスリーフ(牡 美浦・木村哲也 父ディープインパクト、シルキーラグーン)
 全兄ゼーヴィントは七夕賞(GIII)とラジオNIKKEI賞(GIII)の勝ち馬。3/4兄ザイディックメア(父ゼンノロブロイ)はダートで頭角を現し、マーキュリーC(Jpn3・ダ2000m)で6着となった。母シルキーラグーンは04年スプリンターズS(GI)5着馬で、2代母アサーティブプリンセスはナリタブライアン(年度代表馬)とビワハヤヒデ(年度代表馬)を産んだ名牝パシフィカスの半妹にあたる。

 母とその兄弟まではDayjur(全欧チャンピオンスプリンター)の影響で短距離専門といった趣があったが、代がひとつ進み、重厚なブライアンズタイムが入ったことで距離面の限界が大幅に伸びた。「ディープインパクト×Roberto系」は、以前は活躍馬が乏しい組み合わせだったが、最近はディーマジェスティ、ダノンプレミアム、アドミラブル、シルバーステートなど大物がどんどん出てきている。全兄ゼーヴィントに迫る活躍を期待したい。

●ラヴズオンリーユー(牝 栗東・矢作芳人 父ディープインパクト、母ラヴズオンリーミー)
 3代母Miesqueは80年代の世界最強マイラーで、2代母Monevassiaは名種牡馬Kingmamboの全妹に当たる良血。母ラヴズオンリーミーは不出走馬だが、05年のカルティエ賞最優秀2歳牝馬Rumplestiltskin(05年マルセルブサック賞-仏G1、05年モイグレアスタッドS-愛G1)の半妹で、短距離王ロードカナロアの配合(Kingmambo系×Storm Cat)をひっくり返したような興味深い配合構成となっている。

 本馬は「ディープインパクト×Storm Cat」なので、キズナ(13年日本ダービー-GI)、ラキシス(14年エリザベス女王杯-GI)、リアルスティール(16年ドバイターフ-首G1)、アユサン(13年桜花賞-GI)、エイシンヒカリ(16年イスパーン賞-仏G1、15年香港C-香G1)、サトノアラジン(17年安田記念-GI)などと同じ組み合わせ。このうちリアルスティールは本馬の全兄にあたる。大物感あふれる中距離向きの好配合馬でデビューが待たれる。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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