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初のGI騎乗を終えて…「ソールインパクトの長所を引き出せず本当に悔しい」/コーフィールドC回顧

  • 2018年11月01日(木) 18時01分

五角形のような特殊な競馬場をどう攻略するか


 こんにちは。坂井瑠星です。

 今回は10月20日に行われたコーフィールドカップについて書きたいと思います。

 まずはレースの4日前に行われた枠順抽選会の話から。今年のコーフィールドカップの枠順抽選方法は、まず現地の代表者がランダムにボックスから馬名が書いてある紙を引き、呼ばれたらその馬の代表者が前に出て、裏に枠順が書かれている小さなカップを選ぶというシステムでした。

 コーフィールドカップは18頭立てですが、オーストラリアのルールである補欠馬(2頭)も含めた枠順抽選会でした。

 馬名がどんどん呼ばれていき、みんなが欲しい内枠がなぜか埋まっていきます。この時点で少し嫌な予感はしましたが、名前が呼ばれるのをドキドキしながら待っていました。正確には覚えていませんが、10番目くらいでまずはチェスナットコートが呼ばれました。チェスナットコートの代表者は、矢作厩舎の助手の岡さんです。

挑戦者

▲枠順抽選会の様子


 引き当てた枠は、真ん中より少し外の13番でした。脚質的に、「あまり内過ぎるのは嫌だな」という話をしていたので、みんなホッとしていました。

 その後も何頭か名前が呼ばれ、15番目くらいにようやくソールインパクトの名前が呼ばれました。ソールインパクトの代表者は戸田先生です。

 祈るような気持ちで見ていましたが、引いた枠はなんと大外の20番。「内々をロスなく運びたいね」という話をしていたので、できるだけ内枠が欲しいところでしたが、この枠に決まったからには、腹をくくって乗るしかありません。

 枠が決まったのち、テレビ局や記者さんたちからのインタビューを受け、その後、(チェスナットコート騎乗の)川田さんや現地の馬場に詳しい方たちとコーフィールド競馬場の馬場を一周歩きました。僕はコーフィールド競馬場で騎乗経験があるので分かってはいたものの、そのときに改めてトリッキーなコースだと実感しました。

 コーフィールドカップが行われる2400mのコースの特徴は、最初のコーナーまでの距離が短いにもかかわらず、ロスを避けるべくすべての騎手が内目のいいポジションを取りに行くため、1コーナーでのポジション争いがかなり激しくなるというところです。

挑戦者

▲20番枠からの目線、2400の看板が発走地点でコーナーまでがかなり短い


 コーフィールド競馬場は五角形のような形でコーナーが多く、外々を回らされる競馬で勝つのは至難の業。最初のコーナーまでのポジションで勝ち負けが決まるといっても過言ではありません。1コーナーでどうすれば外3頭目までに入れるか、そこが今回のレースで一番考えたところでしたし、この一年間オーストラリアでやってきたことを生かせる大事なポイントでした。

 レース前日には、メルボルンカップが行われるフレミントン競馬場に行ったり、夜は日本馬の関係者や現地で日本馬のサポートをしてくれた方たちとディナーに行ったりなど、充実した時間を過ごしました。

 そして、アッという間にレース当日に──。コーフィールドカップの前に現地の馬の騎乗依頼をいただいていたので、早めに競馬場に行きました。

挑戦者

▲セレモニーの様子、各馬の勝負服が入った旗が並ぶ


 いつも通り馬場を歩いて確認し、調教師からの指示を聞いてレースに臨みました。そのレースは11着と残念な結果に終わりましたが、メインレースの前に同じコースで乗れたのは、馬場の状態やGI当日の競馬場の雰囲気をつかめたので、とてもいい経験でした。多くのトップジョッキーがいるなか、依頼をくださった関係者の方には本当に感謝しています。

 コーフィールドカップの前には騎手紹介のセレモニーが行われたのですが、これも初めての経験だったので、純粋に楽しみました。

挑戦者

▲コーフィールドカップの前に騎乗したレースのパドック


挑戦者

▲レースを終えて


サポートしてくださったすべての方に感謝


 そこからはアッという間に時間が流れ、いよいよ念願の初GIです。まずはパドックに行き、オーナーや関係者の方に挨拶。その後、戸田先生と最後の打ち合わせをして騎乗合図を待ちました。

 この時点ではかなり緊張していましたが、いざ馬に跨って返し馬に行ったら過度な緊張は消え、いい緊張感のなかで集中してレースに臨むことができました。

挑戦者

▲コーフィールドカップの返し馬、いい緊張感でレースに向かう


 大外の僕が枠入りする直前、1頭の馬がゲートから飛び出してしまうアクシデントはありましたが、全頭が問題なくスタート。レース前は、僕のひとつ内側の枠に入った馬が逃げるのではないかと予想されていたので、その馬について行き、いいポジションを取ろうと考えていました。

 が、いざゲートが開くと、その馬の騎手はあまり行く気を見せず。そこですぐに目標を切り替えて、まずは前に出して行きました。その後、すぐに内側に1頭分のスペースを見つけたので迷いなく入り、4番手を確保しました。この判断が1秒でも遅れていたら間違いなく大外を回らされていたので、ここは自分でもいい判断だったと思います。

 そして、このときに1番人気の馬やチェスナットコートの位置も確認できました。レース前までは、初めてのGIで頭が真っ白になってしまうのではないかと少し不安はありましたが、意外と冷静に道中進めていたのを強く覚えています。

挑戦者

▲初めてのGIながらも、冷静に道中進めることができた


 前に行くと予想されていた馬たちが控えたことで、1コーナーに入ってから一気にペースが落ちました。そこでポジションを2番手に上げ、あとは勝負どころまで我慢しようと決めました。

 もし内枠だったらこの動きはできなかったでしょうし、例年ならあり得ないくらいのスローペースの馬群で苦しんでいたと思います。勝ち馬も外枠でしたし、終わってみればソールインパクトにとって20番枠はよかったのではないかと思います。

 2番手をキープしたまま残り1000mを切り、そろそろペースが上がるというところで一気に他馬がマクってきました。いつでも動ける手応えでしたが、あまりにも一瞬で抜かされてしまったため、ここで置かれてしまいました。

 その後もバテてはいませんでしたが、ペースが上がったときにつけられた差は縮まらず、後ろからもかわされて14着。長くいい脚を使えるソールインパクトの長所がまったく引き出せませんでしたし、本当に悔しいです。

「あのときにこうしておけば…」、タラレバはたくさんありますが、それが競馬ですし、何よりGIの難しさを感じることができました。

 今回このような素晴らしい経験をさせていただき、窪田オーナーを始め、戸田先生、矢作先生、厩務員さん、一生懸命走ってくれたソールインパクト、ここでは書き切れませんが、サポートしてくださったすべての方に感謝しています。

 この経験を今後の騎手人生に生かしていきたいですし、生かさなければならないと思っています。

 特殊な展開だったこともあり、ソールインパクト、チェスナットコートともにレース後のダメージは問題ないとのことです。まずは無事にメルボルンカップに出走し、いい結果が出ることを祈っています。(※ソールインパクトは11月3日のレクサスステークス(ホッサムハンデキャップ)に出走する可能性があります)

 メルボルンカップ当日は僕もフレミントン競馬場に行く予定なので、できる限りサポートができればと思ってます!

1997年5月31日、東京都生まれ。父・坂井英光は大井競馬所属の調教師、叔父も元騎手の坂井薫人という競馬一家。同期には荻野極、木幡巧也、藤田菜七子ら。2016年に栗東・矢作芳人厩舎でデビュー。2019年、ノーワンでフィリーズレビューを勝利し重賞初制覇。2020年には、ダノンファラオでジャパンダートダービーに勝利し交流GI初制覇を飾った。日本だけの騎乗でなくオーストラリア、ドバイなど多くの海外遠征にも挑戦している。

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