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今年の漢字と年度代表馬を考える

  • 2020年12月12日(土) 12時00分

様々な「無」が見え隠れした1年間


 今度の月曜日、「今年の漢字」が発表されます。まぁ今回は、コロナ絡みの一字が選ばれるんでしょうね。

 ネット上では「禍」や「疫」、「密」などが“候補”になっているようですが、私は「無」に1票を投じたいと思っています。

 コロナの影響で、マスクやトイレットペーパーが店先から無くなったり、学校の授業や会社への出勤が無くなったりしました。繁華街の人出が無くなった、とか、会食や宴会が無くなった、とか...。なじみだった“店”やよく行っていた“場所”が無くなったりもしましたよね。もっと言えば、仕事が無くなった方、さらには不幸にも命が無くなってしまった方もいらっしゃいます。

 今年の“象徴”になるはずだった東京オリンピックは延期とは言え今年のカレンダーから消えて無くなり、春夏の高校野球全国大会も無し。競馬やプロ野球、Jリーグなどでは、さまざまな無観客開催も行われました。

 そして、新型コロナが怖いのは、有効な治療薬やワクチンが無いから、でもあるでしょう。コロナ禍には、いくつもの「無」が見え隠れしていたと思います。

 それが当たったからと言って何の意味も無いのですが、こうして書き留めておくことによって、のちのち「あの年はそういう年だったなぁ」と振り返るための助けになれば、と考えた次第です。

 さてさて、今年を振り返ると言えば、JRA賞の年度代表馬はどの馬が選ばれるか?も気になります。

 フツウに考えればアーモンドアイなんでしょうね。GI3勝、ジャパンCでコントレイルとデアリングタクトをまとめて負かしたのですから。

 でもそうなると、「その年の“3冠”を制した牡馬が年度代表馬に選ばれない」という、史上初の“椿事”が起きてしまいます。

 啓衆社賞時代のシンザン、優駿賞だった頃のミスターシービー、シンボリルドルフ、JRA賞になってからのナリタブライアン、ディープインパクト、オルフェーヴルはすべて年度代表馬に選ばれていました。

 これらの馬は、3歳時に出走したレースをすべて勝っていたわけではありません。どこかで1戦以上は負けていたのです。

 今年の3冠牡馬・コントレイルは5戦4勝。同世代限定戦とはいえ競馬界の大目標である日本ダービーの優勝馬ですし、負けたのはジャパンCだけで、しかもアーモンドアイの2着でしょう?

「負けてなお強し」というところをもっと評価してもいいんじゃないでしょうか?

 もちろんこれは“大炎上”しそうな話だとは思います。それはそうと、今年はコントレイルとデアリングタクトが無敗で3冠を制しました。ここにも「無」という漢字が出てきましたよ!

 日本シリーズもホークスが4戦無敗で4連覇。そういう意味でも、今年の漢字は「無」がふさわしいような気がするのですが...。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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