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“試練“の中で想像を絶する精神力の強靱さ

  • 2021年08月07日(土) 12時00分

われわれアナウンサーにもメンタルの強化が必要?


 先週の『ウイニング競馬』放送開始直前、プロデューサーからわれわれアナウンサーに対して「オリンピックの話は厳禁」とのお達しが出ました。

 私が先々週の放送で「オリンピック期間中も、この時間は競馬中継をお楽しみください」なんて言ったので、釘をさしたようです。

 まぁいくらわれわれがそれを禁句にしても、みなさんザッピング(=チャンネルを頻繁に切り替えること)をしながら、オリンピックをご覧になっているでしょうね。

 それにしても、コロナやそれに伴う開催の延期、猛暑など、前代未聞の“試練”を受けている中で、必死に戦っている選手のみなさんには頭が下がります。想像を絶する精神力の強靱さを感じてしまうほどです。

 戦っているのは選手だけではありません。アナウンサーたちも頑張っています。

 今回は日本での開催とあって、今までにない数のアナウンサーがさまざまな競技・種目を担当、膨大な量の仕事をこなしています。本当にご苦労さまです。

 そんな中、TBSの初田アナ(後輩なので実名にします)が野球の実況で“失敗しちゃったこと”が話題になってしまいました。

 ご存知のように、私もこれまで幾多の“失態”を世にさらしてきたので、初田アナには同情を禁じ得ません。あんなに叩かなくてもいいんじゃないですか?

 “同病相憐れむ”ようで恐縮ですが、少々“言い訳”を。オリンピックでは、きのうはバレーボールを喋っていた人がきょうは陸上、あしたは野球というように、担当競技がコロコロ変わることがよくあります。

 試合の時間も夜だったり朝だったり。その合間を縫って資料も整理しなきゃいけないし・・・。実況の仕事は、とんでもない激務なんですよ(そういう私は、オリンピックに行ったことはありませんが)。

 どんなに厳しい練習を積んで、さまざまな舞台を経験していても、その中で金メダルを取れる人はほんのわずか。一握りどころか、ひとつまみほどもいません。

 しかも、きのう、うまくいったからといって、きょう、うまくいくとは限らないのが勝負の世界。オリンピックをご覧になっていれば、おわかりいただけますよね?それはスポーツ実況も同じなのです。

 その点で言えば、騎手のみなさんはたくましいと思います。負けたのは騎手のせい、と言われることがよくあるでしょう?そんなレースの後、パドックのヤジで叩かれても、涼しい顔をして本馬場に出て行きますからね。

 ふつうにやるだけなら当たり前。よほどのことをしないとホメられない。ダメなときは“ボロクソ”に叩かれる。それが勝負の世界なのかもしれません。

 だとすれば、われわれアナウンサーにも、スポーツ選手と同じく“メンタルの強化”が必要、ということでしょうか?

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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