スマートフォン版へ

【古川吉洋×藤岡佑介】同期・福永祐一師の調教師転身に思うこと──同時に考える自身のセカンドキャリア/第5回

  • 2023年08月09日(水) 18時02分
“with佑”

▲花の12期生・古川吉洋騎手の胸中(撮影:山中博喜)


馬とのコミュニケーションの取り方、接し方はジョッキーの個性が出るところではありますが、古川騎手に伺うと「秘訣はトーク力」という少し変わった回答が。

そして対談最後のトークテーマは、来春に厩舎開業を控える福永祐一調教師について。新しいキャリアを進む同期に、古川騎手は今何を思うのでしょうか…?

(取材・構成=不破由妃子)

言葉は通じなくても…馬も声のトーンは聞き分けている


佑介 古ちゃんは、馬に乗っているときのテンションがずっと一緒ですよね。精神に波がない。

古川 馬に乗っているときは、あんまりないかもね。

佑介 馬に対して怒っているときも、「怒ってあげなくちゃいけないから怒っている」数少ない人だと僕は思っています。指導員の立場を崩さない人。人は追い込まれたら怒るけど、古ちゃんは馬を怖がってないから。

古川 究極の扶助は、トークで全部できることだと思っているから。「おとなしくしておけよ」「これ以上やったら怒るよ」って、そのまま言葉で伝える。俺ね、馬とめっちゃ喋るんだよ。家に犬とか猫がいる人は、普通に喋るでしょ?

佑介 そうですよね。

──私は犬を飼っていますが、確かに普通に喋ってます。

古川 でしょ? 耳を動かしたりして、こっちの言葉を聞いてるでしょ? 馬も聞かないわけがないと俺は思うんですよ。言葉を理解しているかどうかはともかく、声のトーンは絶対に聞き分けている。だから、耳が俺のほうに向かない馬は嫌なんです。向いていないときは、耳をそっとこっちに向けさせて、「俺が乗っているよ」と伝える。

 まずは、乗っている人を意識してもらわないとね。そこで意思疎通が図れれば、自分も馬ももっと楽になるんちゃうかなと思うから。そんな感じで、究極的にはトークだけでコントロールできるようになったらいいなぁと思いながらやってます。

佑介 古ちゃんは、人一倍難しそうな馬に乗っているのに、馬に対して怒っているところをあんまり見たことがない。普通、身の危険を感じたら、どうしたって怒声に近い声が出ますからね。

古川 俺だって怒ったことあるよ、たぶん。それよりも、そういうときって馬が乗っている人に対して「どうや!」ってやってきているわけだから、「次はなにするのかな?」「はい、次は?」って感じかも。

──馬に話し掛けるときは、常に声のトーンを意識しているんですか?

古川 そうです。人間同士でも、怒るときと褒めるときって絶対に声のトーンが違うじゃないですか。だから、馬も絶対にわかっていると思います。あのね、馬乗りって、怒ることはあっても褒めない人が多いんですよ。

佑介 ああ、そうかもしれませんね。

古川 できて当たり前だと思っているのかもしれないけど、やっぱりできたら褒めなくちゃ。俺は、声のトーンを意識しながら、「よくできたね」ってすごく褒めるよ。

佑介 実際、パドックで跨れないくらいうるさくて、ほかの騎手が「もうこの馬には乗れません」というくらいの馬でも、何回か古ちゃんが乗っているうちに、まともになった馬がいるもんなぁ。

古川 ああ、何年か前の牝馬やろ? 秘訣はトーク力や。「古川吉洋は、気難しい女の子と話すのが得意」って書いといて(笑)。

──わかりました(笑)。

佑介 あと、古ちゃんを見ていて勉強になったのは、馬が暴れたときはとにかく笑うこと。歯を食いしばったり、怖い顔をすると、どうしても体に力が入ってしまうから、いけるところまで笑顔で乗り切ろうと意識してます。

古川 ああ、それは大事かもね。

佑介 暴れてもなるべく怖がらずに、「あ〜あ〜」とか言いながら笑ってる(笑)。それこそ、めっちゃ暴れている馬に古ちゃんが乗っているときに、ジョッキーカメラを付けてほしいな。

古川 俺、「フフッ」って笑っているかも。「やるねー」とか言いながら(笑)。

“with佑”

▲馬上で笑顔を見せる古川吉洋騎手(C)netkeiba.com


“一流の人間”同期・福永祐一調教師に思うこと


──間違いなく話題になりますね(笑)。では、最後になりますが、今年は同期の福永さんが引退。引退の際の取材で、「一流の人間であり、一流のジョッキー。人として尊敬できるすごい男です」という古川さんのコメントを見て、この言葉を言える古川さんも素敵だなと思いました。

古川 みなさんも、何度も祐一の取材はしているでしょ?

続きはプレミアムサービス登録でご覧になれます。

登録済みの方はこちらからログイン

質問募集
with 佑 / 藤岡佑介
このコラムでは、ユーザーからの質問を募集しております。あなたから
コラムニストへの「ぜひ聞きたい!」という質問をお待ちしております。
質問フォームへ
with 佑とは
JRAジョッキーの藤岡佑介がホスト役となり、騎手仲間や調教師、厩舎スタッフなど、ホースマンの本音に斬り込む対談企画。関係者からの人望も厚い藤岡佑介が、毎月ゲストの素顔や新たな一面をグイグイ引き出し、“ここでしか読めない”深い競馬トークを繰り広げます。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1986年3月17日、滋賀県生まれ。父・健一はJRAの調教師、弟・康太もJRAジョッキーという競馬一家。2004年にデビュー。同期は川田将雅、吉田隼人、津村明秀ら。同年に35勝を挙げJRA賞最多勝利新人騎手を獲得。2005年、アズマサンダースで京都牝馬Sを勝利し重賞初制覇。2013年の長期フランス遠征で、海外初勝利をマーク。2018年には、ケイアイノーテックでNHKマイルCに勝利。GI初制覇を飾った。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング