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石崎騎手・4500勝

  • 2001年09月25日(火) 00時00分
 石崎隆之騎手が通算4500勝を達成した。9月19日、船橋競馬最終11R、1番人気スプリングパルマ号で鮮やかな差し切り。道中じっくり中団に構え馬の瞬発力を100%引き出す、いかにも彼らしい計算しつくされた騎乗ぶり。南関東リーディングはもちろん、連続5度のNAR最優秀Jなど、すでにジョッキーの頂点を極めて久しい45歳。しかし、そのプレーはますます円熟味を増している。

 日常の石崎騎手は気さくで飾らない人柄。お酒が好きで煙草も吸う。地元トラックマンの集まる親睦会などで、筆者も何度か仲間に入れていただいた。けっして多弁ではないが、穏やかな笑顔で飄々と語る昔話が楽しかった。デビュー当時裸で53キロあり、減量に苦労したこと。師匠の故・出川巳代造師に買ってもらった回数券で、毎日船橋へルスセンター(当時)のサウナに通ったこと…。最近の趣味は?と尋ねると、「マッサージをしてもらうこと。あと床屋の散髪くらいかな」と笑った。無理もない。南関東の開催はほぼ切れ目がなく、加えて各競馬場の招待競走、さらにJRA遠征もしばしばある。それでも生活フォームが自然体だから、たぶん心身とも常にフレッシュな状態が保てるのだろう。もうひとつ最近は長男・駿騎手の活躍も、強力な‘元気の素’になっていると推測する。

 昨年6月に4000勝を達成し、それからわずか1年あまりで4500勝を通過した。1日8鞍まで騎乗可能となり年間400勝ペースだから当然といえば当然だろう。が、それにはまず何より‘無事故’という条件がつく。レース、調教中の怪我はもちろん、ラフプレーでの騎乗停止なども大きく響く。石崎騎手は、少なくともここ2年ばかりそういうロスが一度もなかった。‘円熟’とは、そんな部分もあるかと思う。鉄人・佐々木竹見騎手の‘聖域’に、追いつき追い越すのに計算上ではあと5年。今の勢いなら、むろんそれも夢ではない。

 ☆ ☆ ☆

 川崎17日「スパーキングレディーC」は、プリエミネンスの完勝だった。道中馬なりでスッと2番手、直線軽く仕掛けた程度で抜け出し、あとは貫禄で後続をあっさり押さえた。他馬よりだいぶもらった57キロ。‘堂々’という以外に言葉がない。

 スパーキングレディーC(サラ3歳以上 牝馬別定 1600m良)
〇1プリエミネンス(57柴田善)1分39秒2
◎2レディバラード(54石崎隆)3/4
△3アインアイン(54内田博)4
▲4トミケンブライト(55佐藤隆)1
△5オンワードセイント(55蛯名)1.1/2
単250円 馬複230円 馬単550円

 プリエミネンスはこれでダート統一G4勝目。汚点とすると大井TCK女王盃6着があるくらいで、JCダート4着などを含めた総合点では、すでにファストフレンドに追いついている。3歳時少し細くみえた馬体も今は充実している。牝馬同士ならしばらく頂点が続くだろう。流れに応じてスパートでき、なおかついい脚が長続きするようになった点が頼もしい。
 レディバラードは道中インの経済コースを回る石崎流で、直線入り口も素晴らしい手応え。結果少し窮屈になったのが惜しまれる。それでも3キロ差で負けてしまえば現時点でパワーの違いというしかないか。アインアインは少し離されたものの善戦のひとこと。左回りが合っていることもあるだろう。強気の逃げで持ち味を出し切った。トミケンブライトは、マリーンCプリエミネンスのコンマ1秒差2着からもう少し走れそうだが、結局自ら競馬を作れない悲しさ。三角から動いて失速したオンワードセイントは、本質的に長距離向きだろう。

 ☆ ☆ ☆

 1日置いて船橋「日本テレビ盃」。結果はアグネスデジタルの圧勝だった。3〜4コーナー、勝負どころでまくり気味に仕掛けて先頭を奪いあとは独走。あらゆる面で適性がつかみづらかった馬だが、いったん流れにさえ乗ってしまえば、持っているエンジンが違うというしかない。

 日本テレビ盃(サラ3歳以上 別定 1800m良)
△1アグネスデジタル(58四位)1分51秒2
▲2タマモストロング(55小池)3
〇3スナークレイアース(55和田)鼻
◎4ノボトゥルー(58石崎隆)2.1/2
 5ケンチャム(56佐藤隆)2
単430円 馬複1390円 馬単2390円

 アグネスデジタルは、全日本3歳優駿(川崎)、名古屋優駿(名古屋)、ユニコーンS(中山)に続き、これでダート統一G4勝目。むろんそこに芝G1マイルCSの勲章が加わってくる。見方ひとつでは、稀代の名馬などという表現も可能かとさえ思う。春のリズムが悪かったこと。小柄な馬体に58キロが響きそうなこと。個人的には今回評価を下げていたが、正直こちらの目がフシアナだった。この先は岩手・南部杯(盛岡10月10日)を経て、再びマイルCSに向かう。馬体などけっして威圧感はないが、精神面を含めて芯が強い。
 タマモストロング、スナークレイアースはともに好位を進み、アグネスが抜け出したあと激しい2着争い。インをキープした前者が競り勝ったが、まったく同程度の力だろう。どちらもパワー優先で切れ味ひと息。ノボトゥルーは3か月ぶりで道中反応が鈍かった。直線外からじわりと伸びたがそこまで。しかし馬体、気合など文句なしの雰囲気で、次走はどこに出てきても無条件で注目できる。

 ☆ ☆ ☆

東京盃(大井9月27日 サラ3歳以上 別定 1200m 統一G2)

 ◎ゲイリーイグリット(松永幹)
 〇ノボジャック(蛯名)
 ▲サウスヴィグラス(柴田善)
 △レジェンドハンター(安藤光)
 △イエローパワー(石崎)
 
 統一G4連勝のノボジャックを負かす馬がいるか、いるとすればそれはどれか…が焦点。なるほど近況無類の勝負強さをみせるノボジャックだが、いずれも着差はクビ、アタマときわどい。個人的な見解だが、短距離で強い馬とは、一度くらいぶっちぎりの圧勝があってしかるべきと思っている。少なくとも絶対的なものは感じない。
 ゲイリーイグリットは前々走クラスターCでノボジャックに肉薄、続くさきたま杯を完勝した。道中中団からあっという間に4コーナー、先団に取り付いた‘ダートでの瞬発力’が印象的だった。サウスヴィグラスも同様のムードを持つが、こちらはレース間隔があいて気配しだい。レジェンドハンターはいかにも軽快な走りをする馬で、本質的に芝向きとみている。勝つか大敗か、結果は極端になりそうだ。羽田盃馬イエローパワーが1年ぶりの復帰。いわゆる天才型だけに地の利も含めると無視はできない。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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