ジュライC・ナンソープS連覇を果たし、スプリンターとしては90年代初頭のデイジュール以来となる高い評価を得ているモーツアルトや、あのニジンスキーも出来なかったセントレジャー・凱旋門賞連覇に挑もうとしているミランなど、今季も超A級馬を続々と輩出している、欧州最高のイヤリングセール「タタソールズ・ホウトンセール」が、10月2日から4日まで、ニューマーケットで開催される。
3日間で180頭が上場を予定する中、高値が予想される期待馬を御紹介したい。
Hip#14は、現役時代2年連続牡馬チャンピオンの座に輝いたボスラシャムの2番子。父が10年連続チャンピオンサイヤーを狙うサドラーズウェルズの、牡馬である。昨年のこのセールに、初子にあたる父レインボウクエストの牡馬が上場され、100万ギニー(約1億8000万円)で購買されたが、兄以上の価格が付くのは確実と言われている。超逸材である。
Hip#24は、テイエムオペラオーの父オペラハウスの弟で、父がジャパンC勝馬シングスピール。いかにもクラシックタイプといった配合だ。
Hip#82は、現役時代2歳チャンピオンC、種牡馬となって昨年の3歳チャンピオン・シンダーを輩出したグランドロッジの半弟。父がザフォニックだから、兄同様に早期に動きだせそうなタイプである。
Hip#98は、愛オークス馬で、95年のジャパンCで骨折し、日本の獣医陣の懸念の治療で一命をとりとめたピュアグレインの半弟。父はBCマイル勝馬バラシア、そのピュアグレインが母となって産んだ牡馬が、Hip#141。父は凱旋門賞馬で、この世代が初年度産駒となるパントルセレブルだ。
Hip#126は、96年のこのセールで42000ギニー(約750万円)という廉価で購入され、後に伊ダービーを勝つまでに出世したセントラルパークの半妹。父は現役時代に英2000ギニーに勝ち、今年の2歳が初年度産駒となるアントレプレナー。
Hip#177は、冒頭でも紹介した、今季の欧州スプリントチャンピオンの座を確実にしているモーツアルトの半弟。父は、現役時代フランスのマイルチャンピオンで、種牡馬としてジャパンC勝馬ピルサドスキーを輩出したポリッシュブレスデント。兄よりは、長めの距離で活躍しそうな配合である。
この他、今年のG1コロネーションS2着馬クリスタルミュージックの半弟(父サドラーズウェルズ、Hip#28)、母が愛オークス馬ナイツバロネスの牡駒(父サドラーズウェルズ、Hip#78)、愛1000ギニー馬ナイサーの牡駒(父インディアンリッジ、Hip#110)、94年の欧州3歳スプリントチャンピオン・オウイングトンの半弟(父サドラーズウェルズ、Hip#120)、英ダービー馬オースの半弟(父デザートプリンス、Hip#155)、愛ダービー馬ザクレブの半弟(父スピニングワールド、Hip#159)など、馬体に問題がなければ高値間違いなしの良血馬が目白押しである。
一方、日本でお馴染みの血脈を拾うと、ファンタジーS2着馬シンコウノビーの3/4妹に当たるのが、Hip#20の牝馬。父は現役時代キングジョージを連覇を果たし、この世代が初年度産駒となるスウェインだ。牝系が、凱旋門賞馬レインボウクエストや英ダービー馬コマンダーインチーフらを出している、欧州でも屈指の名門ホエアユーリードに、将来の繁殖としての価値も計り知れないものがある。
Hip#126は、父が現役時代QE2SなどマイルのG1を3勝し、この世代が初年度産駒となるデザートプリンスで、母が愛チャンピオンS勝馬パークイクスプレスという牡馬。G1高松宮杯を制し、引退後はアイルランドで種牡馬となっているシンコウフォレストの3/4弟にあたる馬である。
Hip#157は、安田記念、スプリンターズSと2つのG1を制したブラックホークの半妹。父は日本ではサクラローレルを出したチャンピオンサイヤーのレインボウクエストだ。
これだけカタログが良いと、さぞ価格も高騰しそうに見えるが、市場関係者は必ずしも楽観はしていない。と言うのも、セプテンバーでは活発な購買を行なったマクトゥーム一族が、中東情勢悪化の折り、セールに参加できない可能性が高いと見られているからだ。
逆に言うと、購買者側の視点で見るなら、最高級品を思わぬ廉価で手に入れる。千載一過のチャンスかもしれないのである。