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実りの秋になるか…

  • 2001年10月02日(火) 00時00分
 大器ロイヤルエンデバーが復活した。9月24日、大井・準重賞「ムーンライトカップ」。3歳以上B1下、確かに軽い相手ではあったが、見事な差し切りでカムバック初戦を飾った。道中好位の外めを手応えよく追走、直線一歩一歩力強く伸び、絶好のタイミングでまくったシャコーダイヤをゴール前きっちり捕えた。着差こそ「鼻」だが、辛くも届いたというより、思惑通りという印象。鞍上・今野騎手もおそらく一杯には追っていない。思えば2月「京浜盃」以来だから、およそ7ヶ月ぶり。それにしては実戦でのレース勘が素晴らしい。フルゲート14頭を捌き、千八1分54秒5の時計も合格点。改めて「これは走る…」と再確認できた。

 ロイヤルエンデバーはこれで6戦3勝。負けた3戦はいずれもトーシンブリザードの2着で、しかも咋暮れ「全日本3歳優駿GII」では鼻差の勝負を演じている。クラシック本番のリタイヤは、肩不安などさまざま弱いところが出たためだが、決定的なものではなく、先を見据えた慎重策でもあるらしい。父ラムタラ。480キロ台、骨量の豊かなガッシリした馬格で、フットワークもきわめて豪快。今のところダート向きのイメージだが、本格化すれば芝の長距離なども面白いだろう。いずれにせよそれだけのスケールを感じさせる馬。順調なら次走は10月9日、大井「スーパーチャンピオンシップ」へ向かう。夏場を充電につとめた快速馬フレアリングマズルも、ここで始動と聞いている。

☆  ☆  ☆

 同じ24日、岩手・盛岡競馬場で行われた「ダービーグランプリ」は、伏兵ムガムチュウの圧勝だった。前半中団キープから3〜4コーナーで一気にスパート。直線中ほど、早めに先頭に立ったカチドキリュウを並ぶところなく捕え、最後は9馬身差をつけている。直線に急坂がしつらえてある盛岡コース。パワーがフルに生きたというべきだろう。

ダービーグランプリ(サラ3歳 別定 統一GI 2000m良)
…(1)ムガムチュウ   56藤田  2分07秒0
◎(2)カチドキリュウ  56和田     9
△(3)バンケーティング 56菅原勲    1
▲(4)イシヤクマッハ  56本田     4
△(5)テンリットル   56水野貴  2.2/1
……………………………………………………
△(7)フジノコンドル  56吉田稔
△(12)ネイティヴハート 56小林俊
〇(14)ロードバクシン  56小牧太
 単2330円 馬複6210円 馬単19640円

 個人的には予想も馬券も悔いが残った。ムガムチュウは昨秋門別でやはり統一Gを制しており、馬力の要求されるコースで一発大駆けのイメージがあった。その後同じダートでも時計の速い競馬で凡走続き。しかし今思えばだからこそ、ここで狙う妙味があったのだろう。ともあれ今日は強いのひとこと。2分07秒0も、着差、脚色の余裕を含めれば水準以上。あとはもう少しスピードを磨くこと、器用さを身につけることが課題になる。次走は10月31日、大井「JBCクラシック=2000」と聞いた。
 
 競馬とはいつもそうといえばそれまでだが、出てくる結果があっけらかんと極端で、なにやら残酷なまでのものがある。前走金沢であれほど強いレースをみせたフジノコンドルが7着。芝のGIで好勝負していたネイティヴハートが12着。格好をつけることすらできなかった。ここでとってつけた分析など、正直言うだけ唇が寒いだろう。わかった事実はただ一つ。今年の3歳ダート路線は、いまだ勢力図が未完成ということ。コース適性、展開、体調の微妙な振幅で結果がガラリ違ってくる。ちなみにトーシンブリザードは9月上旬、短期放牧から船橋へ帰厩、乗り運動を開始したとのこと。最も大きな夢と期待は、むろんこの馬の復帰にかかる。

☆  ☆  ☆

 26日、大井統一GII「東京盃」は、ノボジャックの完勝だった。スタート直後やや反応が遅れたものの、すぐ加速して3コーナーでは単独2番手。直線中ほど早くも先頭に立ち、そのまま余裕たっぷりに押し切った。2着ワシントンカラーと1馬身差だが、印象は文字通りワンサイド。これで統一G5連勝。もうこうなると相手のレベルうんぬんという議論は、あまり意味を持たない気もする。高知、高崎、札幌、盛岡、大井…。さまざま態形の違う5競馬場で勝ち切ってきた事実、その基礎体力と精神力に、正直素直に脱帽する。

東京盃(サラオープン 交流選定馬 別定 1200m良)
〇(1)ノボジャック    56蛯名 1分10秒9
△(2)ワシントンカラー  55岡部    1
△(3)イエローパワー   56桑島  2.1/2
…(4)リザーブユアハート 55橋     頭
▲(5)ゲイリーイグリット 53松永幹   首
…………………………………………………………………
◎(6)サウスヴィグラス  56柴田善
…(7)レジェンドハンター 56山崎真

 ノボジャックは、かつてのタイキシャトルとイメージがダブる。速さではなく、力で押す短距離走者。スピードに乗り、相手と競り合ったとき、改めてその重心がグイと沈む。6ハロン、最初から最後まで必ずしも完全燃焼ではなく、走りにメリハリがあるから、連戦にも堪えられたということか。重ねて書くが、それまで統一G4連勝は、ことごとくコース形態の異なる競馬場を踏破したもの。「そろそろ危ない…」は、結果的に凡庸な予想者の邪推だった。

 ワシントンカラーは、このレース3度目の挑戦で結果を出した。道中スムーズに流れに乗り直線外からしっかり伸びた。「大井の走り方を馬が覚えてきた」と岡部騎手。元より根岸Sを連覇した優秀なスプリンター。年齢はともかく、能力からは走られてむろん納得。砂が薄くなった最終日、脚抜きのいい馬場も幸いした。

 ゲイリーイグリット、サウスヴィグラスは、ともに中団からエンジンをかけ、しかしジリジリとしか伸びなかった。馬場状態と展開に左右される段階で、まだ真のダート強者とは少し壁がある。逃げて完全燃焼のリザーブユアハートを、ゴール寸前イエローパワーが捕えた。久々はあまり問題にしない天才肌のスピード馬。これで期待通り良化なら統一Gレベルに届くはずだが、心身とももう一歩逞しさがほしい。レジェンドハンターは、好位キープからジリ下がりでインパクトの薄いレースぶり。安藤勝Jが乗ってもう一度正念場か。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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