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週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

  • 2001年10月03日(水) 00時00分
 ペースメーカーがG1制覇、という珍事が起きたのが、9月29日に英国のアスコットで行なわれた、欧州1マイル路線の総決算クイーンエリザベス2世Sである。

 ゴドルフィンの陣営が、人気のノヴェーアをサポートする目的で使ってきたサモナーが、スタート直後から奪った先頭の座を、とうとうゴール地点まで譲らなかったのだ。しかもこのサモナーは、陣営がわざわざ2万5千ポンド(約450万)という追加登録料を支払って出走させた馬だったのである。

 波乱の布石となったのが、馬場だった。前夜来の雨で、当日のアスコットは、GOODという公式発表以上にぬかるんだ状態になり、2番人気が予想されたセレブレーションマイルの勝馬ノーイクスキューズニーデッドをはじめ3頭も、馬場の悪化を理由に取り消したほどであった。

 と言っても、サモナーも決して道悪が巧い馬ではなく、事実、直線に向いて間もなく、のめってバランスを崩したほどであった。これでG1を逃げ切ってしまうのだから、競馬とはわからないものだ。

 今回の波乱を、94年の同じレースを同じように最低人気で逃げ切ったマルーフに例えられる声があるが、私は少し事情が違うと思う。当時のマルーフも確かに、同じ馬主で人気になっていた愛1000ギニー馬メサーフの先導役だったが、一方で、マルーフ自身も重賞勝馬であり、この年のマイル戦線でもG2、G3クラスで常に入着していた実力馬だったのだ。重賞どころか準重賞の勝鞍も無かったサモナーに比べれば、遥かに格上の存在であったのである。

 一方、おはらいでもした方が良いと思えるほど不運が続いているのが、自陣営のペースメーカーをつかまえられずに2着に敗れたノヴェーアだ。5月の仏2000ギニーが、1着で入線したあとドーピングで禁止薬物が出て、優勝剥奪。更に8月のジャックルマロワ賞では、ゴール前で外にヨレて失格となったプラウドウイングスの妨害を、直接モロに受けたのがこの馬。内で何の不利もなく2着入線したヴァオリミックスに繰り上がり優勝をさらわれるというツキのなさだった。

 そして、今回である。

 次走は、10月27日にベルモントパークで行なわれるブリーダーズCマイルが予定されているが、スッキリと一年を終わることが、果たして出来るだろうか。

 三度あることは、四度ある?

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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