10月8日、盛岡「南部杯」は、アグネスデジタルの完勝だった。好スタートから素早く3番手の外めをキープして絶好の手応え。直線あと1ハロン、満を持して追い出し、それこそ矢のような瞬発力で突き抜けている。「タフなコースだから、ぎりぎりまで我慢して仕掛けた」と四位騎手。なるほど言葉通り隙のない好騎乗も光った。切れ味のある馬はこうして乗る…、そんなお手本。ともあれアグネスデジタルは、見た目以上に心身両面で計り知れない逞しさを持っている。この日445キロ。500キロ台の巨漢が悠々と闊歩するパドックなど、けっして威圧感は感じさせず、それでいていざ実戦となって素晴らしい結果を出す。
マイルチャンピオンシップ南部杯(3歳以上 定量 1600m良 統一GI)
◎(1)アグネスデジタル 56四位 1分37秒7
▲(2)トーホウエンペラー 56村上 3/4
△(3)ノボトゥルー 56菅原勲 1/2
△(4)ゴールドティアラ 54蛯名 1/2
〇(5)ウイングアロー 56岡部 5
単210円 馬複1840円 馬単2450円
アグネスデジタルはこれで重賞6勝。主戦場といえば全日本3歳優駿からユニコーンS、さらにこの南部杯に至るまでダートだが、そこに昨秋芝GIマイルチャンピオン優勝が強烈なインパクトを放っている。芝、ダート、いっさい問わずの切れ味と絶対スピード。統一Gが育んだ新しいスターホースといっていいだろう。次走は連覇を狙った京都芝千六。JBCクラシック、スプリントとも、距離的にひと息しっくりこ
ないし、元より大井コースは昨夏JDダービーで謎の大敗を喫している。今のところあえて進む理由もない。
トーホウエンペラーは、ひとこと立派な2着だった。道中おっつけ気味の追走で明らかに千六は忙しい。それでいて最後の最後、内ラチ沿いからグイと伸びた。GI2着。これでJBCクラシックへの出走権も獲得した。今後メイセイオペラの伝説にも迫れる馬と実感する。ノボトゥルーは、前走日本テレビ盃4着同様、デキそのものが絶好とみえただけに、フェブラリーS制覇は、ペリエの神業、さらにハイペースの利と考えた方が正解だろう。ゴールドティアラは大幅な馬体増。レースでも終始カカリ気味で集中力を欠いた。ウイングアローは、根本的に長距離向きであること、目標がJCダートなど、一つ先にあること。よくも悪くもこの日は試走だった感が強い。
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翌9日、大井「スーパーチャンピオンシップ」は、牝馬ナミの快勝だった。道中3番手で完璧に折り合い、直線あっという間の差し切り。王者ブリザード不在にせよ、今回はそれなりに牡馬の成長株がそろっていた。「スローになりそうな顔ぶれだから早めに行ったのは作戦通り。この馬とはいつもイメージ通りの競馬ができる」と的場文男騎手。まさしく「堂々」という以外に言葉がない。
スーパーチャンピオンシップ(サラ3歳 定量 2000m良)
◎(1)ナ ミ 55的場文 2分07秒8
△(2)オンユアマーク 57鷹見 1.1/2
…(3)マイングッド 57早田 1
△(4)メイショウアーム 57戸崎 3/4
△(5)フレアリングマズル 57宮浦 3/4
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▲(6)ロイヤルエンデバー 57今野
〇(7)アブクマドリーム 57石崎
単289円 馬複2230円 馬単3050円
ナミはこれで重賞6勝。桜花賞、プリンセス賞など牝馬として可能なタイトルをほぼすべて手中に収め、今回さらに牡馬相手の競馬にもメドをつけた。個人的な気分としてはポスト・ロジータ。ただ今回は正直時計が平凡(Gティアラ賞=2分06秒6)で、相手が走らなかった感もある。マイナス3キロ、パドックでも少しイライラした様子。「ここでしばらく休ませる」(蛯名調教師)は、おそらく英断になるだろう。明け
て来春大井「TCK女王盃」を照準に置くとのこと。勢力図がこのままなら、プリエミネンス、レディバラード(11日船橋・クイーン賞圧勝)あたりが強敵になる。客観的には、やはりもう一段パワーアップが必要だろう。
ロイヤルエンデバーは復帰2戦目。典型的な2走ボケのパターンに加え、道中スロー。カカってしまったのがすべてだろう。いわばエクスキューズのきく敗戦。2歳時とは別馬のような馬体のハリで、成長は明らか。次走改めて期待したい。どちらかといえばジリ脚だが、反面相手なりに走るタイプ。強敵にあえてぶつけて、むしろ面白い馬とイメージできる。アブクマドリームは展開上特に不利もなく、結果大敗。ただこちらもキャリアから発展途上は確かで、しばらく長い目でみるべきか。オンユアマークは時計がかかって幸い。大外からパワフルな末脚で追い込み存在感を示した。ただし速い決着になってはスピード面で疑問で、本質的にステイヤーだろう。フレアリングマズルは逃げて失速。体調もあるだろうが、気性面も含め、春当時からあまり変わり身がうかがえない。