いささか旧聞に属する話題で恐縮だが、10月2日から4日までニューマーケットで行なわれた、欧州最高のイヤリングセール「タタソールズ・ホウトンセール」のマーケットについて、分析してみたい。
市況から御紹介すると、総売り上げが前年比13.3%ダウンの2860万ギニー、平均価格が同8%ダウンの219,716ギニー(約4050万円)、中間価格が同10.3%アップの16万ギニー(約2960万円)、バイバック・レートが21.6%(前年22.1%)。
上場頭数が減っていたことを考えれば、総売り上げの下落は予測の範囲であり、平均価格の下落も、諸事情を考えればよくこの範囲で収まったと見るべきであろう。そうでなくても世界経済がおかしくなっていたところに、アメリカで同時多発テロが起こり、ついには報復攻撃の開始である。世界中で株価が下がっている中、昨年46%も上がって歴代で初めて20万ギニーの大台に乗った平均価格が、よくぞ6%程度の下落で済み、再び20万ギニー以上をキープしたものである。
更に驚くべきは、中間価格がホウトンセール歴代最高の16万ギニーを記録したことだ。平均が下がって中間が上がるというのは、トップエンドのマーケットがそれほど伸びなかった一方で、真ん中から下の価格帯がとても強かったことを意味しており、バイバック・レートが下がったことと合わせて考えると、極めてヘルシーなマーケットであったと言えるであろう。
高い価格帯が盛り上がらなかったのは、控える中東情勢の影響からか、サウジアラビアのアーメド・サルマン殿下(サラブレッド・コーポレーション)が市場に参加していなかったことが、一番の要因であろう。
一方、市場への参加が危ぶまれていたUAEの王族は、副大統領(マクトゥーム・アル・マクトゥーム殿下)も国防大臣(シェイク・モハメド殿下)も会場に姿を見せ、購買を行なっていた。
実は、ニューマーケットのケンブリッジシェア開催とロンシャンのアーク開催のちょうど間の日に、米英のよるアフガニスタンへの報復攻撃が始まったのだが、そのどちらの競馬開催にもUAEの副大統領も国防大臣も姿を見せていたのには、いささか驚かされた。サルマン殿下だけでなく、サウジの王族ではカリッド・アブドゥーラ殿下の姿もニューマーケットにもロンシャンにもなかったことから、中東情勢はサウジ周辺でより緊迫したものとなっていることが推測される。
最高価格は、父がこの世代が初年度産駒となる新種牡馬デザートプリンス、母が85年の愛2歳牝馬チャンピオンのパークイクスプレス、兄にシンコウフォレストがいる牡馬で、230万ギニー(約4億2400万円)。2番目がオペラハウスの近親にあたる父グリーンデザートの牡馬(130万ギニー)で、3番目がアメリカのG1勝馬ポニーイルの孫に当たる父グランドロッジの牡馬(100万ギニー)。トップ3にサドラーズウェルズもヌレイエフもデインヒルもレインボウクエストも入っていないというマーケットの中身も、全体の市況、事前の下馬評を覆すものであった。