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週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

  • 2001年10月24日(水) 00時00分
 1984年にスタートして以来、最も面白いカードが揃ったと評判のブリーダーズC(10月27日、ベルモントパーク)。100万ドルが懸かった「ミリオン・チャレンジ」や、香港国際競走への旅が懸かったグリーン・チャンネル「知りたいKEIBA情報局」のピック8(10月24日放送で詳細告知)などをお楽しみの方も多いと思うので、8レースに向けた私なりの展望を行ないたいと思う。

 レース・オーダー順で一番早い、牝馬によるダート9F戦「ディスタフ」は、アラバマS、ケンタッキーオークスを制している3歳最強のフルート、これを前哨戦のベルデイムSで破ったイクソジェナス、昨年のこのレースの勝馬スペインの三つ巴の様相。これに、前走スピンスターSを制して追加登録してきたミスリンダ、前走休み明けのガゼールS3着のフリートレネーがどこまで絡むかがポイント。普通ならフルートだろうが、ウェイン・ルーカスがここ1本に的を絞った感があるスペインが不気味。

 2歳牝馬の「ジュヴェナイル・フィリーズ」は、東海岸の前哨戦フリゼットSを6馬身差で制したユーと、西海岸のナンバーワン決定戦デルマーデビュータントを制したハビブティの、東西対決。この2頭を、前走アルビアデスSを含めて中部地区で3戦無敗のテイクチャージレディー、前走ベルモントのアスタリアSを勝って2戦2勝のベラベルーチらが追う展開。前走の内容から、ここはユーが頭1つリードか。

 芝の「マイル」は、ヨーロッパから遠征するノヴェーア(前走クイーンエリザベスIIS2着)が中心。迎え撃つ北米勢では、前走キーンランドマイルを制したハップが代表格と見られていたが、なぜか「ターフ」に廻りそうなので、前走オークトゥリーマイルを制して追加登録してきたヴァルロイヤル辺りが人気を集めそうだ。上位陣に抜けた存在のいない混戦だけに、芝を1回しか使ったことのないバルトスターや、芝未経験のイクスプレスツアーを狙う手もある。

 一見簡単そうで、考えてしまうと深みに嵌まるのが、ダート6Fの「スプリント」。ディフェンディング・チャンピオンのコナゴールドと、昨年のこのレースで超ハイペースを作って4着だったコーラーワンの再戦というのが一般的な見方だが、コナゴールドは前走のアンシェントタイトルHで思わぬ取りこぼしをし、コーラーワンは3ヶ月振りの実戦と、ともに不安材料がある。9歳馬ながら目下3連勝中のベットオンサンシャイン、この秋東海岸のこの路線の重賞2連勝中のデラウェアタウンシップ、マイル路線から参入してきたエルコリドール、欧州最速スプリンターのモーツアルトなど、伏兵は多彩。今年のBCで最も予想の難しいレースだが、1頭挙げるとすればデラウェアタウンシップか。

 牝馬による芝10Fの「フィリー&メア・ターフ」は、今年の愛オークス馬で、前走北米緒戦のフラワーボウルSも白星で通過したレイラニが中心。8月のビヴァリーディーS圧勝で、北米最強と目されたイングランドレジェンドが、フラワーボウルでレイラニにあっさりひねられてしまい、レイラン断然のムードが出来つつある。アメリカの馬では太刀打ち出来ないということで、マイル路線の強豪バンクスヒル、愛オークスでレイラニの2着となっているモージュステなどの欧州勢が穴人気になっているが、彼女らでも逆転までは難しかろう。

 今年の8レースの中で、最も堅い本命がいると言われているのが、2歳牡馬・セン馬の「ジュヴェナイル」。ここまでぶっちぎりばかりで5戦5勝のオフィサーがその馬で、北米のフューチャーベットでも英国のブックメーカーでも、ともに2倍を切る1番人気となっている。ヨーロッパで6戦6勝のヨハネスブルグは、英国のブックメーカーではどこも概ね2番人気だが、北米では、サラトガのホープフルSの勝馬ケイムホーム、前走ブリーダーズフューチュリティ快勝のサイフォニックよりも、下の評価。いずれにしても、ここはオフィサーを見るレースか。

 さて問題なのが、芝12Fの「ターフ」。何が問題なのかと言うと、ファンタスティックライトとサーキーのゴドルフィン勢がともにクラシックとダブル登録しており、どちらに出走するかは、水曜日の最終登録まで決めないとしているからだ。デイリ・レイシング・フォームのオッズでは、ともに出てきたら、サーキーが3倍で1番人気、ファンタスティックライトが3.5倍で2番人気。英国のコーラルは、サーキーがこちらに廻ってきたら1.8倍で、ファンタスティックライトはクラシックに廻ると見てオッズなしとなっている。2頭ともクラシックに廻った場合には、凱旋門賞5着のミラン、カナディアン国際のムタマムあたりが人気という、手薄なメンバーになる。ミラン、ムタマムあたりなら、北米のウィズアンティシペーションでも迎え撃てると思うのだが。

 最終カードとなるのがダート10Fの「クラシック」。北米のオッズでは、前走ジョッキークラブGCを10馬身差で圧勝したアプティテュードが抜けた1番人気。一方コーラルは、ガリレオを3.25倍で1番人気にし、出走条件付きでサーキーが3.5倍の2番人気、ファンタスティックライトが4倍の3番人気で、アプティチュードは4番目の評価。アプティチュードの前走は確かに印象的だったが、2.3着馬はまるで格下で、額面通りには受け取れない気もする。ゴドルフィン勢も、ともにベルモントのダートを巧くハンドリング出来ていないという説あり。消去法で残るのはガリレオなのだが、10Fの距離に不安がある。世紀の一戦になる期待がある一方で、大どんでん返しもあるような気がするこのレース。大きく狂うようなら、休み明けをひと叩きされたインクルードと見ている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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