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週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

  • 2001年10月31日(水) 00時00分
 ブリーダーズCシリーズ(10月27日、ベルモントパーク)が終了し、様々な出自の馬が、各カテゴリーのチャンピオンに輝いた。

 ディスタフを制したアンブライドルドイレイン は、アンブライドルソングの初年度産駒にあたる。父は95年のBCジュヴェナイルの勝ち馬だから、BC親子制覇の達成だ。当歳時にキーンランドノヴェンバーセールに上場され、23万ドルで現在の馬主に購買されている。この馬自身、ノーザンダンサーをまったく所有していないため、将来の繁殖牝馬としても価値が高い。

 ジュヴェナイルフィリーズを制したテンペラは、シェイク・モハメド殿下によるケンタッキーにおける生産馬。ゴドルフィンの所有馬となり、カリフォルニアのオーイン・ハーティ厩舎に送られ、アメリカで競馬をしている。父エーピーインディは92年のBCクラシック優勝馬だから、これもBC親子制覇になる。

 マイルを制したヴァルロワイヤルは、フランス・ギャロの会長を務めるジャン・ルク・ラガルデル氏の生産馬。3歳時までラガルデル氏の所有馬としてヨーロッパで競馬をし、その後プライヴェートな売買で現在の馬主の手に渡り、アメリカに移籍した。父ロイヤルアカデミーは90年のBCマイル勝ち馬だから、これで3レース続けてのBC親子制覇。

 スプリントを制したスカートルスカートは、2000年のバレッツ・マーチセールで25,000ドルという廉価で購入された馬。1回目の公開調教で10秒37という抜群の時計をマーク。普通だと間違いなく高くなるのに、なぜこんな値段になったかというと、獣医検査で腹にわずかな欠陥があることが判明したからと言われている。現在の馬主は、それを承知で購入。最低でも16万ドルと思っていた馬が6分の1の価格で購買でき、しかもBC勝ち馬に成長したのだから、笑いが止まらない。

 フィリー&メア・ターフを制したバンクスヒルは、サウジアラビアの王族カリッド・アブドゥーラ殿下の自家生産馬。母ハシリ、祖母ケラリもともに殿下の生産馬という、守り続けてきた牝系に、これも殿下の生産馬であるデインヒルを配合して出来たのがバンクスヒルだから、まさに生粋のオーナーブリーディングホースである。

 ジュヴェナイルの勝馬ヨハネスブルクは、2000年のキーンランド・セプテンバーセールにおける20万ドルの購買馬。ヘネシーの2年目の産駒で、95年のBCジュヴェナイルでアンブライドルズソングの2着に敗れている父の雪辱を晴らしたことになる。

 ターフを制したファンタスティックライトは、母のジュードを90年のキーンランド・ジュライセールで200万ドルで購買したマクトゥーム・アル・マクトゥーム殿下の生産馬。現役時代は未勝利に終わったジュードだが、3番子のファンタスティックライトが、殿下の投資に充分お釣がくる活躍を見せた。

 クラシックを制したティッズナウは、父シーズティジー、母シーズソングともに、ティッズナウの共同馬主だったシシリア・ストローブ・ルーベンス女史が、キーンランド・セプテンバーセールで購買した馬。馬主"だった"というのは、ルーベンス女史が昨年のBC直後に、癌で亡くなっているからだ。ちなみにシーズティジーは7万2000ドル、シーズソングは5万ドルちょうどという買い物だった。父はスーパーダービー3着の成績こそあるものの、特別勝ち無しに終わり、母はわずか1勝と、競馬場ではともに大きな成功を収めることが出来なかったが、両者を交配した結果が、ティッズナウという稀代の名馬を産んだ。まさに、小規模生産者の夢の実現である。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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