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【高松宮記念】5年連続渋馬場のスプリントGI 微差の接戦をしのぎマッドクールが勝利

  • 2024年03月25日(月) 18時00分

今年の高松宮記念は特殊なスプリントGIとして記録に残りそうだ


重賞レース回顧

高松宮記念を制したマッドクール(撮影:下野雄規)


 また今年も渋馬場は避けられず、5年連続して「重-不良」馬場の高松宮記念となった。スピード能力を競うスプリント戦だけに、ちょっとマイナス要素も考えられた。

 ゴール寸戦の微差の接戦をしのいで勝ったのは5歳牡馬マッドクール(父Dark Angelダークエンジェル)。重馬場を1分08秒9(自身の前後半35秒2-33秒7)だった。

 重馬場のこの日、2R(3歳未勝利2000m)をインから差し切ったのはモアナフリューゲル(西村淳也騎手)、5R(古馬1勝クラス1600m)でインから抜け出たのはアルゲンテウス(M.デムーロ騎手)、8R(1勝クラス)の芝1200mをアシャカタカ、9Rの芝2200m(大寒桜賞)をシュガークンで道中内を通って逃げ切ったのはともに武豊騎手。最内を狙うのは不利ではない芝状態だった。

 マッドクールの坂井瑠星騎手は絶好の好位のインで、2着に惜敗のナムラクレア(父ミッキーアイル)の浜中俊騎手も、(枠順も味方して)内ラチ沿いのポジションを譲ることはなかった。

 だが、不思議だったのは1分08秒9の遅い勝ち時計にとどまったのは「重馬場」であることは誰の目にも明らかだが、レース全体の前後半バランスが「34秒9-34秒0」=1分08秒9だったこと。

 GIの1200mのスプリント戦が、8Rの「前半35秒1」とほとんど同じような楽なペースで展開している。走りにくい馬場で、先行タイプが飛ばすことなく制御しつつのレースになったこと、もうひとつは、香港から挑戦してきたビクターザウィナー(父Toronadoトロナド)陣営の「抜群のテンのスピードを生かしたい」、そんなしたたかな牽制球のような発言を真に受けたか、だれも積極策に出なかったことだ。そのビクターザウィナーのテンのダッシュは、重馬場だったこともあるが、「12秒5-10秒8-11秒6」=34秒9にすぎず、そこで上がりは大バテせずに34秒5。

 1996年から1200mのGIとなった高松宮記念の前半600mが重馬場で34秒台(不良馬場の23年は35秒台)になったことはある。だが、1200mのGI高松宮記念でダッシュした前半の600mが、後半の600mより遅かったことなどふつうはありえない。

 ただ、探したら一度だけスローバランスの年があった。2013年にロードカナロアが勝った年のことで、どうしても行きたいのは10番人気のハクサンムーン(父アドマイヤムーン)くらい。「34秒3-33秒8」=1分08秒1。前半の方が0秒5も遅く、大事に中団に控えた断然人気のロードカナロアが上がり33秒2で一気に差し切った。

 重馬場だったからとはいえ、後半の600mの方が0秒9も速くなった今年の高松宮記念は、かなり特殊なスプリントGIとして記録に残りそうだ。

 敗れた馬の敗因は「馬場を気にしたこと」、多頭数の外枠なので「内ラチ沿いを狙うことができなかったこと」、「予想外の緩い流れになってしまったこと」に集約されるだろうが、上がり最速の33秒2(偶然だがスローバランスになった年のロードカナロアと同じ)で猛然と突っ込んでアタマ差同タイム2着のナムラクレアは無念。これで1200mのGI「5、2、3、2」着。あと一歩勝ちみに遅く、また運がないのは事実だが、今年のペース(前半34秒9)ならもう少し早く動けたかもしれない。そんな悔いが残った気がする。

 重馬場で4歳馬ルガル(父ドゥラメンテ)は一気に人気になった。3歳春から芝1400m以下の短距離戦に方向転換して【2-3-1-1】。前走、1200mのGIIIシルクロードSを3馬身差で初重賞制覇を飾って1200mは3戦「2、2、1」着。そこに不良馬場だった3歳春の「橘S(L)1400m」を、1勝馬ながら5馬身差の独走を決めた記録が加わった。秘める血統背景の魅力も大きかった。だが、橘Sは3歳馬同士でそれほど強敵もいなかった。今回もスタートはうまく出たが、この流れなので馬群はバラけず、自身は少しかかり気味。強い相手との激戦経験の不足が露呈してしまった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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