競馬白書/長岡一也

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忍び寄る春の気配

2017年01月19日(木)12時00分

注目数:5人


努力が春の気配を現実のものにしていく


 今ごろになると、ひたすら寒明けの日が待ち遠しい。冬を越す木々の芽が、いろつやを増し始めるのを心待ちしながらも、忍び寄る春の気配を探している。寒風にさらされ、夜道を歩きながらふと見上げると、オリオンの三つ星やシリウスが、さえざえときらめいている。輝く星、とてつもなく遠い。だが、わが歩む落葉の音が耳に入ると、それだけで落ちついてくる。日中、太陽をいっぱいに吸いこんだ朽ち葉のにおい、これもいい。やがてこの土をうるおし、命の源となる落葉。今まさに、希望の春へ立ち向っているときを知る思いだ。

 競馬を季節でとらえると、こんな風になるのではないか。新春を迎え、クラシック戦線へのステップを踏んでいる明け3歳馬たち。思わぬ幸運をつかんで、その勢いで次なるチャンスをものにとひたすら前を見続けている。一方で、当初からクラシックを意識してきたものもいる。牡馬ならば、戦う距離。デビューから二千米ばかりを走り、3戦目を京成杯の勝利に結びつけたコマノインパルス。新馬、葉牡丹賞と走って、次が朝日杯FSでもホープフルSでもなく、年明けの二千米だったところに、満を持していたことが窺えた。ここは勝たねばならないレース、結果を出してクラシック前哨戦出走を確実にしなければならない。当然、きっちり仕上げているから馬への負担はかかっていた。

 田辺騎手が、追い切りから馬がイライラしていたとその気持ちをつかんでいて、それを承知していての走らせ方を心していたから可能だった勝利といえる。なによりも、一番人気に応えて勝ったことは大きく、陣営の自信が、やがて人馬一体となる源になっていく。この成長こそ、夢の実現に向かって前進する原動力になるのだ。

 遠く、上空に輝く希望の星に近づくべく、しっかり足元を固めてきた努力が、春の気配を現実のものにしていく。京成杯を一番人気で勝ったのは、2010年のエイシンフラッシュ以来。そのエイシンフラッシュはダービーを勝っているのだから、コマノインパルスの春に希望がわいても不思議はない。
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コラムニストプロフィール

長岡一也
長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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