競馬白書/長岡一也

お気に入り

お気に入り

登録済

過ちて改めざる、これを過ちと謂う

2017年04月27日(木)12時00分

注目数:3人


◆次に同じ過ちをくり返さないこと

 人はだれしも過(あやま)ちを犯すことがある。だから、過ちを犯したからといって必ずしも責められない。問題となるのはその後のこと。知らぬ顔をしたり、居直ったりするから許されないのだが、「過ちて改めざる、これを過ちと謂(い)う」と論語には出てくる。では、その先はどうするか。過ちを認め、次に同じ過ちをくり返さないこと。この二つを守るだけでずいぶん違ってくる。自分を向上させるキッカケは、こういうところから生じてくるから、バカにできないのだ。

 人と馬の関係でもこうしたことはあるだろう。だから、どう対処するか、人それぞれの知恵があるのだ。最強のマイル王者に君臨したタイキシャトルは、最初のうちは3度もゲート試験に落ちていて、けいこではダッシュが悪かったが、馬の自覚が芽生えるまで人間のエゴを強要しなかったと藤沢調教師は語っていた。パートナーの岡部幸雄騎手は、ビッグハートで気持ちが前向きな馬と言っていたが、人間の対処の仕方が成功した例と言える。

 レースにのぞむにあたりどの陣営でも、それぞれのやり方で勝負にきている。それをどう見抜くかがムズカシイ。

 フローラステークスを12番人気で勝利したモズカッチャンには、デビューしてからしばらくスタートに問題があった。鮫島一歩調教師は、3戦目に初勝利したあとの4戦目、500万の条件戦でよくなっていた。慣れてきたのか、頭がいい馬と言うのか、とにかく学習能力の高いところを見せてくれたと語っていた。馬への信頼があったからこその対処の仕方をしてきたのだろう。

 レースでは一番枠を生かして好位につけ、馬に与えるプレッシャーは少なくという配慮が感じられた。勝ったことで、人馬の自信が深まったのは確か。一戦ごとに力をつけて3連勝で、大目標のオークスとなれば、その意気込みはどれほどか想像がつく。

 では、ここまでくるまでにどんな葛藤があったのか。他者には知る由もないが、とにかく人馬のこころが通じ合ったからこその成果であったのは確かだ。大目標に向ってそれぞれのやり方で努力が続けられている。馬の質が向上したいま、力の差は紙一重だ。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コラムニストプロフィール

長岡一也
長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

長岡一也『競馬白書』バックナンバー