競馬白書/長岡一也

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絶対王者の戦い方

2017年03月23日(木)12時00分

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◆絶対に負けまいとして戦い、横綱相撲で圧倒していた

 その必勝法を尋ねられ、「勝とうとして打ってはいけない。負けまいとして打つべきである。どういう手を打つと、すぐに負けてしまうだろうと熟慮し、その手を使わずに、たとえ一目なりとも、遅く負ける手を選んで打つべきである」と、双六の名人は答えたと徒然草の第百十段に書かれてある。これは、双六の道の奥義に達したうえでの教えなのだが、これと同じことが他の道においても言えるのではないか。絶対王者の戦い方を現実にしてみると、こんな風景が見えてくる。

 如何にも力づくで圧倒するのも強いと言えるが、その上を行くのがこういうことではないか。阪神大賞典のサトノダイヤモンドの勝ち方を見ていて、こんな風に思ったのだ。

 ただ勝ったのではなく、絶対に負けまいとして戦い、その結果として横綱相撲で圧倒していたということ、こんなシーンは、そう度々見られるものではない。安定感抜群の内容だったことは、パートナーのルメール騎手の言葉、「サトノダイヤモンドは今年も強いです。ずっと大人になっていて、能力を十分に発揮しました。この馬に乗るときはいつも気持ちがいいです。今は友達になりました」から、十二分に察することができた。これならこの先に見据えている凱旋門賞だって夢ではない。絶対王者の姿を見たと、いまは強く思っている。サトノダイヤモンドの輝きを、この一年の励みにしたい。

 シェイクスピアの「オセロー」に、「過ぎ去った不幸を嘆くのは、すぐにまた新しい不幸を招くもとだ」とあるが、これは絶対王者を追う側の心境に通じる。足もとをしっかり固めて次のステップを踏み出せるように力をつけていく。それを実現するのは意志力だけ。これを実現してみせているのが、スプリングステークスを5番人気で勝利したウインブライトだ。デビューして2戦は結果が出ず6着、5着に終っていたが、3か月半の休養をとったところ、馬体がぐんと成長し初勝利、次の特別戦でアウトライアーズに敗れてはいたが、大事なトライアル戦で見事これに雪辱し、晴れてクラシックを戦うところまで躍進できた。常に強い意志で前を向き、これに馬が応えてくれたのだ。どちらのタイプに思いを寄せるか、それが問題だ。
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コラムニストプロフィール

長岡一也
長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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