競馬白書/長岡一也

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「未練」を捨て去り「生まれかわる」

2017年02月23日(木)12時00分

注目数:9人


◆過去と未来が交錯する今をどう生き抜くか

 過去に執着し、過去にとらわれるのは「未練」であり、熟達した人間なら、いさぎよく過去を振り切る力を身につけていると言う。これは日本的な性格を述べているのであって、欧米の人間には通じない考え方なのだと昔、なにかで読んだことがある。日本の歌謡曲の歌詞には、よくこの「未練」が出てくる。だからではないが、年が明けて新しい年になると生まれかわったような気になると言って、新しい年に期待をする。「年忘れ」の真意は、こんなところにあるのか。しかし、人間はそんなにかんたんに生まれかわったようになれるのか。そうなることは、それまでの過去をいっさい無にしてしまうことではないか。そうとも言える。過去と未来、それが交錯する今をどう生き抜くか、それが問題だ。

 競馬だって、この過去と未来をどう案配するかだ。フェブラリーSを勝ったゴールドドリームは、「年忘れ」を経て「生まれかわった」姿を見せてくれた。新しい年に期待する姿を見せてくれたのだ。この馬に「未練」の部分をもとめるとすれば、先日亡くなった父馬ゴールドアリュールになる。急死した父に捧げる弔い星、こう言えば十分に「未練」が満ちる。だが、チャンピオンズC12着からの見事な変身だから、ここは「生まれかわった」方を取るべきだろう。前走の大敗が、中二週の厳しいローテーションからくる馬のいらだちとつかんでいた陣営は、年明けはここ一本と、2か月半のリフレッシュ期間をとっていた。加えて、東京のダート1600米は前年の3歳時、ヒヤシンスSとユニコーンSを勝っており、11月の武蔵野Sは2着でも内に入って動きにくいもどかしさが残っていた。前走のように道中で脚を無駄に使ってはならないと、3度目の騎乗となるデムーロ騎手は意を決していた。人馬一体でつかんだGI制覇には、執念で「生まれかわった」姿を見ることができた。

 得意の舞台で能力を出し切れたゴールドドリームはまだ4歳馬、さらなる成長が期待される。残る課題、レースにいってのさらなる集中力が増せば、世代交代、ダート界の新星を確定づけるのも夢ではなくなった。「未練」を捨て去り「生まれかわる」姿を見ると、こちらも励みになる。
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コラムニストプロフィール

長岡一也
長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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