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血統ビーム タイプ別分類ガイド サンデー系編Vol.1

  • 2018年08月24日(金) 18時30分
血統マニュアル

▲ netkeiba Books+ から血統ビーム タイプ別分類ガイド サンデー系編Vol.1の1章、2章をお届けいたします。(写真:サンデーサイレンス/福田淳司)


血統馬券予想理論「血統ビーム」の提唱者で、血統マニアから絶大な信頼を受けるカリスマ・亀谷敬正が書き下ろした、”すぐに使える血統マニュアル”。著書『血統の教科書』をベースに、「血統は堅苦しい」という概念を覆す簡便さでアプローチ。これさえ読めば、アナタもいっぱしの”血統マスター”になれるかも!?

(文:亀谷敬正)



第1章 サンデーサイレンス


 今の競馬はサンデーサイレンス抜きには語れない。ダービーも出走馬の大多数はサンデーサイレンスの血を持っている。そこで重要なのが“サンデー系のタイプ分け”になる。とくに芝マイル以上では「サンデーの血をどのように遺伝したか」を「タイプ分け」することが重要になる。サンデーの後継種牡馬を現役時代の戦歴、産駒の傾向、そして“血統構成”を分析。「スピードがより強いサンデー系」、「スタミナが強いサンデー系」、「パワーが強いサンデー系」などタイプ分類することで、大まかな傾向が見えてくる。

 なお、血統のタイプ分け、およびタイプ別の競走データは「亀谷ホームページ」の「スマート出馬表」にて無料公開されている。ぜひ参考にしていただきたい。「スマート出馬表」ではサンデー系種牡馬をスタミナ寄りの“Tサンデー系”、スピード寄りの“Pサンデー系”、ダート寄りの“Dサンデー系”、ローカル寄りの“Lサンデー系”に分類している。

 前編では“Tサンデー系”に分類されるサンデー系種牡馬を個別に分析した。例えば、ディープインパクトとハーツクライは「大雑把に見れば」大した差はない。しかし「細かく見れば」当然“違い”は出る。また、ディープインパクトとブラックタイドにいたっては血統がまったく同じ。産駒も「大雑把に見れば」似ている部分はあるが「細かく」見れば、当然異なる。では早速、各サンデー系種牡馬の「大雑把」に似ている部分と「細かな違い」を基礎血統のサンデーサイレンスから分析してゆこう。

◆日本適性の高いヘイルトゥリーズン系のなかでも最高レベルのトップスピード

 サンデーサイレンスは父父ヘイルトゥリーズン。産駒にはヘイローの他にロベルト。ロベルトの産駒にはブライアンズタイム、クリスエス(シンボリクリスエスの父)、シルヴァーホーク(モーリスの父父。グラスワンダーの父)などがいる。

 父はヘイロー。産駒にはサンデーサイレンスの他に、タイキシャトルの父デヴィルズバッグ、キングヘイローの母グッバイヘイロー、グロリアスソングなど。グロリアスソングは、ジャパンCを勝ったシングスピール、同3着のファンタスティックライトの父ラーイの母でもある。

1996年:ジャパンカップ


 そして、ヴィブロス、シュヴァルグランの母ハルーワスウィートの基礎牝系としても知られている。もしも、サンデーサイレンスが日本にいなくても(むしろ、いなければもっと)ヘイローの血は日本で成功を収めたであろう。

 サンデーサイレンスはいわずもがな、その他のヘイルトゥリーズン系の種牡馬、繁殖牝馬も日本の芝競馬に高い適性を見せている。日本の芝コース自体が、直線でスピードを発揮しやすい路盤であること。イギリスに比べれば起伏が緩く、道中で脚をタメ、直線でスピードを爆発させやすいコースが多いこともサンデーサイレンスの血を引く馬たちにとっては好都合だった。

 と、今では書けるが、父ヘイローの日本での代表産駒は札幌3歳Sに勝ったメローフルーツくらいで、母の父としての活躍馬(シングスピール、キングヘイローなど)が出るのも数年後のこと。ディープインパクトやハーツクライが出るのもサンデーが種牡馬になってから10年近くの年月を要している。

血統マニュアル

メローフルーツ/札幌3歳S(JRA)


 また、サンデーサイレンスが種牡馬としてデビューした当時の世界的評価は、不当に低かったのではないか? ゴドルフィンやクールモアも、ニアルコスファミリーなど、世界レベルの大馬主がサンデーサイレンスの素晴らしさにもっと早く気づき、自前の名繁殖牝馬にもっと力を入れてサンデーを配合していたら、今の世界の血統地図にサンデー系がもっと広がっていた可能性はある。

◆母父としてのサンデーサイレンスも「伸びるスピード」を強化

 サンデーサイレンスは、スプリント戦で勝てるスピードを、直線の伸びに転化する才能を持った血統でもある。母父に入った場合でもその才能は遺伝しやすい。例えば、サクラバクシンオーとの配合ではグランプリボスが芝1600m(GI)を優勝したのが象徴的だ。ただし、伸びるスピードと相反するスプリント戦やダート戦で前半から追走するスピード能力は落ちる。バクシンオー×サンデーの配合は芝1200mの勝ち星比率が大幅に下がるのも、スプリント戦の追走スピードが落ちるから。実際、グランプリボスも芝1200m重賞は勝てなかった。

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グランプリボス/NHKマイルC(撮影:下野雄規)


 一方、エンドスウィープ×母父サンデーの配合馬アドマイヤムーンはジャパンCを優勝。種牡馬入りしたアドマイヤムーンは、サンデーの影響力が薄れ、フォーティナイナー系本来の特色であるスプリント戦での強さを発揮する産駒が多い。

(2章につづく)
ディープインパクト

▲ netkeiba Books+ から血統ビーム タイプ別分類ガイド サンデー系編Vol.1の1章、2章をお届けいたします。(写真:ディープインパクト/福田淳司)


第2章 ディープインパクト


◆フランス的要素、直線スピードを父以上に強化

 無敗の3冠馬ディープインパクトは、2017年も当然のごとくリーディングサイヤーを獲得。最大の武器は芝コースの直線で発揮するスピードだ。スタミナを温存しやすい流れ、馬場で直線のスピード比べに滅法強い産駒を安定して出す。父サンデーサイレンスと比較した場合、現役時代のレースも血統構成も「芝でタメて末脚を伸ばす」個性が強化されている。

 血統は、サンデーサイレンスよりもさらにフランス的要素が強くなっている。サンデーサイレンス以上に、芝レースでの末脚スピード勝負の適性は上がる。苦手なのは、持続して粘りこむパターンが有利な競馬。苦手といわれていた中山の重賞でディープ産駒が急に勝てるようになったのは、中山の路盤が改修されて直線で差し馬がスピードを発揮できるようになったから。路盤が改修された直後に行われた中山の有馬記念でジェンティルドンナがいきなり勝ったのは、中山芝がディープ有利になりやすくなったことを如実に表す象徴的な出来事だった。

2014年:有馬記念

 今の中山でも、今年の皐月賞(優勝馬エポカドーロ)のように差し馬がスピードを発揮できないタフな馬場は苦手。この場合、ステイゴールド系やロベルト系の持続力に敗れやすくなる。このようにJRAの芝中距離は、ディープインパクトが好む馬場状態やコースが主流。能力を発揮しやすいということは、すぐに実力がバレてしまう(オッズに反映される)ため、基礎期待値は高くない。良血で人気になりやすい馬が多いことも、期待値が上がらない大きな要因となっている。

◆サンデーサイレンスと大きく異なる繁殖の成功パターン

 父サンデーサイレンスに比べ、ディープインパクトはフランス的なマイル色が強い。よって、母父との成功パターンにも、差が見られる。サンデーサイレンスは母父アメリカ血統との芝中距離G1での成功例もディープインパクトやハーツクライに比べれば少ない。例えば、ディープインパクトの黄金配合のひとつとされるストームキャットとの配合も、サンデーサイレンスはJRAの芝GI勝ち馬を出していない。

 つまり、サンデーサイレンスの直仔とサンデーサイレンス系(二世、三世)では母馬の血統構成も「変化」している。父サンデーサイレンスと後継種牡馬の「違い」を簡潔に理解するだけでも、今の競馬予想をするうえでは有効だ。

◆米国型繁殖が主体になった影響を受けている牡馬の古馬

 繁殖牝馬の成功パターンもサンデーサイレンスとは違うタイプの仔が活躍している。日本の芝競馬での「成功」とは、すなわちダービーが行われる3歳の5月末に東京芝2400mで最大限のパフォーマンスを発揮することだ。この「成功」を収めるには、ディープインパクトはサンデーサイレンスと比べると“米国スピード色”の強い繁殖牝馬との成功例が多い。ただし、3歳牡馬で高いパフォーマンスを発揮した母系が米国色の強い馬は、古馬になって中長距離重賞、とくにGIでは信用できない馬が増える。

 逆に、古馬になって活躍した代表産駒の1頭スピルバーグは母母父が欧州型血統のサドラーズウェルズ。3歳春の牡馬クラシックで成功パターンと呼ばれる配合とは異なる。古馬の牝馬は重賞レースにおいては、牡馬よりも全体的に優秀。母系が米国型の血統でも、牝馬の場合は牡馬に比べると柔らかさを維持しやすい。斤量が軽いことも、ディープ産駒にとっては有効な面もあるのだろう。

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スピルバーグ/天皇賞・秋(撮影:下野雄規)


◆勢いが重要で、狙い目は昇級戦の重賞

 とくに、芝のレースの場合“勢い”が重要だ。前走が格下の昇級戦の成績が最も優秀で、逆に同クラス負けていた馬は人気になっても巻き返し期待値は下がる。重賞レースでも、昇級戦で2番人気以下の複勝回収率は104%。単勝合成オッズ回収率(オッズに応じて均等に配分する回収率)も104%。単純に昇級戦の重賞で狙うだけでも期待値はかなり高い。なお、芝1800、2000mハンデ重賞では、人気薄であれば前走着順問わず期待値は高い。

◆配合育成ノウハウが成熟したこれからが本番

 ディープインパクトはサンデーサイレンス種付け11年目。ハーツクライも10年目に誕生している。サンデーサイレンスですら、繁殖牝馬の選定、育成のノウハウ確立までに10年以上の歳月を要したのだ。ディープインパクトも今年の2歳が9世代目。これから、さらなる大物の誕生も見込める。

 また、ディープインパクトはサンデーサイレンス以上に世界的な名繁殖牝馬との配合も行われている。例えば、先日のジャック・ル・マロワ賞を圧勝したアルファセントーリのオーナーのニアルコスファミリーは、日本の社台グループに負けずとも劣らない世界レベルの繁殖牝馬を多数所有している。

血統マニュアル

アルファセントーリ/ジャック・ル・マロワ賞(Racingfotos Ltd)


 同オーナーグループは、ディープ産駒のスタディオブマンも所有。ディープをますます気に入るだろうし、アルファセントーリの基礎牝系ミエスクの系統の繁殖牝馬を、どんどんディープインパクトに配合する可能性もある。ミエスクは日本のスピード競馬に親和性が高く、基礎能力も極めて高い。ディープとの配合は日本向き。「ディープインパクト最高の後継種牡馬は海外から」という可能性も十分にあるだろう。

(続きは 『netkeiba Books+』 で)
血統ビーム タイプ別分類ガイド サンデー系編Vol.1
  1. 第1章 サンデーサイレンス
  2. 第2章 ディープインパクト
  3. 第3章 ハーツクライ
  4. 第4章 ブラックタイド
  5. 第5章 ステイゴール
  6. 第6章 オルフェーヴル
  7. 第7章 その他Tサンデー系
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