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ダートで大活躍のヘヴンリーロマンスの子どもたち 兄弟対決がG1で実現

デイリースポーツ
  • 2016年11月22日(火) 14時00分
 G1のきょうだい対決はなかなか実現するものではない。名勝負を挙げるならダイワスカーレット(2着)VSダイワメジャー(3着)の07年有馬記念だろうか。珍しいケースだと94年ジャパンカップマーベラスクラウン(1着)VSグランドフロティア(8着同着・米国馬)、エルナンド(4着・仏国馬)VSヨハンクアッツ(12着・米国馬)と2組のきょうだい対決が実現。最近ならマイルCSのクラレント(11着)VSサトノルパン(18着)だ。

 今年のチャンピオンズカップ(12月4日・中京)は兄弟対決が注目を集める。ダートで6戦無敗のアウォーディー(牡6歳)と今年の米三冠レースに出走したラニ(牡3歳)だ。母は天覧競馬の05年天皇賞(秋)優勝馬ヘヴンリーロマンス。芝のG1馬から優秀なダート馬が誕生した。また、チャンピオンズカップ出走は見送った地方交流重賞5勝馬アムールブリエ(牝5歳)も前記2頭のきょうだいだ。

 それぞれが違った個性を持っている。母ヘヴンリーロマンスを担当していた丸内助手は、アウォーディーアムールブリエ(現在は別の担当者)、ラニと、その子どもたちも担当。性格を分析してもらった。

 まずはアウォーディー。「一定の枠のなかでヤンチャするタイプ。怒られる状況だとわかっていると(ヤンチャを)しない」。わきまえているというか、意外とズルい性格なのかもしれない。アムールブリエには「普段がおとなしいから、イレ込んだときは振り幅がハンパない」と、こちらも気難しい一面を持ち合わせるようだ。

 最も気性がきついのがラニ。米遠征時には現地メディアから“ゴジラ”と呼ばれるほどだった。「自分が一番強いと思っている。併せ馬だと隣の馬にかみついたりするし、人間を傷つけることもお構いなし。加減しないし、いつも全力。怒ると自分を抑えられない」。普段はとにかく威嚇がすごい。「ほえるとノーコントロール。アメリカでパドックをパスされたけど、何も特別扱いされたわけじゃない。他の馬が萎縮するから、アメリカ陣営からの要望だった」。アメリカの関係者たちを震え上がらせるほどの荒くれ者である。

 UAEダービー出走時のドバイ遠征ではこんな出来事があった。偶然居合わせたのが、それまでにケンタッキーダービーなどG1・4勝し、14年度全米年度代表馬に輝いたカリフォルニアクロームだ。そんな米国最強馬にもほえて威嚇したらしい。「どちらもほえ合って一歩も引かなかったけど、最後はカリフォルニアクロームバックして下がっていった」。恐らく米国では経験がなかったに違いない。結果、ドバイワールドカップを勝ち、今やG1・7勝馬。来年、ラニと戦うシーンが見たいものだ。

 気性面は母ヘヴンリーロマンスから受け継いだもの。「他の馬といると我を出して蹴りに行くことがあった」。天皇賞(秋)のレース後、鞍上の両陛下へ向けられた最敬礼の際、ジッと立ち止まれたのが不思議なぐらいだが「あれは1頭だからできたこと」と笑う。母や、きょうだい3頭に共通するのは「自己主張が強く、自分を持っていること」と丸内助手は話す。

 ヘヴンリーロマンスから産まれた子供たちは、なぜダートで活躍するのか。芝のG1馬だが、実はダートで3戦して〈1101〉。着外は05年フェブラリーSだった。「“足が遅い=ダート馬”ではないということ」。母もマイル以上のダートを使っていれば、足の速いダート馬として活躍していたのかもしれない。

 引退後は06年から日本で繁殖牝馬となり、3頭の産駒を産んだあと、10年にジャングルポケットの子をお腹に宿した状態で渡米し、今も現地で繁殖生活を送っている。アメリカで迎えた最初の2年はスマートストライク(アムールブリエの父)、タピット(ラニの父)を種付け。スマートストライクは07、08年の北米リーディングサイヤー。07年に記録した歴代トップの年間収得賞金を14年に更新したのが14、15年の北米リーディングサイヤーに輝いたタピットだった。アメリカが誇る超優秀な種牡馬から、DNAを受け継いだのがヘヴンリーの産駒というわけだ。

 3頭のなかでヘヴンリーロマンスに似ているのは-。「性格はアウォーディー。走り方はアムールブリエラニ。完歩が大きい」。競馬はブラッドスポーツといわれる。似ているようで違う。違うようで似ている。だから血統は面白い。(デイリースポーツ・井上達也)

提供:デイリースポーツ

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