厩舎によって管理馬の“得意
ジャンル”に偏った傾向が出てくるのはなぜなのか。安田隆、西園厩舎は短距離戦線での活躍が目立つし、かつての松田博厩舎はやたらと牝馬戦線に強く、「牝馬のマツパク」と呼ばれた。
「調教師がどういうタイプの馬を好むのかが関係しているんだろうな。ガッチリした馬が好きなら短距離、逆なら長距離志向に出るとか。もちろん、調教
スタイルも影響する。坂路でバリバリやるところと、トラックでじっくりやるところとで、馬のタイプが変わってくるのはあるだろうしな」
“栗東の策士”昆調教師からこんなベスト
アンサーをいただいた。
さて本題。友道厩舎といえば、
ヴィルシーナ、
ヴィブロスらの活躍から「牝馬の友道」をイメージする方もいると思うが、実際のところ、この厩舎が一番強いのは牡馬の中長距離路線だ。
これまでの
JRA重賞31勝の内訳は1600メートル未満で未勝利なのに対し、「牡馬混合の2000メートル以上」というカテゴリーで半数以上の17勝を挙げている。もちろん、長丁場も得意な
ジャンルで、厩舎の初GI制覇が
天皇賞・春(2008年
アドマイヤジュピタ)だった。「特にウチがよその厩舎と極端に違った調整をしているわけではないと思いますが、牡馬の中長距離戦での活躍馬が多いのは確かですね」とは大江助手。
馬の成長に合わせ、時にスパッと長めの休養を入れながら、調教では坂路とウッドを織り交ぜ、強弱をつけて時計を出す
スタイルが、王道路線での強さを生み出しているのか?
ともかく、この
ジャンルでの友道厩舎の強さを考えれば、春天の
シュヴァルグランも要注意だ。今年に入ってから攻め馬で妙に動くようになっており、1週前追い切りでも、時計のかかるウッドで「6ハロン80秒切り」という、以前のこの馬なら考えられない時計(6ハロン79.5-12.7秒)をマークしてみせた。
「ここにきて(調教の)やり方もいろいろ変えてますからね。それに伴って馬が確実に力をつけてきたと感じています」(大江助手)
シュヴァルグランの主戦を務める福永は、常々「調子のバロ
メーターは身のこなしにある」と話しているが、この1週前追いに騎乗した藤岡康も、似たようなフレーズを持ち出して、その成長ぶりを伝えてきた。
「さばきが軽くなって、道中で追走している時の雰囲気が変わりました。その分、全体時計を詰められるようになったし、馬がしっかりしてきたと感じます」
まだ良化の余地を多分に残していた昨年の春天でも0秒2差3着。攻め馬では完全本格化の兆しを見せている今の
シュヴァルグランなら…。正攻法に打って出る
キタサンブラックとそれをマークする
サトノダイヤモンドの「2強」の間隙を突いて、大金星を挙げても驚けないのでは。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ