「想定は今どうなってるの? 登録は10頭以下に収まりそう?」
ヤングマンパワーを担当する森信次郎厩務員が、当方にこんな逆取材をぶつけてきたのは3週前。彼が気に掛けていたのは、GII
毎日王冠の出走予定馬だ。
「例年通りの組み合わせなら掲示板くらい狙っていくとこなんだけどさ。今年のメンバーはちょっとゴツすぎるだろ? プレGIじゃなく、モロGIじゃん。ビリでも賞金がもらえる10頭立てになれば、俺もちょっとはヤキモキせず送り出せるんだけどねぇ(笑い)」
普段はそこまで弱気なことを口にする男ではない。担当馬とて3つの重賞を制する堂々たる
タイトルホルダーでもあるのだ。それでも…。メンバーには今年の
オークス馬
ソウルスターリング、昨年のダービー馬
マカヒキを筆頭に5頭のGI馬。そのビッグネームが戦意を奪うほどの威圧感を与えているのだろうか。
「いや、単に戦歴だけじゃなくてさ。GI馬がここから始動するってことは、すなわち天皇賞をメイチで取りにいくという意思表示だろ。
ステップレースといってもヌルい競馬になるわけがない。これまでの
スタイルを変えて、思い切ってハナに行って自分で競馬をつくるしかないのかも」
森厩務員の言う通り、
毎日王冠と秋天との連動性は極めて高い。近10年でも半数の5頭がこの路線で秋の盾制覇を成し遂げている。その目安の数字は、おおむね1分45秒台前半の高速決着。各馬の本気度が高い今年も、おそらく前哨戦とは思えないタイトな激戦が待ち受けているはずである。
その意味でも最も注目されるのは、ハイレベルとうたわれた今年の3歳牝馬戦線の頂点に立つ
ソウルスターリングの戦いぶり。秋の天皇賞馬を過去4頭輩出する名門・
藤沢和雄厩舎。うち
スピルバーグ、
バブルガムフェローの2頭は、この舞台(ともに3着)を経て本番で栄冠を手中にしている。中でも3歳馬として史上初制覇を遂げた後者の姿は、今回のチャレンジ(勝てば3歳牝馬初の盾制覇)とオーバーラップするものがあろう。
「速いペースのほうが競馬は楽。東京千八、二千は言うことがない舞台だし、古馬相手でもいいスタートを切ってほしい」の指揮官の言葉通り、本番を占うには格好の豪華メンバー。天皇賞春秋制覇を狙う
キタサンブラックを脅かす競馬ができるか。注目大の前哨戦である。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ