「
菊花賞といえば、昔はスタミナが必要だったけど、今はスピード、瞬発力という時代に変わったよね」(中竹調教師)
こんなことを言う関係者は少なくない。確かにレースの上がり3ハロンが35秒を切る年は少なくないし、時には33秒台の決め手を要求される年すらあるが…。毎年決まって上がり勝負になるわけではない。
例えば
キタサンブラックが勝った2015年は前後半3、4ハロンがほぼ同じというミドルペース(前半35秒4-47秒7、後半47秒3-35秒4)、14年(
トーホウジャッカル)に至っては最初の1ハロン以外、ハロン13秒台に落ち込むことは一度もなく、なおかつラスト4ハロンがいずれも11秒台(11秒7-11秒7-11秒6-11秒6)という持久力と切れ味をともに要求される極限の戦いになった。意外にペースを読むのが難しい――それが“21世紀の
菊花賞”なのだ。
「ウチの馬は3頭それぞれの持ち味が違いますからね。そういう意味ではレースを有利に進められるのかな」と話すのは、
アルアイン、
サトノアーサー、
サトノクロニクルの3頭出しで菊の大輪を狙う池江キュウ舎の兼武助手だ。
「
アルアインには立ち回りのうまさと心肺機能の高さ、何より
皐月賞馬という実績がある。そして長丁場をこなせるスタミナに裏打ちされた持続的な脚なら
サトノクロニクル、スムーズに折り合った時の一瞬の切れ味なら
サトノアーサーってことになりますかね」
純粋なポテンシャル勝負なら
アルアイン、スタミナ戦になった時は
サトノクロニクル、逆に切れ味勝負なら
サトノアーサー…見事にすみ分けができている今年の池江軍団3頭なら、どんな展開になっても、それぞれがお互いをカバーできるというわけだ。
その中でも、坂路野郎が一番気になるのは、
ミルコ・デムーロが
トライアルにともに騎乗したうえで、
キセキ(
神戸新聞杯2着)より距離適性の高さを評価していた
サトノクロニクル(
セントライト記念3着)だ。
デムーロが
サトノクロニクルを捨て、
キセキを選んだ形になっているため、微妙に評価を下げるだろうが、混戦だけにペースが流れて、自慢のスタミナを要求される展開になれば…。池江キュウ舎“第3の馬”が、好配当を運んでくれる可能性は十分にあるとみている。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ