長距離路線の衰退に伴って、春の天皇賞の権威の低下が懸念されているが、秋の天皇賞についても同じことが言える。
ジャパンC、
有馬記念が1着賞金3億円であるのに対して、天皇賞は1億5000万円。
ジャパンC、
有馬記念を本気で獲りに行く馬たちには、天皇賞は「叩き台」として利用される傾向が顕著になっている。
1.先行押し切りは至難の業
過去10年間、逃げた馬は全敗。4コーナー3番手以内まで広げても、馬券圏内に入ったのは
イスラボニータ(2014年)、
ジェンティルドンナ(2013、14年)、
ダイワスカーレット(2008年)だけで、力のある先行馬がやっと2、3着、というのが秋の天皇賞の傾向。
2.数少ない58kgレース
天皇賞では、古馬牡馬は馬齢重量58kgを背負う。
宝塚記念、
安田記念とともに、いまでは数少ない58kgレースになっている。58kgを背負っての実績が重要なポイントとなるのはもちろんだが、56kg以下で出走できる3歳馬や牝馬が上位争いできる原因のひとつにもなっている。
3.
毎日王冠は負けるが勝ち
過去10年で
毎日王冠の勝ち馬が秋の天皇賞に出走したことは8回あるが、連勝したのは2009年の
カンパニーただ一頭。人気以上の着順に走ったのも
カンパニーだけ。2012年は
毎日王冠で9着に敗れた
エイシンフラッシュが天皇賞を勝利して、一昨年は
毎日王冠7着の
ステファノスが天皇賞2着。中2週と間隔が詰まっていて連続好走が難しいローテーションでもあり、むしろ負けた組の巻き返しに妙味がある。
毎日王冠で8着に敗れた3歳牝馬
ソウルスターリングを見直したい。
毎日王冠は3F32秒台の末脚が要求される流れでこの馬には不向きだったし、初めて逃げる形の競馬になって集中力が途切れた面もあった。天皇賞であそこまで上がりが速くなることは想定しづらいし、目標になる馬もいて競馬はしやすくなる。
藤沢和雄調教師は、これまで
毎日王冠3勝に対して秋の天皇賞は5勝。3歳牝馬では、
秋華賞で4着に敗れた
ダンスインザムードを中1週で天皇賞に挑ませて2着した実績もある。秋の天皇賞5勝のうち、前走も勝っていたのは
神戸新聞杯から挑んだ2002年の
シンボリクリスエスだけで、残りの4回はいずれも前走で星を落としていた。秋の天皇賞の勝ち方を熟知した名調教師の、本番に向けての修正の妙技に期待したい。