天皇賞・秋のレース直後の検量室。びしょ濡れになった平岩大典助手(大竹キュウ舎=
グレーターロンドン)に“お疲れさま”の声を掛けると、興味深い言葉が返ってきた。
「この状況で馬は頑張ったんじゃないですか。今日は心肺機能の高さで勝負が決まる、そんな馬場でしたからねぇ」
ラスト1ハロンは14秒0のもがき合い。切れ味やセンスを無力化する舞台において明暗を分けたのは、日頃表面化しない内面の強さだったろう。平岩クンの言葉通りなら、
天皇賞・春レコードVの排気量を誇る
キタサンブラックにはまさに
ウェルカムな舞台。秋ではなく春のイメージで天皇賞を予想すれば、3着馬
レインボーライン(
菊花賞2着)を含めて馬券も簡単に取れた一戦だったかもしれない。
さて、今週の東京メーン・
アルゼンチン共和国杯は、言わずもがなスタミナ自慢が集う一戦。「ここを使って
ステイヤーズSを視野に」と語る
プレストウィックの
武藤善則調教師のみならず、同じ路線を描く陣営は少なくなさそうだ。
さて、その武藤師が週明けに「
アルバートが強いのは分かっているけど、むしろここは3歳馬が肝なんじゃないの?」と興味深い言葉を放ってきた。きっと遠回しの逆取材だろう。56キロ
スワーヴリチャードは5か月ぶりで息持ち、54キロ
セダブリランテスは初の長距離と、それぞれ死角あり。こう告げると、がぜん意欲を見せ始めたのがその証拠だ。
「丹頂Sからの
ステップは昨年(10着)と同じだけど、4着から進むのと、勝って行くんじゃ弾みが違う。それに昨年は道中かかりまくって0秒8差だからね。そこも含めて長丁場は堅実だし、別定の
ステイヤーズSで
アルバートとは0秒7差。
ダイヤモンドS(54キロ=5着)は明らかに太め(14キロ増)だから、3.5キロあれば差は詰まると思うんだ。もっとも上がり37秒3で丹頂Sを勝つようなタイプ。雨中の競馬が3週続いて時計がかかればなおいいね」
芦毛ながらもまだ黒々した馬体は、その年齢(6歳)を見まがうほど。5歳時に500万からオープン入りを果たした晩成の血は、自身の毛色にもしるされている。指揮官の期待通りタフな馬場なら、
ザラストロ(12年
新潟2歳S)以来の重賞制覇も夢ではなさそうだが、果たして今週の馬場状況は?
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ