実に5頭ほどが出遅れた今年の
府中牝馬S。その原因のひとつになったのは、ある馬のゲート内の“所作”だった。
「
パトロールを見てみれば分かりますよ。ウチの隣にいたあの馬が、ゲートの中でずっとバタバタしていたから」
出遅れの被害者?となった
クイーンズリング(3番人気4着)を管理する吉村調教師の弁だ。
実際にレースリプレーを見てみると、
クイーンズリングの隣に入っていた
トーセンビクトリーが、ゲートの中でずっとガチャガチャしており、その影響を受けた馬がバタついてしまったことで、出遅れが“多発”したようにも見える。
「まあ、そういったことも含めての競馬ですからね。ただ、あのスローペースで後手に回ってしまったのはかなり痛かった」(吉村調教師)
先日の
天皇賞・秋の
キタサンブラックのように、出遅れながらも難なく勝ってしまうケースもあるにはあるが…。競馬においてスタートが重要になることは今さら言うまでもない。
クイーンズリングの前走は
トーセンビクトリーの隣にいたこと自体、運がなかった。
とはいえ、同じように
トーセンビクトリーの近くにいて、その影響を受けながらも、出遅れなかった馬もいる。そのうちの一頭が
ヴィブロス(1番人気2着)だ。
「ウチのはいつもスタートがいいんですよ。前走にしても近くの馬がガタガタしたのに影響されて、ゲート内でちょっと突進するような格好は見せたけどね。出遅れまでには至らず、スタートを決めてくれました」とは担当の安田助手。
確かに
ヴィブロスのこれまでの競馬を見ると、前走も含め、時にゲート内でチャカつくことはあっても、毎回のようにスタートはきっちり決めている。これは
ヴィブロスの天賦の才なのだろう。
加えて、ラストの直線では全姉の
ヴィルシーナ(2013、14年
ヴィクトリアマイル連覇)を上回る瞬発力を駆使するのだから隙がない。
「仕上がり自体は早いタイプで、初戦からしっかり走れるけどね。使って良くなるタイプでもあるんだ。前走後も体を1週間くらいですぐに戻したし、今は張りも出てきました。ドバイ(ターフ)で強豪を破ったことを考えれば、ここは負けられないくらいの気持ち」
今春、ドバイの地で世界にその名をはせた日本の牝馬が、国内統一女王決定戦を制する――。今年の
エリザベス女王杯はそんな筋書きになるのでは。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ