365日、ずっと愛馬を手元に置き続ける。その熱意は尋常ではない。しかも約2年半の間ずっと…。第18回
チャンピオンズC(12月3日=中京ダ1800メートル)で
JRA・GI初制覇に挑む目野哲也調教師(69)のトレーナー生活はあとわずか。「トレセン発(秘)話」の高岡功記者は、
ケイティブレイブが見事“砂王”に輝き、悲願達成となれば、あの役所広司をも超える「男泣き」シーンが見られると予告した。
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今やわずか1か月でもレース間隔が空けば、近郊の育成場に短期放牧に出されることも少なくない時代。キュウ舎にいるより、放牧に出ている期間の方が長い馬も、決して珍しくはない。そんな中にあって、デビューから一度たりとも放牧に出たことがない馬がいる。
断っておくと、デビュー間もない2歳馬の話ではない。キャリアを十分に積んだ4歳馬、それもGI
チャンピオンズCに出走する馬なのだから、すごい話ではないか。
ケイティブレイブが栗東トレセンに入キュウしたのは2015年6月9日。そこから約2年半、リフレッシュ放牧すら一度もなく、トレセンと競馬場を行き来する生活をずっと続けてきたのだから恐れ入る。
「今の時代では珍しい? 昭和の時代でも、これだけずっとトレセンにいる馬はいないんじゃないか(笑い)。まあ、先生が手元に置いて調整した方がいいと判断してのこと。実際、馬もそういう形でレースを使いながら、確実に力をつけているからね」とは
ケイティブレイブが所属する目野キュウ舎の柳田助手だ。
これまででレース間隔が最も空いたのは、今年6月28日の
帝王賞(1着)から、9月27日の
日本テレビ盃(3着)までの約3か月。ほぼ休みなく、コンスタントにレースを使い続けてきた。
そのうえで掲示板を外したのは過去23戦で芝の新馬戦(8着)と今年の
フェブラリーS(6着)だけ。ここまで安定した成績を残しているとなると“馬主孝行”なんて言葉で済まされるレベルではない。
「前走(
JBCクラシック2着)にしても、前にいた
ミツバ(3着)の手応えを見ながらの競馬で、追い出しを待ったら、勝ち馬(
サウンドトゥルー)に外から一気に行かれてしまって…。もう少し積極的に運んでいれば、結果もまた違ったと思う。ここも乗り方ひとつでなんとかなっていいんじゃないか」(柳田助手)
ケイティブレイブは前出の
帝王賞で交流GIを制したのをはじめ、交流重賞で計5勝を挙げているが、
JRAのタイトルとはまだ無縁。来年2月いっぱいで定年となる目野調教師にとっては、ここが
JRA・GI制覇の最大にして最後のチャンスになるかもしれない。
「(
JRAの)GIは来年の
フェブラリーS(2月18日)もあるけど、タイプ的には東京1600メートルというより、中京1800メートルの方が合うからね。ここでなんとか結果を出して、先生を泣かせてみたいんだよね」と柳田助手はやる気満々だ。
“純度100%”のトレセン仕上げで臨む
ケイティブレイブが、調教師生活30年目にして初の
JRA・GI勝利となれば、我々は目野調教師の「男泣き」を目撃することになるかもしれない。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ