昨年の
有馬記念で4096分の1の“ミラクル”が起きた。当事者は
マリアライト(10着)に騎乗した
蛯名正義。何がミラクルかといえば、収まった枠番である。14年
オーシャンブルー(16着)→15年
マリアライト(4着)→さらに昨年と、彼の騎乗馬が3年連続で(8)枠16番を引いたのだ。内枠有利が定説の舞台で絶望的な大外枠連続的中は、07年の優勝馬
マツリダゴッホ(2枠3番)で相当量の運を使ったせいか、それとも競馬の神様(
JRA?)に袖にされているのか?
ざれごとはさておき、その蛯名が今年騎乗する
サクラアンプルールの取材を日曜(17日)に美浦で行った時、金成キュウ舎の池上昌平助手が興味深い話をしてくれた。
「枠が決まった瞬間、テレビに映し出された蛯名さんの何とも言えない表情…。失礼ながら昨年は笑っちゃいました。でも外枠が、なぜ不利か分かります? 単純に距離ロスもありますが、それだけじゃなく、サラブレッドの学習能力が関係しているんです。最初の3〜4角でスタンドから大歓声が上がると、馬はどうしても勝負どころと勘違いして加速しようとする。内枠なら馬の後ろでブレーキがかかるけど、外枠だと壁がない分、力んで走る時間が長くなる。この心身の消耗が最後で響くんです」
ちなみに、過去31年で有馬16番枠は<0-0-0-16>。今年も大外なら6万5536分の1と“神度”が増すが、真ん中より外を4連続で引く確率さえ16分の1。不運の男・蛯名とて、さすがに今年は好枠を引く番か。何より
札幌記念→
天皇賞・秋が連続して(1)枠1番。人より馬が持っている?
「距離は少し長いけど、一瞬の脚を生かすタイプ。力勝負の東京二千よりト
リッキーな中山二五のほうが、ずっと好走のイメージが湧く。
札幌記念のようにインでアドバンテージを生かせれば」
95年の
有馬記念で3着した
サクラチトセオーの近親という血統からも、枠次第では第2の
マツリダゴッホになり得る。もっとも、最大の波乱があれば大本命
キタサンブラックが“圏外”に消えた時か。こちらは昨年、
天皇賞・春→JC→有馬と大一番でことごとく1番枠を引く“持っている”馬。世相を映す一戦で、今年の漢字が「北」なら“鉄板”ムードも漂うが…。
悩むとすれば1番枠で昨年勝てなかった同馬が、大外枠を引いた場合だろう。いずれにせよ、21日の枠順抽選が今年も
グランプリの行方を左右するのは確かである。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ