トレセン近くのコンビニでバッタリ出会った磐井圭一助手から、彼の担当馬に関する“衝撃ニュース”を告げられたのは3週間ほど前である。
「いや、故障ではありません。オーストラリアへの移籍が急きょ決まったんですよ」
話の主語は
イッテツ。予定していたGIII
シルクロードSに登録がなかったことから、当初は一頓挫を推測したのだが…。重賞未勝利馬への購入オファーは予想できなかっただけに、あまりのサプ
ライズに手にした缶ビールが床に落ちた。
豪州移籍馬といえば、
トーセンスターダムが昨年トゥーラックHでGI初制覇を果たしたことが話題に。
アドマイヤデウス、
アンビシャス、
サトノラーゼンらも続々“輸出”されている。
イッテツの林正道オーナーが
アルバートにトレード話があったことを明かしたように人気沸騰の日本馬だが、それでもオープン1勝の
イッテツへの白羽の矢は意外である。なぜオージーホースマンはそこまで魅力を感じるのだろうか?
「ひとつは日本馬が示す向こうの馬場への適性でしょうね。それに島国として血の偏りを避けるため、種牡馬として
ターゲットを定める背景もあると思うんです」
こう分析するのは
イッテツを管理した
斎藤誠調教師。気になるトレード
マネーは「賞金で稼ぐのはちょっと大変な額」とのことだが、すでに現地
メディアは「日本最速の一頭が来る」とセンセーショナルに報道。今後はザ・ギャラクシー(3月24日・芝1100メートル)→TJスミスS(4月7日・芝1200メートル)のGI2戦を予定。10月に行われる芝の世界最高賞金競走ジ・エベレスト(芝1200メートル=1着賞金約5億円)を視野とも報じられている。
そこで思い知るのが、過去に豪州遠征を行った日本馬の偉大な功績だ。06年
デルタブルースの
メルボルンC制覇を皮切りに、14年
アドマイヤラクティ(
コーフィールドC)、14年
ハナズゴール(オールエイジドS)、15年
リアルインパクト(ジョージライダーS)とGIで名をとどろかせた先輩馬たち。シャトル種牡馬がもてはやされるのも、おそらくオージーが日本馬の強さを目の当たりにしたがゆえ。国際交流の意義を改めて考えた次第である。
15年初頭に栗東から美浦へ転キュウして3年。ずっと世話をしてきた磐井クンも「どこまで頑張れるか注目ですね」とエールを送る
イッテツの今後を興味深く見守りたい。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ