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あっと驚く単勝234倍、エイシンヴァラー/黒船賞回顧(斎藤修)

  • 2018年03月21日(水) 18時00分
 1998年3月に第1回が行われた黒船賞は本来であれば21回目となるはず。しかし2008年に資金難のための休止があり、そして20回目の節目を迎えた今回、第1回のリバーセキトバ以来となる地方馬の勝利となった。そのリバーセキトバは9番人気で単勝61.5倍だったが、今回勝った兵庫のエイシンヴァラーは同じ9番人気でも単勝は234.3倍と、びっくりな配当となった。

 逃げたのはグレイスフルリープだが、内枠のコパノマイケルとの競り合いとなって、最初の400m通過22秒9は、いかにも速い。2コーナーを回ったあたりでグレイスフルリープは2番手のコパノマイケルに5馬身ほどの差をつけての単騎逃げとなり、800m通過が47秒8。近年の黒船賞と比べても1秒以上速いラップを刻んだ。

 それゆえ道中はかなり縦長となり、その中団を追走していたのが人気を集めていた2頭、キングズガードブルドッグボス。4コーナーでは内を突いて抜け出し、この2頭の決着かに思われた。しかしこれをゴール前でまとめて差し切ったのがエイシンヴァラーだった。

 道中は3番手を追走、3コーナー過ぎでは、逃げていたグレイスフルリープをみずからつかまえに行った。4コーナーから鞍上のムチが入って懸命に腕を動かしていたので、直線では一杯になるかとも思えたが、ゴール前ではしぶとく伸びた。速い流れを人気馬より前で運び、最後まで伸びる脚を残していたことには驚かされた。

 エイシンヴァラーは、中央では昨年1月にオープンのジャニュアリーS(中山)勝ちがあり、大井を経由して兵庫に転厩してこれが5戦目。重賞初勝利がダートグレード制覇となった。前走、トライアルの黒潮スプリンターズカップでは、今回と同じく下原理騎手が騎乗予定だったが、悪天候により移動が間に合わず、地元の岡村卓弥騎手に乗替りとなって6着。その結果からは、今回まったく人気がなかったのもうなずける。

 とはいえ中央オープンでの勝利だけでなく、11月の笠松グランプリ(1400m)では、勝ったラブバレットの1分25秒2から3馬身差(1分25秒9)で2着。地方の小回りでも速い決着に対応できる能力は示していた。

 鞍上の下原理騎手は、2008年の佐賀記念チャンストウライで制して以来10年ぶり2度目のダートグレード制覇。新子雅司調教師も、2014年のかきつばた記念タガノジンガロで制して以来のダートグレード2勝目。偶然だろうが、そのかきつばた記念も水の浮くドロドロの不良馬場だった。

 下原騎手は昨年、初めて地方の全国リーディングでトップに立ち、新子調教師は2015年から昨年まで3年連続で兵庫リーディング。兵庫のリーディングコンビが、その勢いを感じさせる勝利ともなった。

 2着キングズガード、3着ブルドッグボスの差は、クビ、アタマ。直線を向いて先頭に立ったブルドッグボスが一旦は勝ったかにも思えたが、キングズガードはその内からゴール前でわずかにとらえて2着に食い込んだ。

 むしろ悔いが残るのはキングズガードではなかったか。4コーナーでブルドッグボスの外に進路を取ろうとしたが、手ごたえをなくしていたグレイスフルリープがいたため行く手を阻まれ、内に切り替える場面があった。4コーナーから直線にかけてはラチから3馬幅ほど水が浮いていない部分があり、それまでのレースを見ていても、そこは砂が重かったのだろう。

 ブルドッグボスが馬場が軽いと思われる内のギリギリを通っていたため、キングズガードはその内の重いところを行くしかなかった。もし4コーナーでうまく捌けていれば……と思わせるクビ差2着だった。

 ラインシュナイダーも中団から勝負どころで人気2頭と一緒に位置取りを上げていったものの、4コーナーで大外を回したことに加え、直線では伸びを欠いて4着。直線脚をなくしたグレイスフルリープは勝ち馬から1秒1差の5着。あらためてタイムを確認すると、前半800m=47秒8、レースの上り600m=39秒4で、勝ちタイムは1分27秒2。

 ほとんど同じペースの黒船賞が2013年にもあり、前半800m=47秒8、上り600m=39秒5で、勝ちタイムは1分27秒3。レースの上りがわずかコンマ1秒遅かっただけ。その時も逃げたサマーウインドが2コーナーを回るあたりで2番手に5馬身ほどの差をつける単騎の逃げで、結果は8着。ハイペースを演出したのは、そのときも武豊騎手だった。

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