1998年3月に第1回が行われた
黒船賞は本来であれば21回目となるはず。しかし2008年に資金難のための休止があり、そして20回目の節目を迎えた今回、第1回の
リバーセキトバ以来となる地方馬の勝利となった。その
リバーセキトバは9番人気で単勝61.5倍だったが、今回勝った兵庫の
エイシンヴァラーは同じ9番人気でも単勝は234.3倍と、びっくりな配当となった。
逃げたのは
グレイスフルリープだが、内枠の
コパノマイケルとの競り合いとなって、最初の400m通過22秒9は、いかにも速い。2コーナーを回ったあたりで
グレイスフルリープは2番手の
コパノマイケルに5馬身ほどの差をつけての単騎逃げとなり、800m通過が47秒8。近年の
黒船賞と比べても1秒以上速いラップを刻んだ。
それゆえ道中はかなり縦長となり、その中団を追走していたのが人気を集めていた2頭、
キングズガードと
ブルドッグボス。4コーナーでは内を突いて抜け出し、この2頭の決着かに思われた。しかしこれをゴール前でまとめて差し切ったのが
エイシンヴァラーだった。
道中は3番手を追走、3コーナー過ぎでは、逃げていた
グレイスフルリープをみずからつかまえに行った。4コーナーから鞍上のムチが入って懸命に腕を動かしていたので、直線では一杯になるかとも思えたが、ゴール前ではしぶとく伸びた。速い流れを人気馬より前で運び、最後まで伸びる脚を残していたことには驚かされた。
エイシンヴァラーは、中央では昨年1月にオープンの
ジャニュアリーS(中山)勝ちがあり、大井を経由して兵庫に転厩してこれが5戦目。重賞初勝利がダート
グレード制覇となった。前走、
トライアルの
黒潮スプリンターズカップでは、今回と同じく
下原理騎手が騎乗予定だったが、悪天候により移動が間に合わず、地元の
岡村卓弥騎手に乗替りとなって6着。その結果からは、今回まったく人気がなかったのもうなずける。
とはいえ中央オープンでの勝利だけでなく、11月の笠松
グランプリ(1400m)では、勝った
ラブバレットの1分25秒2から3馬身差(1分25秒9)で2着。地方の小回りでも速い決着に対応できる能力は示していた。
鞍上の
下原理騎手は、2008年の
佐賀記念を
チャンストウライで制して以来10年ぶり2度目のダート
グレード制覇。
新子雅司調教師も、2014年の
かきつばた記念を
タガノジンガロで制して以来のダート
グレード2勝目。偶然だろうが、その
かきつばた記念も水の浮くドロドロの不良馬場だった。
下原騎手は昨年、初めて地方の全国リーディングでトップに立ち、新子調教師は2015年から昨年まで3年連続で兵庫リーディング。兵庫のリーディングコンビが、その勢いを感じさせる勝利ともなった。
2着
キングズガード、3着
ブルドッグボスの差は、クビ、アタマ。直線を向いて先頭に立った
ブルドッグボスが一旦は勝ったかにも思えたが、
キングズガードはその内からゴール前でわずかにとらえて2着に食い込んだ。
むしろ悔いが残るのは
キングズガードではなかったか。4コーナーで
ブルドッグボスの外に進路を取ろうとしたが、手ごたえをなくしていた
グレイスフルリープがいたため行く手を阻まれ、内に切り替える場面があった。4コーナーから直線にかけてはラチから3馬幅ほど水が浮いていない部分があり、それまでのレースを見ていても、そこは砂が重かったのだろう。
ブルドッグボスが馬場が軽いと思われる内のギリギリを通っていたため、
キングズガードはその内の重いところを行くしかなかった。もし4コーナーでうまく捌けていれば……と思わせるクビ差2着だった。
ラインシュナイダーも中団から勝負どころで人気2頭と一緒に位置取りを上げていったものの、4コーナーで大外を回したことに加え、直線では伸びを欠いて4着。直線脚をなくした
グレイスフルリープは勝ち馬から1秒1差の5着。あらためてタイムを確認すると、前半800m=47秒8、レースの上り600m=39秒4で、勝ちタイムは1分27秒2。
ほとんど同じペースの
黒船賞が2013年にもあり、前半800m=47秒8、上り600m=39秒5で、勝ちタイムは1分27秒3。レースの上りがわずかコンマ1秒遅かっただけ。その時も逃げた
サマーウインドが2コーナーを回るあたりで2番手に5馬身ほどの差をつける単騎の逃げで、結果は8着。ハイペースを演出したのは、そのときも
武豊騎手だった。