「自分はつかまっていただけ」
勝利騎手が馬のセンスをたたえる際にまれに使う言葉だが、それと対照的な騎乗で勝利したのが、
大阪杯(1日)の
スワーヴリチャード=
ミルコ・デムーロだった。
ヨーイドンの流れを持続力の戦いに変えたマジックもさることながら、当方を感嘆させたのはその決断に至る過程。「
有馬記念(4着)のように外を回されるのだけは嫌だった」という談話には、敗因を展開に求めない騎手としてのプライドがにじみ出た。
果たして人に何ができるのか。今週のGI
桜花賞もそれを問う舞台になろう。
この課題に直面しているのが4戦4勝の無敗馬
ラッキーライラックに挑む関係者だ。おそらく馬のポテンシャルとして逆転の可能性を最も秘めるのは、牡馬相手の
シンザン記念を完勝した
アーモンドアイ。
ロードカナロア産駒ながら、
ディープインパクトを彷彿させる、宙を舞うようなフットワーク。
前走時に感じていた歩様の硬さは抜け、管理する
国枝栄調教師も「歴史的名牝となる可能性? ひょっとしたら、と思わせる部分はある」と無敗の女王が相手でも、こちらには性別を超えたすごみがある。
だが、どうしても引っ掛かるのは
トライアルをパスした異色のローテ。「何ができるか」という点において、最大目標とする
桜花賞が
ステップでないことは明白。これで勝つならまさに別次元だが、人気を思えば馬券で嫌う手も残る。
勝負における人的要因に関して、不気味なのは関東馬でただ一頭、栗東滞在を選択した
マウレアの戦略だ。
チューリップ賞から本番という
ステップも含め、臨戦過程は全姉であり13年
桜花賞馬である
アユサンを倣うもの。滞在効果はあるのかという某記者の問いを「効果があるから決めたんだ」と一喝した
手塚貴久調教師の姿勢にトレーナーとしてのプライドがにじみ出ていた。
「すぐに環境に慣れたことでカイバ食いも良く、前走で減った体(8キロ減)はすぐ回復した。
クイーンC(5着)の敗戦で分かったのは、牝馬には珍しく直前でビッシリ追わないと実戦で目覚めないタイプということ。輸送減りを考慮せず追い切れることは、過去の阪神2戦にはないメリットになる」と指揮官。
「何ができるのか」を見つけた
マウレアにも逆転の可能性は残されている。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ