勝利の瞬間、現在メジャーリーグを席巻する大谷翔平の姿が頭に浮かんだ。何かといえば、
桜花賞を圧倒的脚力で制した
アーモンドアイの話である。
片や二刀流、片や
シンザン記念からのぶっつけ参戦。共通するのは過去に前例のない挑戦ということ。恥ずかしながら印は▲。大谷を当初酷評した米
メディア同様、当方も
アーモンドアイの成功には懐疑的だった。野球と並行し、競馬もスペシャリストが求められる分業制の時代。確たる方向性が見えないローテーションで、王道路線を崩すのは容易ではないと判断したものの、結果は完勝…。週明けの美浦で
国枝栄調教師は鼻高々だったが、その会話の中で、とんでもない見込み違いをしていたことを思い知らされた。
「驚いたのは今回も上がってきて、息の乱れがなかったことだね」
直線ごぼう抜きのパフォーマンスもさることながら、トレーナーを感嘆させているのは、その都度見せる管理馬の涼しげな表情。既存の物差しで測ること自体がナンセンス。そんな器なのかもしれない。
「デビュー戦でも腹帯を締めようとした瞬間、オレの手を後肢で蹴りにきたんだ。子馬なら後肢で耳をかくほど体が柔らかいけど、普通は2歳になれば硬くなるもの。おそらく
桜花賞の直線でちょくちょく手前を替えたのも、その特有の柔らかさからくるものだと思う」
圧倒的な排気量と柔軟性。これぞ大谷翔平との共通項かもしれないが、パイオニアたる使命も実は、これからが本番という気がする。なぜなら「ひょっとして今年が国枝厩舎最大のダー
ビーチャンスかも」と話を振ると、まんざらでもない言葉が返ってきたからだ。
「オレが決められるもんなら、自分で追加登録の200万円をすぐ払っちゃうけどな(笑)。今後の状態も見つつ牧場やオーナーサイドで決めることになるだろう。でもなあ…。もし
オウケンムーンが
皐月賞でいい競馬をするなら、稽古でこれを圧倒する
アーモンドアイは…って考えちゃうだろうな」
さらに記せば、トレーナーがひそかに抱く妄想(?)は、これにとどまらない。周辺取材すれば、ダービー→
凱旋門賞制覇が本当の夢のようにも映ってくる。もっとも、GIを1つ勝ったばかり。現時点では、すべて夢の途中にすぎないが…。陣営が目標に掲げる「トリ
プルクラウン」が牝馬クラシック戦線ではなく世界の戦線でも、もはや驚かない準備はできている。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ