左肩骨折(2か月前)を機に、南の小天狗で調教を見守ることが多くなった
高橋文雅調教師。その彼が全休明け(24日)にポツリとつぶやいた。
「実は最近、このまま乗らなくてもいいかなと思い始めたんだけど」
人手不足の面もあり、12年のキュウ舎開業以来、自ら馬にまたがる
スタイルを貫いてきた指揮官だったが、さては楽することを覚えたか。ニヤリと笑って突っ込むと思わぬ反撃が返ってきた。
「違うって。今も疲労度は以前と変わらない。乗っている瞬間は頭を空っぽにできるけど、外から見る間は一瞬も気が抜けない分、むしろきついわ。ただね。個々でなく、トータルで調教を見るようになってから気付ける部分が以前と違ってきた。それが結果に結びつき始めた今、この
スタイルを変える必要はないんじゃないかと思ってね」
大別すればホースマンは感覚派と理論派に分かれる。むろん見た目の厳しさからも、このトレーナーには感覚派のレッテルを貼ってきた当方だったが…。見解を改める時が来たのかもしれない。
さて、見方を改めるといえばGII
青葉賞に送り出す管理馬
トラストケンシンもそう。
弥生賞(6着)は返し馬からテンションが高く、折り合いに専念せざるを得ない状況。まずは自分との闘いがカギになる“お子ちゃま”として映ったが…。
「前走をひと言で言えば、馬が若くて重賞の雰囲気にのまれたってこと。まあ、その気性は相変わらずなんだけどね。短期放牧を挟んでずいぶんと成長したのが馬体。トモや肩回りなど全体に大きくなり、使える筋肉がついてきた感じなんだ」
同師が強調したのは肉体面の成長。
父ハーツクライは
皐月賞14着後に
京都新聞杯1着→ダービー2着。気温の上昇につれてグングン変わった一頭だったが、その傾向は産駒も確実に受け継いでいるようである。
「少し硬めで緩くていかにもハーツの子。本格化は先だろうけど、現状で東京二四はベストだし、長丁場のヨーイドンなら面白いと思うんだ。さっきも言ったけど、やりすぎないよう今回はトータルで考えて調整できたのがミソ。うまく体を起こしながら馬を抱えるイメージで乗って、アッと言わせてくれないかな」
スワーヴリチャードは
大阪杯で“天下統一”をアピール。
天皇賞・春にも最多5頭を送り出すなど、トータルで見ればまさに旬を迎えているのが
ハーツクライ産駒である。今週末は血の勢いに注目する手がありそうだ。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ