私はジョッキー時代、
サクラショウリ、
サクラチヨノオーでダービーを2勝していますが、レース後の心境は対照的なものでした。ホースマンなら誰もが憧れる
日本ダービーですから、最初に勝ったときは、本当なら大喜びしたいところ。
しかし、最後の直線に向いてグッと内に切れ込んだ際、後続の馬に迷惑をかけてしまったことが心に引っ掛かり、現行のルールでは降着になってもおかしくないほどの斜行だったので、うれしくなかったことを覚えています。
現在では考えられないかもしれませんが、当時の
日本ダービーはフルゲートが24頭。スタート直後から各馬が有利なポジションを確保しようと我先にと1コーナーに殺到したため、今ではもう死語になっていますが、「ダービーポジション」という言葉があったほどです。
逆に2度目に勝ったときは、もうこれ以上ないというほどの自画自賛できる騎乗でした。ゲートを決めて、すんなり「ダービーポジション」を確保することができましたし、道中の運び方も完璧。
サクラチヨノオーという馬はシュッという斬れる脚は使えないけど、追ってからジワジワ伸びる、いわゆるいい脚を長く使えるタイプ。実際、「ダービーポジション」までにいいポジションにつけられましたし、そういう意味では枠順の有利不利もありますが、不利を受けないようなポジションにつけられることがダービーを制するうえで一番大切なのかなと思います。それが、道中での余裕にもつながります。
言うのは簡単ですが、乗っている騎手にしてみれば、それが一番難しいこと。その通りにいくことは稀ですから、私の場合は常に最悪の状況を頭に置きながら騎乗していましたね。
この2回のダービーは、ともに抜けた馬がおらず、どの馬にもチャンスがありました。また当時は現在のように距離体系が整備されておらず、2400mという距離に不安を抱く馬も多く、私の騎乗した両頭ともそれに当てはまりました。
とくに
サクラショウリの場合は、以前のレースで前に行って、終いが伸び一息だったので、ダービーではフワッと無理なく乗っていかにロスなくすことを心がけ、終いを生かすような乗り方をしようと試みたのがうまくいきましたね。
現代ではある程度、ローテーションも確立していますから、これまで千二しか走ったことがないような馬がいきなりダービーに出走するようなことはなくなりました。昔に比べて、距離不安がある馬は少なくなったといえますが、それでも府中の2400mは力と力の真っ向勝負の舞台。
調教師になってから、ダービーに管理馬を送り込む際は血統的な背景も含め、距離適性は必ず考慮していましたね。底力がないような馬は、ダービーを勝ち切ることはできませんから。そういう意味で、“ダービーを勝てる馬”というのは枠順も含め、不利を受けないポジションを奪え、かつ血統に起因する距離適性を兼ね備えた馬ということがいえると思います。
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