「やっぱり悪いところほど似るもんだよなぁ」
マウレアを担当する森信次郎キュウ務員が、こう言って渋い顔を見せたのは
桜花賞(5着)から3週後。栗東滞在から美浦に帰キュウした直後だった。何かと思えば、歯替わりがあったという。
「抜けた場所から永久歯がなかなか生えてこなくてね。不揃いの分、咀嚼(そしゃく)しにくいんだろうなあ。姉の
アユサンも、この時期に歯替わりがあってカイバ食いが落ちたけど、まさか妹も同じ道をたどるとはねえ。井戸水を飲ませたりしてみたけど、栗東滞在時の半分も食べてくれなくてさ」
先週末から徐々に食欲が戻って陣営もひと安心しているが、
桜花賞V→
オークス4着と着順を下げた姉を思えば、中間トラブルは、やはり懸念材料。無論、歯替わりだけではなく、フケ(発情)もこの時期の3歳牝馬には付き物の生理現象であり、当日までは各馬のチェックに気を抜けまい。
一方、姉妹の相違点という点では
ロサグラウカの
尾関知人調教師も興味深い話を伝えている。
「前走(
水仙賞1着)は馬群の内を突く難しい競馬になったけど、ジョッキーも随分と評価するいい勝ち方ができました。姉の
バンゴールはハミを取るとかかるところがあったけど、この子はすごくコントロールがしやすくて乗りやすい。同世代の牝馬同士なら距離は持つと思いますよ」
その
バンゴールは
フローラS6着で本番に駒を進められなかったが、計5勝のうち4勝が左回り(3勝は東京)という
サウスポー。指揮官は「これからの馬」と言いつつも「まだ負けたことはないので」と期待を寄せており、血統的には待望の東京でパフォーマンスを上げて不思議はない。
さて“血の宿命”に注目する今週、当方が警戒する関西馬が
レッドサクヤ。こちらはGI馬
エイジアンウインズ(08年
ヴィクトリアマイル)の半妹であると同時に、13年
オークス2着
エバーブロッサムの全妹でもある。
「
レッドイリーゼを
エルフィンSで使いたかったけど、同馬主の馬が予定しているから
春菜賞に回ってくれってさ。それだけ走るってことかなぁ」と、年頭に
手塚貴久調教師が語ったことがあったが、オーナーサイドの見込み通り
エルフィンSを快勝してみせた。
オークスは、頭は
アーモンドアイで鉄板と見ているが、
桜花賞(7着)のしぶとい走り、キュウ舎(藤原英)の勢いからも、ひそかに押さえたい“血統馬券”である。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ