「ダービー馬のオーナーになることは一国の宰相になるよりも難しい」
英首相ウィンストン・チャーチルの「名言」として広く伝わっているわけだが、果たして真偽のほどは!?
「誰もがダービーを最大の目標にしているわけだから簡単じゃない。岡田(繁幸=サラブレッドクラブラフィアン前代表)さんなんて、あれだけダービーに馬を出走させているけど、まだ勝てていない。
トラスト(2017年8着)みたいに“距離的にどうかな"と思うような馬でも、使える馬は使う。それは執念みたいなものだよね。でも勝てない。それがダービーなんだ」とは
トラストを管理する中村調教師の弁だ。
その一方で、あっさりダービーを勝ってしまう人もいる。09年
ロジユニヴァースでダービーを勝った久米田正明オーナーは、この時がダービー初出走だったと記憶しているが、実はその前年に、「深見(敏男)さんがウチの
ディープスカイでダービーを勝った時だって初出走だったはずだよ。そういう馬を持つことができるのも、オーナーの運なんだろうな」と昆調教師。
改めて調べてみると、ダービー初出走初勝利の馬主は意外に多く、1984年の
グレード制導入以降で10例もあった。チャーチルの言葉はウソだった…とするつもりはないが、少なくとも宰相になるより難しいということは…。
で、本題。今年、調教師、馬主ともにダービー初出走となるのが
グレイル。タイトルの重みを考えると、トレーナー&オーナーが揃って“初体験"というのはどうかと思っていたが、そう重く受け止める必要はないのかもしれない。
「オーナー(カナヤマホールディングス)の勢いがすごいからね。今の3歳なんて勝ち上がり率が半端じゃない(ちなみに
カシアス、
グレイル、
カツジとすでに重賞ウイナーが3頭)。
グレイル? なんとか間に合った
皐月賞(6着)とはデキが違う。本来、東京は絶対に合うはずだから、いい競馬になると思う」と野中調教師。
トレーナー自身、初ダービーが近づいてきても「いつもと同じで
リラックスしている」とのことで、ダービーの重みに潰されることはなさそう。最速タイをマークした
皐月賞の末脚を見れば、この馬は◎候補として見なければなるまい。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ