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驚異的粘りで宝塚を制したエイシンデピュティ 今年はどんなドラマが!?

デイリースポーツ
  • 2018年06月11日(月) 18時38分
 上半期競馬の総決算・宝塚記念の登録馬が出そろった。ファン投票上位馬が相次いで出走を見送り、少し寂しい顔触れになったが、ファンやホースマンの願いをかなえてきたドリームレースであることに変わりはない。98年サイレンススズカ、01年メイショウドトウなど、数多くの馬が念願のG1初制覇を飾ってきた。今回はその一頭として、個人的に鮮烈な印象を持っている08年覇者エイシンデピュティを振り返りたい。

 同馬の初陣は、3歳春の05年4月の京都未勝利戦だった。「2歳の頃に一度入厩したんですが、ゲート試験を受かって脚元がモヤッとしたので放牧に出ました。そういうのもあってダートでデビューしたんです」と回想するのは当時、野本昭厩舎に所属していた甲斐純也助手だ。のちに橋口弘次郎厩舎でワンアンドオンリーを担当し、14年ダービーを制するのだが、当時はまだ20代だった。

 3戦目で初勝利を挙げたのは、ディープインパクトがダービーを制した前日の5月28日中京ダート1000メートル戦。手綱を取っていた安藤勝己騎手の進言が、のちの飛躍のきっかけとなった。「芝でもやれる。距離はもっとあった方がいい」-。2勝目もダートで挙げたが、そこからは芝を主戦場に。体質がしっかりとした5歳時の07年に、3連勝でエプソムCを制して重賞初タイトルをつかんだ。

 「もともといい馬で、オンとオフがしっかりしていて普段から調整しやすかったです。G1の舞台に連れていってもらったのも、この子が初めて。人間はドキドキして舞い上がったんですが、馬はドンと構えてて…。僕は全てを教えてもらいましたね」。競馬界では昔から、“馬が人を育てる”と格言のように言われる。若き日の甲斐助手を導き、今の礎を築いた馬と言っても過言ではないだろう。

 08年は京都金杯でV発進。次の東京新聞杯こそ7着に敗れたが、大阪杯は7番人気で2着と奮闘し、当時、宝塚記念の前哨戦だった金鯱賞も快勝。それでも、本番は5番人気と決して評価は高くなかった。ただ、「全く負ける気がしなかった」のだという。

 「もともと夏バテする馬が、その年は早めに梅雨入りしたことで涼しくて過ごしやすく、状態も良かったんです。重馬場も得意でした。テン乗りの内田(博幸)さんも中央移籍直後で気持ちも入っていて。全てが味方している感じでした」

 好発から押してハナに立つと、マイペースの逃げに出る。雨も、初の2200メートル戦も問題なし。道悪も手伝ってか、後続は馬体をぶつけ合うなど、スムーズさを欠いている。直線も驚異的な粘りを見せ、最後は1番人気メイショウサムソンの追撃を頭差で封じ込み、G1初制覇を飾った。

 「反響がすごかったですね。これが“G1を勝つ”ということなのかと思いました。1頭の馬にどれほどたくさんの人がかかわっているのかも、実感しました。僕は栄進牧場の出身ですしね。本当にうれしかったです」

 生産馬でつかんだ恩返しの白星。甲斐助手の一つの夢を実現してくれた、一生忘れられないターニングポイントになった。この一戦をきっかけに、「自分の気持ちに余裕が持てるようになった」ことが、自身のホースマンとしての人生に生かされ、その後の活躍にもつながっている。

 90年以降の宝塚記念の勝ち馬でデビューが最も遅く、既走馬相手の未勝利戦が初陣だったのもこの馬しかいない。今年も常識を超越した馬の登場や、馬と人が織りなす熱いドラマが見られるか-。そんな期待感とともに決戦の日を待ちたい。(デイリースポーツ・大西修平)

提供:デイリースポーツ

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