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ピンクの帽子を被る“ヘルパー”さんとは?/ねぇさんのトレセン密着

  • 2018年08月08日(水) 18時05分
 トレセンではヘルメットにかぶせるカバーの色でその人の職務を見分けています。青が騎手、黒は調教師、調教助手です。その中でも目立つのは黄色、白赤の染め分け、そしてピンク。黄色は騎手1年生で白赤の染め分けは騎手候補生です。やはり注意をはかるべき人に目立つ色を与えているんですね。

 そしてピンクの帽子は調教補充員、通称“ヘルパー”と呼ばれている、厩舎スタッフの助っ人たちです。トレセンの仕事は落馬等の事故でスタッフが怪我をするなど、急に欠員が出ることが時々あります。そんな不測の事態が発生したときは、ヘルパーがすぐに厩舎スタッフとして加わり、厩舎の運営が滞らないように即戦力として働いているのです。

 そんな縁の下の力持ちであるヘルパーには厩舎に正規雇用される前の若手と、厩舎を退職したのちに登録しているベテランがいます。

 競馬学校を卒業した後、厩舎に正規雇用される前の若手の方々は主にトレセンの外の育成牧場で働いていますが、その流れの中で牧場から研修というかたちでトレセン内の厩舎でも働くことがあります。この制度のもとで働く方々こそがヘルパーさんなんです。

 ヘルパーの中には女性もいます。今回ご紹介するのは林由加里さん。福岡県の競馬と縁のない家庭で育った林さんはいま、栗東トレセンに近い育成牧場・グリーンウッドトレーニングを経て、いくつかの厩舎でヘルパーをつとめ、現在は松田国英厩舎を手伝っています。

「母が武豊さんのファンで幼いころからテレビを見ているうちに競馬の世界に憧れるようになりました」という林さんがこの世界を目指したのがJRAの競馬場で行われている体験乗馬がきっかけでした。

「小倉競馬場で初めて乗馬にまたがったとき、『これしかない!』とビビッときたんです。さらに後藤浩輝さんの本を読み、競馬と縁のない環境で育っても競馬に関わる仕事に就けることを知りました」(林さん)

 その後、林さんは乗馬クラブや育成牧場で経験を積み、競馬学校厩務員課程を卒業後は正規の厩舎スタッフを目指して、日々技術向上に励む毎日を送っています。

「はじめは馬に乗るのが怖かったんですが、最近は楽しくて仕方ないです。自分が調教をつけた馬がレースに出て頑張ってくれるのがすごく嬉しいです。たまにひっかかって持っていかれることもあります。以前はただ怖いだけでしたが、今は自分なりに冷静に対処できるようになりました。

 これからもたくさん技術を磨いて、女性でもしっかり仕事を任せてもらえるように頑張りたいと思います」(林さん)

 一方、ベテランのヘルパーは正規の厩舎スタッフをいったん退職した方々です。熟練の知識と技を持っている彼らの中にはGI勝ちの経験者もいます。お話を聞いた寺島良厩舎で働く田代輝秋さんは、かつて伊藤雄二厩舎で厩務員として1977年の皐月賞馬であるハードバージを担当していました。

「ダービーは2着。当時は21歳で技術もまだまだ未熟でしたが、伊藤雄二厩舎で教わった技術を基本として今も仕事していますよ。その後は攻め専(追い切りを中心に担当する調教助手)としてスエヒロジョウオー(1992年、阪神3歳牝馬S・GI)などに関わってきました」(田代さん)

 いまヘルパーとして再び厩舎で働く理由は「やはり、馬が好きだから」(田代さん)

「競馬を見ていると、無性にトレセンで馬乗りの仕事をしたくなってしまうんですよね。親が厩務員だったので子供の頃から馬の近くにいるし、兄弟もみな競馬の仕事に携わっていました。やはりね、血が騒ぐんでしょう」(田代さん)

 ヘルパーは誰かが倒れて急に呼ばれることもあります。

「いつもで即戦力として働けるように、仕事をしていない期間でもいつでも馬に乗れるように身体づくりに気を遣っています」(田代さん)

 そして、これほどの超ベテランでも仕事中に被るヘルメットの色はやはりピンクなんです。

「若手と一緒の目立つ色なので少し気恥ずかしいです(苦笑)。でも、新鮮でもあって“初心にかえるぞ”という気持ちになりますね」(田代さん)

 このように厩舎が円滑に馬を出走させるためにも、ヘルパーさんは必要不可欠な存在です。追い切りVTRなどでピンク帽の方が調教をつけていたなら、このようなバックボーンがあるのだと思い出してくれると嬉しいです。

(取材・文・写真:花岡貴子)

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