今の時代、距離1200メートルの重賞でも、テンの入りが落ち着くことは珍しいことではない。昨秋の頂上決戦
スプリンターズSにしても、前半3ハロンより後半3ハロンの方が速かった(33秒9-33秒7)となると、「電撃の6ハロン」という言葉も、ほどなく死語になる? いやいや、GIII
北九州記念(19日=小倉芝1200メートル)は今でも電撃感満載だ。
毎年のように前半3ハロン32〜33秒台の
ハイラップが刻まれ、スタートから手に汗握るスリリングなレースが展開されている。ちなみに過去10年の芝6ハロン重賞で、前半3ハロンが32秒5以内だったのはたった5レースしかなく、そのうち4つが
北九州記念(2010〜13年)だった。現存するス
プリント重賞で最も「電撃の6ハロン」にふさわしいレースなのは間違いあるまい。
そんなレースの性格を知った上で今年、
ゴールドクイーンを出走させる坂口正則調教師の以下の言葉を聞くと、それがただの“泣き”ではなく、「本音」だということがよく分かる。
「いくら平坦小回りの小倉でも、このレースは逃げたらゴール前で捕まってしまう。それでもウチのは行くしか戦法がないから。まあ、楽な戦いにはならないだろうな」
差し&追い込みが決まりやすい
北九州記念で狙うべきは、やはり決め手のある馬。ならば
アサクサゲンキだ。
「ここ2走(
葵S5着、
CBC賞4着)とも出遅れているし、今回もどうなるか分からんな」と音無調教師だが、後方待機から直線で目の覚めるような末脚を使ったここ2走の競馬こそ、
北九州記念にマッチする。それを知っている担当の橋本真助手は手応えを隠さない。
「休まず連戦してくる馬も少なくないでしょうけど、ウチのは前走後に短期放牧に出してひと息入れていますから、フレッシュな状態で出走できる。今年はまだ雨が少なくて馬場がいいのがどうかですが、このレースはよく差しが決まりますからね。ここ2走の競馬が今回につながってくれるんじゃないかと」
武豊が
ダイアナヘイローに騎乗するため、今回は松若に鞍上
チェンジすることも、「騎乗停止になって乗れなかっただけで、もともと新馬戦は松若でデビューする予定だったんだ。縁があって戻ってきた感じだし、新味が出ればと思ってます」(橋本真助手)と、どこまでも前向きだ。
小倉開催はAコース使用の最終週。「電撃の6ハロン」にふさわしい流れから、「差し馬台頭」となれば、真っ先に浮上するのはこの
アサクサゲンキだろう。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ