ゲートが開くと、好スタートを切った4番人気の
ジェネラーレウーノ(1着)が内から抜け出しかけた。鞍上の
田辺裕信が「主張する馬がいなければ逃げてもいい、と先生(
矢野英一調教師)と話していました」と言ったように、手を動かし、軽く促している。
それを、前走で逃げて4馬身差で圧勝した7番人気の
タニノフランケル(12着)が外からかわし、スタンド前でハナに立った。
タニノフランケル、
ジェネラーレウーノ、11番人気の
ケイティクレバー(15着)、3番人気の
ギベオン(13着)、8番人気の
ダブルフラット(14着)の順で1コーナーに入って行く。
1、2コーナーを回りながら、
タニノフランケルが後続との差を3馬身、4馬身とひろげていく。1000メートル通過は1分00秒9。隊列はほぼ固定されたままだが、
タニノフランケルが飛ばしているぶん、馬群はどんどん縦長になっていく。
その結果、平均ペースでありながら、ハイペースのような縦長、という状態になった。
このまま行けば先行有利の展開になったのだが、
タニノフランケルが3コーナーからさらにペースを上げ、後ろを引き離して逃げ込み態勢に入った。
中山芝外回りの2200メートルはしばしば逃げ残りがあるコースだし、
タニノフランケルは名牝
ウオッカの仔だ。大逃げからの一発があっても不思議ではない。鞍上の
幸英明はもちろん、後続馬の騎手たちもそう考えて当然だ。
2番手の
ジェネラーレウーノ以下も
タニノフランケルを追いかけてピッチを上げた。それにより、先行馬にとっては厳しい消耗戦になろうとしていた。
先頭から10馬身以上離れた中団に控えていた1番人気の
レイエンダ(2着)や、後方2、3番手で脚を溜めていた6番人気の
グレイル(3着)らにとっては「しめしめ」という、おあつらえ向きの流れだ。
タニノフランケルが大きなリードを保ったまま3、4コーナーを回り、直線へ。
直線入口、2番手の
ジェネラーレウーノがタニノとの差を5馬身ほどに詰め、さらに加速する。「3コーナーでペースは上がったけど、脚はきっちり残っていた」と田辺が振り返ったとおり、ラスト200メートルを切ってから楽にかわし、最後は流すようにして先頭でフィニッシュした。
1馬身1/4差の2着は
レイエンダ。騎乗した
クリストフ・ルメールが「勝った馬とは、枠と経験の差が出た」と言ったように、大外15番枠から出たなりで取ったポジションから、勝ち馬よりコンマ6秒も速い上がり3ハロン34秒6の脚を使いながら差せなかったのだから、仕方がない。
さらに1馬身1/4差遅れた3着は、メンバー最速タイの34秒3の末脚で追い込んできた
グレイルだった。
先行した馬が総崩れになったなか、
ジェネラーレウーノだけが伸び、ほかは中団や後方から来た馬たちが上位を占めた。
京成杯を勝ち、
皐月賞で3着と好走してダービーに臨んだ
ジェネラーレウーノは、今回と同じく道中2番手で運んだが、逃げた
エポカドーロの直後で折り合いを欠き、16着に大敗していた。「秋はどうしようかと思っていたのですが、思い切って、馬の気分を削がないよう行かせました。今回は、それがいい方向に出てくれました」と田辺。
気分よく走ったことで、不利な流れをモノともせず、良血エ
リートの追い込みを退けた。
思えば、3年前にここを制した
キタサンブラックも、ダービーでは14着に大敗していた。キタサン同様、ダービーは「なかったこと」にして、菊戦線では主役級の評価をしなければならないだろう。
(文:島田明宏)