混戦の様相を呈する今年の
菊花賞は。それだけに、夏の上がり馬にも注目が集まる。2010年はダービー当時、まだ未勝利だった馬が制した。「平成乱菊列伝」、今回は
ビッグウィークをお届けする。
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ビッグウィークの良さが最大限に
2歳9月のデビュー戦で8着すると、その後は4戦連続2着。なかなか勝ち切れなかったが、6戦目に未勝利を脱すると、そこから3連勝し充実の時を迎えた。
菊花賞への優先出走権獲得を目指した、
神戸新聞杯。いつものようにポンと飛び出し、好位を進み、直線も力強く伸びて先頭に立つ。が、その直後に
ローズキングダム、
エイシンフラッシュのダービー1・2着馬にあっさりと交わされ、3馬身離された。それでも3着は守り、
菊花賞への切符を手にすることができた。
菊花賞は、
ローズキングダム1強の空気が高まるなか、
ビッグウィークは7番人気でゲートが開く。この日も好スタートを切った
ビッグウィークだが、
コスモラピュタが逃げたため、それを見ながら3番手につける。そして
ローズキングダムは中団後方から。中盤は
コスモラピュタがペースを落とし13秒のラップが刻まれるが、隊列は変わらず淡々とレースが進む。マイペースで追走していた
ビッグウィークが、勝負に出たのは3コーナー過ぎだった。
「道中は逃げ馬の後ろでしっかりと我慢してくれて、3コーナー辺りで動いて行くのも思い通りでした」という川田騎手が振り返るように、
ビッグウィークは坂の下りを利用すると一気にスパートをかける。そして直線を向くと、残り100mで
コスモラピュタを交わして先頭に立つ。「直線に向いたときに前は捕まえられると思っていたので、あとは後ろから来なければと願いながら追った」という川田騎手のゲキに応え、
ビッグウィークが脚を伸ばす。ゴール直前、
ローズキングダムが切れ味鋭く追い込んできたが、時すでに遅し。
ビッグウィークは1馬身1/4差で1番人気馬を退けた。ゴール後、川田騎手はパートナーの首を撫で、労をねぎらった。
未勝利戦勝ちからコンビを組んできた川田騎手は、
神戸新聞杯の敗戦を糧にしていた。「
神戸新聞杯も抜群の脚で伸びてくれて、自分の中では勝ったかと思ったが、1・2着馬とは全然脚が違っていた。だから今度は早めに仕掛けて、持久力の勝負に持ち込もうと」。川田騎手が
ビッグウィークのストロングポイントを最大に活かし、
ビッグウィークが初体験の3000mを勝負根性で最後まで粘り切ったことにより、最後の一冠を手に入れたのである。そしてそれは、初勝利からわずか106日でのことだった。