キセキというと、今年の夏に目のまわりを真っ黒にして歩いていた姿が忘れられません。「見た目は悪いけれども体調は悪くない」と陣営から聞いてはいたものの、その姿に決していい印象は持てませんでした。結果も昨年秋の
菊花賞などで見せた動きには遠いものでした。
しかし、この秋の
キセキは違います。ホントいい頃の
キセキが戻ってきているように見えます。
「夏のリフレッシュ放牧の効果がすごく良く出ていると思いますね。今から思えば、夏前はどこか苦しいところがあったのかな、と思います。あの頃は妙にムキになったりヘンなところでテンションが上がったりしていましたから。精神的にも肉体的にもしんどいところがあったのかなと思います。
でも、今なら変に力んで走ることもないし、向こう正面で他馬に追い抜かれても無視できるような精神状態を保っています」(辻野助手)
毎日王冠で復活のめどがついた後も、とても順調に立ち上げてきています。そのあたりもホント頼もしいです。
「
毎日王冠が終わってから馬体の回復も早かったので1週前追い切りから馬場にも入れられましたし、最終追い切りもタメの効いたメリハリのある走りをしてくれました。しっかりGIに向けて攻めてこれたと思います」
今回の調整は万全。昨年秋の"あの頃"の
キセキが帰ってきました。
「
毎日王冠を経て、体もほどよく絞れたし、気持ちもピリッとしてきました。いい頃の
キセキが戻ってきたと思います。武器は最後の末脚。前走はポジションを取りにいきましたが、番手で我慢もできました。あの走りからも選択肢が広がったように感じます。レースの流れにあわせて臨機応変に競馬をしてくれればこの馬の武器が出せると思います」
(取材・文:花岡貴子)