クラシック第1冠・
皐月賞までまだ2か月も猶予を残す時期、
ニシノデイジーの主戦・勝浦正樹がこんな言葉を漏らしたことがある。
「スタミナがあって、距離は延びれば延びるほどいいタイプ。自分では3冠で一番チャンスがあるのは
菊花賞かなと思っているんですけどね」
同じく忘れもしないのは、13番人気の低評価だった
日本ダービーを5着で検量室に引き揚げてきた同騎手の表情だ。それはあたかも優勝ジョッキーのようなクシャクシャの笑み。それもそのはず。当時、陣営から受けていたのは“ダービーで掲示板を外せば乗り替わり”との最終通告。最も手応えを感じてきた秋に向けて、首の皮一枚がつながったわけである。
「5着であんなうれしそうな顔されても困るんですけどね(笑い)。ただ、気持ちは分かる。オレには2歳の時から“
菊花賞だ”って言っていましたから。結果もそうだけど、秋につながる競馬はできたのかなと思います」
こう語るのは同馬を担当する高森裕貴キュウ務員。そのダービーは
ロジャーバローズが高速馬場を利して、番手から粘る展開。対して
ニシノデイジーは道中後方で折り合いに専念し、
皐月賞1,2着馬(
サートゥルナーリア、
ヴェロックス)と遜色ない末脚を見せた。ましてダービー1,2,4着馬が不在の淀の舞台。手応えをつかむに十分な内容だったと言えよう。
同時に気になるのは、ひと夏越しての成長度。この問いに対して同キュウ務員は「余計なことをしなくなって、精神的には多少大人になってきた。トモの緩さは相変わらずなんですけど、これは昔から長距離砲の証しって言いますもんね。それにどんな競馬でも、上がりでフーともハーとも言わない心臓の持ち主。夏負けせずに戻ってこれたのが何よりでしょう」と順調ぶりを口にする。
むろん、今週のGII
セントライト記念は本番への
ステップレース。すでに本賞金3600万を稼ぐ同馬にとって、結果より内容重視の舞台であるのは確かだが...。気楽に乗った時ほど好結果が出るコンビなのは過去の戦歴がしっかり証明済み。ギャンブル的には本番よりむしろ買いやすい一戦と見て、宴会野郎は相応の資金を用意して応援する腹積もりである。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ