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レースの駆け引き―― ベテラン騎手は若手騎手の考えていることをお見通し!?

  • 2019年11月26日(火) 18時03分
太論

▲今週は“心理戦”について語って下さいました


ジョッキーが長く現役生活を続けられるのは、心理戦での強さ、精神的な経験値が高いから──質問と併せて、ユーザーからこんな見解が届きました。そこで、今回のテーマは“心理戦”。はたして、小牧騎手が考える駆け引きとは!? また、現在来日中のスミヨン騎手について、小牧騎手が感じる“凄味”を語ってくれました。(取材・文:不破由妃子)


ジッとしておくべきか、動くべきか…それも大事な心理戦


──まずは、ジョッキーの精神面の経験値について、こんな質問がきています。「野球やサッカーなど、アスリートの現役生活の寿命は普通は短いものですが、騎手は小牧さんや豊さんをはじめ、50代の方でも活躍しています。その理由として、騎手はフィジカルの絶頂期と同じくらい心理戦への強さ、精神的な経験値の高さが求められるからだと思いました。やはりそういう面で、若手騎手の考えていることはお見通しという感じなのですか?」

小牧 お見通しなんて、そんなことはないよ。そもそもジョッキーの寿命が長いのは、メンタル云々ではなく、馬が走る競技だからだと僕は思う。フィジカル面で一番頑張ってくれているのは馬やからね。ボートだってそうでしょ?その点、一般的にアスリートと言われる人たちは、自分の体一本。そこは大きな違いがあると思うよ。

──そうは言っても、馬の上でバランスを取りながら、なおかつ扶助操作をするわけで、一般人とは比べものにならないフィジカル面の強さが必要ですよね。

小牧 それはもちろん必要やけど、僕らからすれば普通のことというか、ジョッキーをやっている以上、当たり前にできなアカンことやから。50歳を過ぎた僕だって、バランスがどうのなんて気にしたことがない。

──気にしたことがないというのは、衰えがないという証拠ですね。

小牧 それが気になるようになったら、もう馬には乗ってられんよ。馬の上でバランスが取りづらいとか、追うのがしんどくなったとか、そんなことを感じながら乗るのは、ジョッキーとして一番アカンこと。さっきも言ったけど、ジョッキーにとって「馬に乗る」ということは、バランスを取るということも含めて?普通?のことやからね。

──質問にあるように、レースは心理戦という側面もあると思います。たとえば、逃げているジョッキーがA騎手だから、どういう展開になりそうだとか、近くにいるのがB騎手だから、こういう動きをするだろう…などなど、一緒に乗っているジョッキーの動きを先読みしたりしますか?

小牧 いや、僕はあんまり「誰々だから…」とは考えないね。フラフラしてたら「危ないな」と思って、危険を避けられるよう先回りすることはあるけど。

──ジョッキーそれぞれに動きの癖みたいなものは存在しますか?

小牧 あるね。でも、僕はあんまり気にせん。なんせレース中は、自分と自分の馬のことで精一杯です。というより、目に見える範囲で「誰がどこにいて…」というのは大体把握できているし、それぞれの癖も頭に入っているから、無意識に体が反応していることはあるかもしれんけど。

──そうだとしたら、ベテランならではですね。

小牧 ん〜、どうなんやろ。みんなそうなんちゃうかな。

──そのほか、レース中の心理戦や駆け引きには、どういったパターンがありますか?

小牧 そうやなぁ、まずは展開とペースを読むこと。で、ジッとしておくべきか、動くべきかとかを考える。ある意味、そういうのも周りとの心理戦やからね。あとは、周りの手応えをチェックして、次の一手に備えるとか。最近は、いかにロスなくジーッと乗って、1頭でも多く負かせるかっていう競馬をすることが多いけど、ハッキリと勝ち負けだなと思ったら、ライバルたちの位置取りは意識する。で、いかに不利を受けず、自分に有利に運べるかを考える。それも周りの出方を見るわけやから、競馬ならではの心理戦やね。

──続いては、現在短期免許で騎乗しているクリストフ・スミヨン騎手についての質問です。「スミヨン騎手が久々に短期免許を取得しました。小牧騎手から見て、スミヨン騎手はほかの騎手よりどういったところが優れていると思いますか?」

小牧 なんといってもパワーでしょう。そこは際立ってると思う。

──抑え込むにしても追うにしても、パワーが際立つと。

小牧 そうそう。背が高いし、手足も長くて、その長い手足でガッチリ抑え込んでるというか。直線を見ていても、ハードに追ってますやん。凄味があるよね。「よう追ってくるなぁ」と感心しながらいつも見てますわ。

太論

▲「凄味がある。よう追ってくるなぁ…」と

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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。2024年には再度園田競馬へ復帰し、活躍中。史上初の挑戦を続ける。

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