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さぁジャパンC。でも…

  • 2008年11月29日(土) 23時49分
 さぁジャパンC。メイショウサムソン、ウオッカ、ディープスカイの歴代ダービー馬3頭が揃って参戦。さらに、昨年の有馬記念馬マツリダゴッホ、昨年と今年の菊花賞馬アサクサキングスとオウケンブルースリも加わって、超豪華なメンバー構成になりました。来週のジャパンCダートにも、先日のJBCクラシックで一騎打ちを繰り広げたヴァーミリアンとサクセスブロッケンや“アメリカ帰り”のカジノドライヴが出走を予定。こちらも楽しみな一戦になりそうです。思わず、気合いが入っちゃいますね。

 でも、ちょっと待ってください。どちらも日本で行われる国際レースの最高峰。なのに、大物外国馬の参戦で盛り上がっているわけではありません。日本馬の顔ぶれがこれだけ充実していれば文句ないだろう、と言われるかもしれませんが、果たしてこれでいいんでしょうか?

 今秋、ジャパンC創設時の関係者の奮闘をまとめた「ミスター・ジャパンカップと呼ばれた男」という本が出版されました(河村清明さん著、東邦出版)。その中に「ジャパンカップは今、国内で最高の賞金を、国際では最高のレーティングを誇る一戦になった。ただ世界レベルでの競争が激化する中にあっては存在感を喪いつつある。それが現状である」という記述があります。そう、ジャパンCが直面しているのは、まさしく“存在感の喪失”という問題です。

 第1回ジャパンCが行われた81年以降、ブリーダーズCや香港国際競走、ドバイワールドCが次々に誕生しました。さらに、イギリスのロイヤルアスコットミーティングが開催日を3日間から5日間に拡大したほか、フランスでは凱旋門賞をメーンにウイークエンドロンシャン開催を実施。オーストラリアのフレミントン競馬場でもメルボルンカップカーニバルの内容を充実させるなど、世界の競馬のビッグイベントは派手さを増すばかりです。これらに共通しているのは、様々なカテゴリーの重賞競走を1日〜数日間に集中して開催するという点。各カテゴリーのGIを週ごとにバラして開催する日本とは正反対のやり方です。

 これを陸上競技に例えてみましょう。世界の競馬のビッグイベントは、世界選手権かオリンピック。男女の100mからマラソン、走り幅跳び、走り高跳び、棒高跳びや、ハンマー投げ、砲丸投げ、やり投げまで、様々な種目のチャンピオン決定戦をいっぺんに開催するようなものです。「世界選手権やオリンピックは、毎年やるもんじゃないだろう」ですって? 人間ならそうですが、1年で勢力地図が大きく塗り替えられる競走馬の世界ですから、毎年そういうレベルのビッグイベントをやることに意味があるわけです。一方、日本のやり方は、種目別選手権をちょっとずつ“小出し”に開催するというもの。それはそれでおもしろい、という“シブい人”もいるとは思います。でも、イベントとしてのインパクトはどちらのほうが大きいか。それは言うまでもありません。

 種目別選手権の賞金をアップさせたり、他国で行われるその手の試合の上位入賞者にボーナスを出したりしても、それをパスして世界選手権やオリンピックに照準を合わせる選手が増えるのは当たり前です。ファンはもちろん関係者も、トップレベルの選手たちの戦いをまとめて観戦できたほうが便利でわかりやすいはずですし、そういう注目の中で勝利を挙げたほうが、選手の“商品価値”も高まるというもの。イベントの規模が勝負の分かれ目、なのです。

 ここ数年のジャパンCは、世界のトップホースが次から次へと参戦して質の高い戦いを繰り広げてきたから、というよりも、日本馬のレベルが外国馬に肩を並べるくらいに高くなり、その日本馬のトップホースたちが優れたパフォーマンスを発揮してきたからこそ、世界トップクラスのレースに成長したわけです。日本の競馬のイベントとしては、大きな成功を収めました。でもこれからは、競馬やスポーツという枠を越えて、このビッグイベントをどう発展させるかという発想が必要でしょう。できるだけ早く、思い切った手を打たないと、河村さんが書いたように「存在感を喪いつつある」という現状は打破できないと思うのですが。

 さて、ジャパンCの馬券。3歳馬の“のびしろ”に期待して、ディープスカイとオウケンブルースリからそれぞれ3連複を買うことにします。30日にはばんえい競馬の大一番、北見記念もありますので、どうぞお忘れなく。ジャパンCの予想はこちら、北見記念の予想はこちらをご覧下さい。ではまた来週!

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テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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