12月29日「東京大賞典」。大井競馬場は久々の大観衆でふくれ上がった。入場487312名は、昨年比125%、売上げ21億円は同120%。改めて競馬の盛況とはレースの中身、ヒーローの登場によるものと痛感する。トーシンブリザードが出ていなければ、おそらくこの数字はなかった。トーホウエンペラーは確かに文句なしの勝利だったが、ブリザードが盛り上げてこそ、そのグレードが上がっている。
東京大賞典(サラ3歳以上 別定 統一G1 2000m良)
◎(1)トーホウエンペラー 57菅原勲 2分05秒2
△(2)リージェントブラフ 57吉田豊 1/2
▲(3)トーシンブリザード 55石崎隆 2
(4)ドラールアラビアン 57的場文 ハナ
(5)ムガムチュウ 52藤田 1
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△(6)オンユアマーク 55鷹見
△(9)ノボトゥルー 57蛯名
○(10)ウイングアロー 56横山典
単510円
馬複1550円
馬単2840円
イエローパワーの逃げは、千通過62秒5、例年より1秒ほど遅い。サプライズパワー、フレアリングマズルと続き、トーシンブリザード、トーホウエンペラーがその直後。リージェントブラフあたりも離されず進めたから、一線級の競馬としてはとかなり楽な流れと推測できる。3~4コーナー、馬群が急速に固まり、そこからよーいドンの決め脚勝負。有力どころで置かれたのはウイングアロー。G1 2勝馬らしくない。おそらくこれは体調に問題があったのだろう。
トーホウエンペラーはパドックから1頭ズバ抜けたデキにみえた。トモの筋肉などハチきれるような盛り上がり。二人引きの厩務員さんをグイグイ引っ張り、大きく大きく周回する。青鹿毛の馬体も冬場とは思えない輝きで、まさに絶好調に仕上がっていた。春の帝王賞から数えて統一G4戦目。場慣れしてきた印象でこの日は鞍上との折り合いも完璧だった。一歩早めに抜け出したトーシンブリザード目標に一、二の三の瞬発力。追われて重心が沈みこむ素晴らしい走法。ゴール前リージェントブラフが迫ってきたが、フォームにはまだ余裕がある。フィニッシュと同時に菅原勲騎手の手が上がった。
トーホウエンペラーの能力、適性は、岩手の先輩メイセイオペラとほぼ同等に考えていいだろう。秋の南部杯でアグネスデジタルにきわどく迫った切れ味が真骨頂。スピードとパワー、両面をバランスよく備えている。父ブライアンズタイム。大一番で強いのはやはり血筋でもあるか。次走は、2月東京のフェブラリーS。左回りはスムーズさを欠くという指摘もあるが、全体にペースが上がればむしろ折り合いがつきそうだ。相手なりに走るタイプで、高速馬場、時計勝負は問題ない。
トーシンブリザードは次に夢が描ける3着だった。道中馬なりで好位キープ。直線中ほど、痺れるような手応えで先頭に立った。石崎隆Jは背後を少しうかがうような姿勢でまだ追わない。外トーホウエンペラーの姿を確認してから左ステッキ。あっさり交わされたのはやはり久々のせいだろうが、内容とすると合格点以上がつく。結局この日、7月ジャパンダートダービーより20キロ増の490キロ。文字通り成長分で、レース勘、競馬センスにも狂いがない。統一Gの頂点に昇る日も近いだろう。次走は今のところ1月30日川崎記念を予定。ただし陣営はまだ芝挑戦もあきらめていないと聞いた。
ドラールアラビアン、ムガムチュウの善戦は、予測以上に時計がかかった結果だろう。逆にノボトゥルーは深い砂でパワーを要求されるとやはり辛い。他では3歳オンユアマークの健闘が特筆できるか。じりじり伸びる逞しい末脚。今後の成長に期待したい。