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地方騎手の総合評価システムを

  • 2009年01月10日(土) 23時47分
 2008年のJRA賞とNARグランプリの表彰馬、表彰者が発表されました。JRAの年度代表馬ウオッカ、地方競馬の年度代表馬フリオーソをはじめ、各部門の表彰を受ける関係者の方々、おめでとうございます。

 地方競馬の最優秀騎手賞は大井の戸崎圭太騎手が初受賞。同騎手は勝利数、収得賞金ともに全国1位となり、フリオーソで帝王賞を制するなど、見事な活躍を見せました。NARグランプリの同部門は、1990年の第1回から2002年の第13回まで、船橋の石崎隆之騎手が13年連続で受賞。03年に大井の的場文男騎手が初受賞した後、04年からは同じく大井の内田博幸騎手が4年連続で受賞していました。今回で、南関東の騎手が19年連続、大井の騎手が6年連続の受賞となったわけです。

 南関東では、大井、川崎、船橋、浦和の4場で1年を通してほぼ毎日、競馬が開催されています。各レースの賞金も地方競馬の中では群を抜いて高く、騎手にとって勝利数と賞金を稼ぐには絶好の舞台。ライバルが多いのも確かですが、リーディング上位の騎手は、全国平均を大きく上回る騎乗回数に恵まれ、そこで確実に勝ち鞍をあげれば、高額の賞金を獲得できます。

 つまり、南関東のトップジョッキーがNARグランプリの最優秀騎手賞を受賞するのは当たり前と言えば当たり前の話。それはいいとして、全国の地方競馬の騎手を勝利数と収得賞金以外にランク付けする、何か別の“物差し”はないのか? というのが今回のテーマです。

 そこで、こんな計算をしてみました。利用したのは、NARの公式サイトにある「データルーム・騎手リーディング」。まずは、2008年のばんえい、北海道、岩手、南関東、東海、金沢、兵庫、福山、高知、佐賀、荒尾の各地区で勝利数上位5人の騎手を検索。その5人の総獲得賞金額を5人の総騎乗回数で割って、上位5人の1レース当たりの平均獲得賞金額=Aを出します。これには、各地区の騎手が他地区の競馬に騎乗したときの実績は含まれません。次に、「2008年全国リーディング勝鞍ベスト100」にランクされた騎手のそれぞれの獲得賞金を騎乗回数で割って、各人の1レース当たりの平均獲得賞金額=Bを算出します。これには、それぞれの騎手の所属地区だけでなく、中央を除くすべての地方競馬場での騎乗成績が含まれています。そして、BをAで割ります。この数字が大きければ大きいほど、その騎手がどれだけ賞金の高いレースを制しているか、賞金額に差のある他地区に行っても活躍しているか、といったことの、おおざっぱな目安になると考えたんです。

 では、全国リーディングNo.1の戸崎騎手を見てみましょう。南関東の勝利数上位5人(戸崎、的場文男、坂井英光、今野忠成、御神本訓史騎手)の南関東4場での総騎乗回数は7393回、総獲得賞金額は34億6791万6000円で、5人の平均獲得賞金額=Aは46万9081円。一方、戸崎騎手は1737回の騎乗で10億5568万円を獲得したので、1レース当たりの平均獲得賞金額=Bは60万7761円。したがって、戸崎騎手のB÷Aは1.30(小数点3ケタ以下四捨五入)となります。

 あとは同様に計算するだけ。すると、けっこうおもしろい数字が出てくるんです。例えば、全国リーディング2位の木村健騎手(兵庫)。兵庫のトップジョッキー5人(木村、川原正一、田中学、下原理、大山真吾騎手)のAが12万7636円なのに対して、木村騎手のBは19万3111円。B÷Aは1.51で戸崎騎手を大きく上回りました。全国リーディングでは36位の五十嵐冬樹騎手(北海道)も、北海道の上位5人(五十嵐、宮崎光行、山口竜一、桑村真明、服部茂史騎手)のAが16万4429円に対し、同騎手のBが24万3631円で、B÷Aは1.48。かなりの“高得点”です。

 ここまで書いておいて申し訳ありませんが、これを思いついてから原稿を書くまでの時間がなくて、ベスト100すべての騎手についての計算と検算が間に合いませんでした。計算や数字が間違っていたらゴメンナサン。でも、おそらくこのポイントが一番高いのは、高知の赤岡修次騎手だと思われます。高知の上位5人(赤岡、中西達也、宮川実、西川敏弘、別府真衣騎手)のAは3万462円(なんと南関東の15分の1!)、赤岡騎手のBは5万2342円で、B÷Aは1.72。これを上回りそうな騎手は、ベスト100の中には見当たりません。

 なぜ赤岡騎手の数字が高くなるんでしょう? 高知の高額賞金レースで活躍しているから、というのは言うまでもありません。それに加えて、賞金額が極めて低い競馬場に所属していて、そこから賞金額の高い他地区に遠征して好成績を挙げたために、同地区のほかの騎手に比べるとかなり大きな収得賞金を上積みすることができた、という要因もあるはずです。でも、それもなかなかタイヘンなことですよ。いわゆるアウェーの戦いでもしっかり実績を残さなきゃいけないんですから。

 今回の話は、まだまだ研究途上。取りあえず、こんな計算をしてみたらこんな数字が出てきた、という程度のことです。そう、最近の野球でよく使われる“セイバーメトリクス”の手法を競馬に応用してみた場合の、一つの例と思ってください。今回の計算以外にも、いろいろな数字を駆使して、地方騎手の総合評価システムが作れたらいいんですけど…。今後、ヒマがあったら、さらに研究してみるつもりです。

 さて、今週のフェアリーSは、阪神ジュベナイルフィリーズで狙ったジェルミナル、シンザン記念は中央入り初戦のモエレエキスパートに期待します。では、また来週。

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テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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