「ばんえい競馬、運営会社赤字。複合施設化焦点、撤退も」。2月23日、毎日新聞の北海道版にこんな見出しの記事が載りました(※注1)。06年末、廃止寸前のところまで追い込まれながら、民間(ソフトバンク系のオッズパーク・ばんえい・マネジメント=OPBM)の運営参入による帯広市の単独開催で“延命”したばんえい競馬。“新生”初年度の07年度はめでたく黒字を計上しましたが、08年度は約4100万円の赤字に転落する見込みで、OPBMの藤井宏明社長は、「今後、何をするのか市が明確にできないならば、10月には(運営継続か撤退かを)判断せざるを得ない」と帯広市に通告した、とのことです。
▽参照(毎日新聞北海道版)
http://mainichi.jp/hokkaido/seikei/news/20090223ddr041050006000c.html
見出しにもあるとおり、藤井社長が主張しているのは、競馬場の複合施設化。地方競馬の馬券売上は低迷しており、景気悪化が深刻な状況からしても、大幅な増収はすぐには期待できません。馬券売上だけですべてをまかなうシステムはすでに行き詰まり、それ以外の収入を確保しなければ、経営を安定させることは不可能です。
そこで、競馬場を「道の駅」などの複合商業施設に造りかえて、その“上がり”を競馬事業に取り込む必要があります。つまり、本業の儲けは頭打ち、合理化も限界、だから多角経営に乗り出さないと会社が潰れてしまう、ということです。
しかし、厳しい財政状況に瀕している地方自治体=帯広市に、競馬場の複合施設化を実施するための財源が豊富にあるとは思えません。これまでに、そうした事業の実現へ向けて、市が何らかの取り組みを始めた、とか、予算を確保した、などの動きもなく、OPBMの経営多角化はまさに“絵に描いた餅”となっています。
ばんえい競馬の経費削減(賞金や出走手当の減額)が続くと、馬主にとっては、よほどいい馬を持たない限り、預託料の支出が賞金や出走手当からの収入を上回る慢性的な赤字体質に陥り、競走馬を所有することがまるで“ボランティア活動”のようになってしまいます。
「それじゃぁ“ウマ味”がない」と、馬主を辞める人が出てくるのは当然のこと。馬主がいなくなれば馬も売れなくなり、馬を生産する人もいなくなるという、“負のスパイラル”が続くことは明白です。今のままでは、馬主の“ばんえい離れ”と農家の重種馬生産からの撤退に歯止めはかけられません。
極端な話、サラブレッドの競馬なら、日本国内の生産頭数が激減しても、海外の馬産国を競走馬の供給源にすれば競馬は続けられます。生産を全くしない“香港スタイル”もあるんですから。でも、重種馬を使うばんえい競馬ではそうはいきません。長年にわたってばんえい競馬用競走馬の生産を続けてきたおかげで、徐々に品種改良が進み、他に類を見ない体型の重種馬が出来上がってきました。そう、“重種馬のサラブレッド”です。
なので、海外で生産された重種馬を輸入すれば、すぐに競走馬として使えるわけではなくなりました。まぁ、ブルトン、ペルシュロン、ベルジアンといった類の重種馬を輸入して、ある程度の調教を施してレースをさせれば、何とかならないこともないとは思いますが、たぶんメチャクチャなことになるでしょう。
なにが言いたいかと言えば、とにかく重種馬の生産者と馬主を確保しなければ、ばんえい競馬は続けられない、ということ。重種馬の生産者に生産奨励金を支給するとか、馬主の預託料に補助金を出すとか、いろいろな方策があると思うんですけど。競馬場の複合施設化にはかなりの財源が必要ですが、そのくらいだったら少ない予算でもやり繰りできるんじゃないですか?
帯広市が、できることを見つけてすぐにやる姿勢を見せなければ、09年度限りでOPBMが撤退→競馬廃止という、最悪の事態に陥りかねません。
とにかく、競馬は産業です。他に定職がある馬主はともかく、生産者や厩舎関係者、競馬場で働く人たち、競馬開催を支える人たちは、競馬がなくなったら、日々の“なりわい”を失ってしまうわけです。帯広市には、地域産業の発展と雇用確保の面からも、競馬の存続に向けて最大限の努力をしてほしいと思います。
もちろん、一つの自治体だけではどうにもできない部分もあるので、北海道や国も積極的に取り組んでほしいものです。
それはさておき、競馬ファンのみなさんには、ばんえい競馬をもっとPRしなくちゃいけません。3月9日には、船橋競馬場でのばんえい競馬場外発売にあわせ、私と赤見千尋サンとでトークショーを実施します。また、3月29日に行われるばんえい競馬最大のレース、「ばんえい記念」を観戦するツアーは、ただいま参加者募集中です。
さらに、ばんえい競馬など、十勝の馬文化を応援するNPO法人「とかち馬文化を支える会」では、正会員、協賛会員、(協賛)登録店を募集しています。ツアーに関しては日通旅行のサイト(※注2)を、NPO法人に関してはとかち馬文化を支える会のホームページ(※注3)をご覧ください。そして、ばんえい競馬にまつわる様々な話題は、十勝毎日新聞のホームページ「ばんえい十勝劇場」(※注4)でお読み下さい。
▽参照(日通旅行)
http://travel.nittsu.co.jp/sports/tokyo/horse_race/banei41/index.html
▽参照(とかち馬文化を支える会)
http://umabunka.com/
▽参照(ばんえい十勝劇場)
http://www.tokachi.co.jp/banei/
そうそう、2日には、ばんえい記念に向けた重要なステップレース、チャンピオンCが行われます。ばんえい競馬情報局(※注5)では、私の予想をご披露していますので、参考にしていただければ幸いです。おしまいに、中山記念はアドマイヤフジからの馬連流し、としておきます。では、また来週!
▽参照(ばんえい競馬情報局)
http://blog.oddspark.com/baneiinfo/
地方、ばんえい、さらには海外にも精通する矢野吉彦のJRA・GI予想は「
矢野吉彦の競馬日記」へ
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