3月14日、JRのダイヤ改正が行われます。それに伴い、夜行寝台特急列車の「富士」、「はやぶさ」が廃止され、東京駅を発着する“ブルートレイン(通称ブルトレ)”がすべて姿を消してしまいます。
新幹線、飛行機、夜行バスといったライバルたちがし烈な利用客獲得競争を繰り広げる中、ひとり取り残されたような感じの“ブルトレ”。衰退していくのはさびしい気もしますが、仕方のないことかもしれません。
今回の“噺”が、いきなり競馬と関係ない“まくら”で始まったのはどうしてか? それは、私もかつて“ブルトレ”にはけっこうお世話になったからです。それも、地方競馬巡りの時に。
とくに、今はなき島根の益田競馬場に行くときには、必ずと言っていいほど“ブルトレ”を利用していました。昭和59(1984)年12月、初めて益田競馬場に行ったときに乗ったのは、東京発、東海道・山陰線経由、浜田行きの「出雲」です。
東京を出たら、まずは食堂車で夕食(ハムサラダとビーフシチューにビールが定番)。翌日、目覚めた後は、車内販売のサンドイッチとコーヒーで朝食を取り、浜田で乗り換えた鈍行の車窓から日本海の風景を堪能して、午前中に益田に到着というスケジュールでした。これはなかなかの味わいがありましたね。
当時の益田は、日本で唯一、最終Rまで競馬を観戦したら、その日のうちには東京に帰ってこられない競馬場でした。山陰線で浜田や出雲市に行っても、乗り継げるのは「出雲」や「だいせん」(大阪行きの夜行急行)だけ。山口線で小郡(現、新山口)へ出て新幹線に乗り換えても、名古屋止まりの「ひかり」しかなかったんです。
そういう意味では、“東京からいちばん遠い競馬場”でした。私は、小郡から徳山まで新幹線を使い、そこで“ブルトレ”の「はやぶさ」に乗り換えて帰るというプランを何回か実行しました。当時のダイヤでは、益田で最終Rを観戦した後に乗れる山口線の特急「おき」からは、小郡に止まる東京行きの“ブルトレ”には間に合わず、そうやって「はやぶさ」に乗り継ぐしかなかったと記憶しています。
なんとも手間のかかる競馬場だと思いませんか? 後に石見空港(現、萩・石見空港)がオープンすると、なんと空港から歩いて行ける(=空港へ歩いて行ける)ようになり(所要約20分)、東京の人間にとっては阪神や京都よりも便利な競馬場になったんですが、それから間もなく競馬場は廃止。私も、飛行機を使って益田に行ったのは廃止直前の1回だけでしたから、益田と言えば“ブルトレ”という印象のほうが強く残っています。
小倉競馬や荒尾競馬観戦の行き帰りにも、たびたび“ブルトレ”を利用しました。ある時、小倉競馬に行こうと東京発の「あさかぜ」か何かに乗っていたら、山陽線で事故があり、新大阪で新幹線に乗り換えるよう、案内されたことがありました。その時わかったのが、そういう場合にA寝台に乗っていると新幹線のグリーン車に席を取ってくれるということ(私が乗っていたのはB寝台で、普通車指定席への振り替えでした)。まぁ当たり前と言えば当たり前なんですが、その時は、「なるほどなぁ」と思ったものです。
上野発金沢行きの「北陸」で金沢競馬を見に行ったこともあります。一時期、「北陸」は、早朝に金沢に到着した後も、しばらく車中で寝台を利用できるサービスを実施していました。しかし、金沢駅のホームに停車したままだと、通勤時間帯の電車の発車ベルや構内アナウンスが騒々しくて、とても安眠はできませんでしたが…。
「北陸」は今回のダイヤ改正後も走り続けるので、東京の鉄道&競馬ファンで、“ブルトレ乗車&地方競馬観戦の旅”をまだ体験されていない方には、これをオススメしておきましょう。
かく言う私、このところしばらく“ブルトレ”には乗っていません。最後に乗ったのは数年前。盛岡でマイルチャンピオンシップ南部杯を見た翌日に金沢の白山大賞典を観戦しに行く時、盛岡から秋田新幹線で秋田へ出て、そこから金沢まで「日本海」を利用しました。金沢着は早朝6時過ぎ。金沢競馬第1Rの発走にはだいぶ間があるので、駅前のホテルで朝食を取った後、県立野球場の近くにある日帰り温泉で朝風呂を浴びてから競馬場に向かいました。こういう時間の使い方ができるのも夜行列車の旅ならでは、ではあります。
でも、ハッキリ言って、わざわざ“ブルトレ”に乗ろうとはだんだん思わなくなってきました。その理由は、まず、食堂車がなくなっちゃったから。これはもう、“ブルトレ”の魅力半減、いやそれ以上に致命的な要素です。
それに、20数年前に比べると、飛行機がかなり安い運賃で気軽に利用できるようになったのも大きいですね。しかも、“マイル”が貯まりますから。さらに、仕事が立て込んでいたり、原稿を送稿しなければならない、という時に、夜行列車を利用するには勇気がいります。長距離列車での移動では、大雨や事故のために、とんでもないところで足止めを食らう可能性があり、車中でインターネットが通じないとなると、なおさら使い勝手が悪くなってしまいました。たぶんそういうところが、“ブルトレ”衰退の原因だとも思います。
東京発着の“ブルトレ”、「富士」と「はやぶさ」の最終列車は、13日から14日にかけて運行されます。なにはともあれ、長い間ご苦労様でした。
さて、いよいよクラシックへの足音が大きく聞こえるようになってきました。弥生賞は素直に、セイウンワンダーとロジユニヴァースを1、2着にした3連単フォーメーションを買ってみます。では、また来週!
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