ばんえい競馬の大一番・ばんえい記念が、29日(日)に帯広競馬場で行われます。重さ1000?=1トン(牝馬980?)のソリを曳く、ばんえい競馬最大の重賞競走。ばんえい競馬は日本だけのものですから、これぞまさしく世界最高峰、「WBC=ワールド・ばんえい・クラシック」なのであります!
私は1990年に初めてこのレースを見ました。タカラフジという馬が勝って、キンタローに次ぐばんえい競馬史上2頭目の“1億円馬”(通算賞金獲得額が1億円を超えた馬)になった一戦です。それから今年で20年目。やむを得ない事情で現地に行かれなかったことが3回ほどありましたが、可能な限りナマで迫力満点のレースを観戦し続けています。もちろん今年も見に行きます!
ばんえい競馬の重賞レースについては、「ばんえい競馬情報局」(※注)で直前予想をご披露していますが、今回の当コラムでは、一足早く今年のばんえい記念の見どころをご案内させていただきます。
▽参照(ばんえい競馬情報局)
http://blog.oddspark.com/baneiinfo/
最大の焦点は、トモエパワーの3連覇なるか、です。これまで、ばんえい記念=旧・農林(水産)大臣賞を3回以上勝った馬は、キヨヒメ(1979、81、82年)、キンタロー(83、85、86年)、フクイチ(95、97、98年)とスーパーペガサス(2003〜06年)の4頭しかいません。3連覇以上となると、スーパーペガサス1頭だけ。今年、トモエパワーが勝てば、史上2頭目の歴史的快挙達成となります。
07年に同馬(当時7歳)が初めてばんえい記念を制した時は、前年秋の北見記念2着、年明け1月の帯広記念優勝、直前3月のチャンピオンカップ2着と、重い荷物を曳く重賞レース=高重量戦で安定した好成績を挙げていました。ばんえい競馬の競走馬が充実期を迎えるのがちょうどこのあたりの年齢。それを証明するような上昇カーブを描きながらグングンと力を付け、初挑戦のばんえい記念にも優勝したわけです。
ところが、その後はなかなか勝てなくなってしまいました。年度が代わった07年4月以降、08年3月のばんえい記念を迎えるまで23戦して、勝ったのは07年9月の岩見沢記念だけ。負けた22戦のうち、勝ち馬から10秒未満の着差でゴールインしたのはわずか3回という、惨たんたる内容でした。にもかかわらず、最後の大一番・ばんえい記念では、2着馬に26.1秒の差をつけて圧勝したんです。まるで、「1トンのソリを曳いて勝てるのはオレだけだ!」と言わんばかりのレースでした。
そして、08年4月からここまでのシーズン。トモエパワーは1度も勝てませんでした。21戦0勝2着3回という成績です。連覇を狙った10月の岩見沢記念は勝ち馬から23.5秒差の4着。11月の北見記念は回避。今年1月の帯広記念は7.7秒差の5着。3月のチャンピオンカップは年度内の重賞・特別戦優勝馬限定戦のため出走できず。しかも最近は、賞金を積み重ねていないのでオープンクラスから降級し、500万円条件に格付けされています。それでも勝てません。さぁ、この状態で、3連覇を果たすことができるでしょうか。
これがフツウの競馬なら、「トシもトシ(9歳)だし、もう“上がり目”ナシ。そろそろ世代交代だな」ってことになるかもしれません。でも、ばんえい競馬はちょっと違います。今シーズン、トモエパワーが高重量戦に勝っていない、というのは確かに心配なところです。しかし、一クラス下のレースでも勝てない、というのは、そんなに心配しなくてもいいんです。なぜなら、一クラス下のレースだと、引っ張るソリの重さが軽く、力よりスピードがモノを言う展開になるからです。トモエパワーが得意とするのは、他の馬が苦戦しそうな重いソリを曳くレース。ソリの目方が軽いスピード比べでは、勝てないのは当然、と言ってもいいくらいです。
さらにこれは、とある大ベテランの記者の方にお聞きしたことですが、ばんえい競馬には“重病み”という言葉があるそうです。高重量戦を立て続けに使われているうちに、重いソリを曳いて走るのが嫌になってしまう馬がいるんですね。バリバリのオープン馬は、馬主サンをはじめ厩舎関係者にとってみれば、相撲界で言う“米びつ”(この場合、米はお金の例えになります)。高重量戦=格の高い重賞=高額賞金戦ですから、コンスタントにそういうレースで活躍してくれるに越したことはありません。でも、使い詰めにしちゃうと“重病み”になってしまう恐れがなきにしもあらず。そのへんが、ばんえい競馬の難しいところです。
ご存知の方も多いでしょうが、トモエパワーの前にばんえい記念を4連覇したスーパーペガサスは、晩年、裂蹄などの脚部不安に見舞われ続けました。とくに、4連覇を達成した06年のばんえい記念のシーズンには、北見記念や帯広記念といった重要なレースを回避して、4か月余りの休養を余儀なくされました。史上空前(絶後かもしれません)の快挙は、壮絶な“脚元との闘い”の末にもたらされた栄冠、だったわけです。常に重いソリを曳き続けなくてはならない“王者の宿命”でした。
トモエパワーの場合、そうなることを避けながら、大一番のばんえい記念制覇に的を絞っているように思われます。今シーズンは未勝利ながら、負けたレースで勝ち馬から10秒未満の差に粘り込んだのが6回。前走の500万円条件戦でも、軽いソリと軽い馬場でスピード決着になったものの、7.6秒差の4着に健闘しています。体調不良、脚部不安があったらレースに出られないこともあるはずで、順調に使われてきたからには、態勢は整えられていると見ていいでしょう。
一方、同馬の3連覇に待ったをかけそうなのは、今が充実期の7歳牡馬トリオ、カネサブラック、スーパークリントン、ナリタボブサップの3頭。さらに、06年4着、07年3着、08年2着と一段ずつステップアップしてきた10歳馬のミサイルテンリュウも悲願のタイトル獲得を目指して出走する予定です。実力馬が勢揃いして、見応えのある熱戦を繰り広げてくれるでしょう。どうかみなさん、野球の「WBC」はもちろんですが、こちらの「WBC(ワールド・ばんえい・クラシック)」、ばんえい記念も、ぜひご注目の上、馬券を買って参戦してください!
さて、スプリングSは、切れ味抜群のリクエストソングに期待。阪神大賞典はアサクサキングスを軸に買ってみます。では、今回はこのへんで。
地方、ばんえい、さらには海外にも精通する矢野吉彦のJRA・GI予想は「
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