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タタソールズ・クレイヴン・ブリーズアップセール結果報告

  • 2009年04月21日(火) 23時59分
 欧州最良の2歳セール「タタソールズ・クレイヴン・ブリーズアップセール」が、4月15日・16日の両日にわたって、英国ニューマーケットで開催された。

 市況は、総売り上げが前年比28.0%ダウンの8,561,000ギニー、平均価格が前年比27.3%ダウンの74,443ギニー、中間価格が前年比14.3%ダウンの60,000ギニー、前年26.6%だったバイバックレートが今年は29.4%と、全ての指標が前年を下回ることになった。

 前年のマーケットと比較した時、構造上の最も大きな変動は、価格の高い方が伸び悩んだことが挙げられよう。昨年は、最高価格馬の54万ギニーを筆頭に、30万ギニー以上で取引された馬が10頭いたのに対し、今年の市場における30万ドル超えは“ゼロ”。トップエンドの価格帯におけるプレイヤー不足が、マーケット全体の足を引っ張った形となった。

 だがそれでも、今年の平均価格、中間価格はいずれも一昨年(2007年)を上回っており、この市場としては歴代2番目の数字。総売り上げもほぼ一昨年の水準を維持しているから、世界金融危機の影響をモロに受けて、昨年秋以降の世界の競走馬市場が3割減は当たり前という指標で推移してきた中、まずは「御の字」の市場であったというのが一般的な見方である。殊に、年初来より欧米各地で行われてきた主要な2歳市場の中で、バイバックレートが3割を切ったのはここだけで、競馬産業を取り巻く環境は相変わらず厳しいものの、最悪の事態は免れたというのが、市場関係者の実感であった。

 市場を支えたのは、ここもマクトゥーム・ファミリーだった。初日、2日目ともにモハメド殿下御自身がせり会場に御出ましになった一方、前年同様に複数の代理人を使ってライバル陣営の目を撹乱し、即戦力の補強にいそしんでおられた。

 セール初日の終盤に登場し、26万ユーロの最高価格で代理人のディック・オゴーマン氏に購買された、父メダグリアドロー・母セラムールの牡馬も、オゴーマン氏は「某クライアントの依頼」と口を濁したが、購買者はシェイク・モハメドであろうというのが、大方の見るところであった。

 父メダグリアドローは、エルプラド(その父サドラーズウェルズ)の直仔。この世代が2年目の産駒となるが、初年度産駒が牝馬を中心に活発な動きを見せており、マーケットにおける人気が急上昇中の期待の若手種牡馬である。母セラムールもG2ナッソーカウンティーS・1着、G1エイコーンS・2着といった成績のある活躍馬で、公開調教でも小気味よい動きを披露していた馬であった。

 前年は参加がなかった日本人ホースマンだが、今年はひと組が参戦し、1頭を購買した。

 日本にやってくるのは、父ピヴォタル・母フランクファーターの牡馬。姉にカナダのG1・E.P.テイラーS勝ち馬フラウレインがいるという良血馬である。

 父は、ハーフウェイトゥヘヴン、サオアイルといった愛1000ギニー勝ち馬や、セントジェームスパレスS勝ち馬エクセレントアート、ロッキンジS勝ち馬ピアレスなど、マイル戦線の大物を続々と輩出している欧州のトップサイヤーだ。スピードと瞬発力がこの血脈の特長で、筆者がかねてから「日本向き」と睨んでいた種牡馬なのだが、人気が高いだけに価格も高く、これまで競走目的で日本に導入された直仔は2〜3頭しかいないはずだ。そういう意味では、父ピヴォタルの大物が日本にやってくるのはこれが初めてで、個人的にも大きな期待を寄せたい馬である。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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